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Is  作者: 遠奈 都
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彼女との出逢い

山田の結婚式当日。

大学生時代にお世話になった方ということでカテゴリー分けされたテーブルに俺と雨宮は通された。

10人が座れる円卓には俺達が所属していた高橋ゼミのメンバー5人と山田が所属していた山登りサークルRMのメンバー5人の名札が用意されていた。

そこで俺は横山明日香と出会ったのだ。


式は滞りなく進み、終盤に予定されていた俺達高橋ゼミのメンバーによる余興に差し掛かる頃には、高橋ゼミのメンバー、RMのメンバーともすっかり打ち解け合っていた。

俺達の余興は、おっちょこちょいな雨宮がしでかした大ポカのおかげで、謀らずも場が和み、大ウケだった。席に戻るなり雨宮が言い訳を始める。


「いや、あれは俺のせいじゃなくて、準備が…」


だからといって、用意しておいた鮭を生のまま飲み込んで隠そうとするのはお前くらいなもんだろう。俺がそう突っ込もうとしたその時、


「だからって鮭を丸飲みしようとするのは雨宮さんだけだよ。」


すかさず突っ込みを入れたのは横山さんだった。


続いて新婦側の友人による漫才が始まる。正直言って面白くないな。退屈した俺がふと隣の席の横山さんに目をやると、横山さんも退屈そうな目をこちらに向けていた。お互いに退屈していることを察せられる気まずさからか再び余興に集中する。

そんな導入のまずさもあってか、最後の落ちのウケもいまいちだったが、俺には(最後の落ちだけは)なかなか面白く感じられた。思わず声を出して笑ってしまった俺は周りの少し冷めた空気を察して辺りを見渡す。すると横山さんだけが笑っている。


「最後の落ちだけ良かったね。」


横山さんはそう俺に耳打ちした。


彼女は誰もが振り替えるほどの美人、というわけではないが、なかなか可愛い。何より、気が合うっていうのはこういうことじゃないかな?俺は今まで他人に対して感じたことのない想いを感じていた。

俺と同じように雨宮に対して突っ込み、同じように退屈して、同じタイミングで笑う彼女が気になるのだ。


「皆さん二次会はどうされるんですか?」


横山さんの問い掛けに


「横山さんが行くなら。」


ん?という表情の雨宮に対して、


「皆が行くならってことだよ。」


と焦って続ける俺。

普段ならこんなことはないわけで…



そうこうしているうちに二次会も終わりに近づく。俺は思い切って雨宮にあることを話しかける。


「雨宮、そういえば吉田課長に頼まれていた資料あったろ。あれ、明日の朝一で欲しいって課長言ってたぞ。」


雨宮が驚いた顔でこちらを見る。

これは俺達の間で決めてあった一種のサインで、要するに気に入った相手がいるからサポートしろという意味なのだ。そして吉田課長の頭文字よが横山さんを指しているわけだ。

最もこのサインを使う場は合コンであり、このサインを出すのは専ら雨宮であり、俺からは今まで一度もこのサインを使ったことはなかった。雨宮がこのサインで今の嫁さんを捕まえたのが3年前。もしかしたらこんなことはもう忘れているかとも思ったが


「皆さん、せっかくだから連絡先を交換しましょう。」


雨宮が仕切り出す。


「横山さんはご結婚は?」


雨宮の問いに


「結婚どころか彼氏もいなくて。」


その答えを聞いてポンと俺の肩を叩く雨宮。これさえなけりゃ頼りになるのに…。



帰りの電車で雨宮達と別れた僕は横山さんになんとメールをするかばかりを考えていた。

あまりがっついているように思われるのも恥ずかしい、気持ち悪いやつとも思われたくない。いつしかそんな自分の都合の言い訳をメールの本文よりも本気で考え出す。

今日はもう遅いから迷惑だ。メールをしないのが正しいのだ。とか僕は馬鹿だ。


なんだかんだで家に着くと携帯に一通のメールが届く。


「横山さん?」


メールの本文には一言


「頑張れよ。」


雨宮のやつこんな時だけはマメにメールをしてきやがる。


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