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Is  作者: 遠奈 都
16/20

延長でお願いします。

翌日になって土曜日。今日は横山さんのお母様との約束の日だ。

土曜日を選んだのは横山さんが基本水曜日と土曜日休みだからで、あわよくばという狙いもあったのだが、その日は明日香は仕事なのよというお母様の先制パンチに、淡い期待は早々に打ち砕かれてしまった。


時刻は午後1時。待ち合わせの5分前に到着してお母様を待つ。

すると5分後、約束の時間きっちりにお母様が現れる。豹柄をあしらったその出で立ちはテレビでしか見たことのなかった大阪のおばちゃんそのものといった感じだ。


「ごめんなさいね。待たせてしまって。」


見た目とは違って、言葉は標準語だ。ちょっと期待外れでもある。


「いえいえ、今着いたばかりですから。」


「でも本当に来てくれるとは思わなかったわ。そうだ、飴ちゃん食べる?」


「…、いえ、頂きます。」


やっぱり大阪のおばちゃんだ。



お母様から頂いた飴ちゃんを口の中で転がしながら、最寄りのカラオケBOXに入店する。受付でマイクとリモコンを受け取り、指定された部屋に入るとお母様が嬉しそうに話す。


「カラオケなんて久しぶりだからワクワクしちゃう。」


そう言うお母様の姿は、映画楽しみですねとはしゃいでいたあの日の横山さんの姿にそっくりだった。横山さんのハイテンションもこのお母様からの遺伝ということか。

ドリンクをオーダーし、何を歌おうかと歌本を眺める。お母様くらいの年代の女性が聞いて楽しめるレパートリーというとかなり限定されてくる。

それとなく歌本をパラパラめくるが、なかなかこれといった曲が見当たらない。そんな様子を察してくれたのかお母様から


「私、今やってる月9のドラマの主題歌が好きだわ。」


とリクエストが。誰でも知ってる最近の曲とはいえ、俺の大好きな曲をチョイスしてくれるあたり、なかなか嬉しい助け船だ。


俺が歌い終わると次はお母様の番。曲は今最も人気のあるアイドルグループの最新曲。きっとこれも俺に合わせてくれているのだろう。


そうしてお互いに2,3曲歌い終わる頃には、お母様の好みも分かってきて歌う曲の選曲には困らなくなっていた。

何より、お母様が俺に気を遣いつつも盛り上げ、又自分も盛り上がってくれるので、俺も純粋に楽しむことができた。

どうやら横山さんだけではなく、お母様とも気が合うようだ。


プルルルル


「終了時間10分前です。ご延長なさいますか?」


受付からの電話にどちらからともなく、1時間の延長をお願いすることを決めるのだった。



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