大盛りでお願いします。
カラオケ店を出るなり、お母様が満足そうな表情を見せる。
「あー楽しかった。」
そう言う声は少しかすれている。
「声、枯れちゃってるじゃないですか。」
そう言う俺の声もかすれていた。
「晩御飯の支度までもう少しあるし、もうちょっとだけ付き合ってもらってもいいかしら。駅前のカフェのパフェがとってもおいしいのよ。」
カフェに入ると、俺も甘いものは大好きなので、2人して大盛りのパフェを頼んだ。
パフェを待つ間にお母様が横山さんの事を語りだす。
「昔、私と主人の錫婚式の時にね、銀座の高級レストランに主人と明日香と3人で行ったことがあったの。」
横山さんが5歳の時の話だそうだ。
「そこのお上品な料理に明日香は退屈しちゃったの。そんな明日香を見兼ねた店員さんが明日香の顔くらいある大きなパフェをサービスしてくれてね。」
5歳の頃の横山さん、想像できないな。
「それ以来、あの子何かというとあの時のパフェが食べたい、あの時のパフェが食べたいって言うのよ。」
なんとも微笑ましいエピソードだ。
そうこうしているうちに俺達のテーブルにも大盛りのパフェが運ばれてくる。
「それじゃあ2人だけでこんなパフェを食べちゃったら怒られちゃいますね。」
「この話をした事は明日香には内緒よ。」
内緒とは言われても、ここぞの時には銀座の高級レストランでパフェを予約しておこうと心に決めるのであった。