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Is  作者: 遠奈 都
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言うこと聞かない

俺は今日の目的地を横山さんのスーパーから歩いて10分のところにある駅前の大型ショッピングモールに併設された映画館に決めていた。


駅前のショッピングモールの入り口で待ってます。

チケットは先に買っておくので、ゆっくり来て下さい。


敢えてさっきまでのことには触れずにビジネスライクなメールを返す。

だが、内心は期待と不安が入り雑じった複雑な心境だ。


ショッピングモールに着くと、早々に映画のチケットを買いにカウンターへと並ぶ。


「いらっしゃいませ。」


「2枚下さい。」


この「2枚」という響きが、待ちに待ったシチュエーションが目前に迫っていることを実感させる。それに伴って段々と緊張感も増していくわけで。

もう一度トイレに入り、鏡の前に立つ。頭のてっぺんからつま先まで入念に見直していくと、ネクタイがいまいちピリッときまらない。2度、3度とネクタイを締め直すがなかなか上手いこといかない。と、そうこうしているうちにもうそろそろ横山さんも到着するであろう時間になる。入り口に向かわねば。



入り口に着いて5分ほど待っただろうか。遠くに横山さんらしき人影が小さく見えたかと思うと、その人影はみるみるうちに目の前へと向かってくる。

爽やかな九分袖のシフォンブラウスに黒系のスカート、朝方の雨でできた水溜まりや行き交う多くの人々が手にする傘がまだ梅雨であることを主張する一方で、ここにだけはもう夏がきたかのように爽やかな姿だ。


「可愛い。」


思わず呟く俺だが、すぐ目の前にはもう横山さんがいることに気付き焦る。だが、


「お待たせ。映画楽しみですね。」


と、子供のようにはしゃぐ横山さん。よかった。どうやら聞かれてはいなかったようだ。

それにしても服装も可愛ければ、はしゃぐ笑顔もやっぱり可愛い。

だったら可愛いと言えばいいじゃないか。俺の脳は俺の口にそう命令するが、俺の口は無難な台詞じゃないと怖いと言い、言うことを聞かない。


「全然待ってないですよ。少し早いけどいきましょうか。」


俺の口がそう言うと、俺の足は映画館の方へと歩き出してしまった。

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