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Is  作者: 遠奈 都
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泣いちゃったな

こう見えて俺はとっても涙もろい。というか影響されやすい質で、けっこう何にでも感情移入してしまうのだ。

だから、映画が始まったばかりの間こそ気になった店長の事も、ポップコーンを食べようとしてぶつかる手も、隣に自分が好きな女性がいるということも、いつしか気にならなくなっていた。

ただ時折、映画の感想を確かめ合うように顔を見合わせる一瞬が2人だという事を実感させる。それはそれでとても貴重な事に思えた。


だが、そんな時間も長くは続かなかった。なぜなら映画も中盤を過ぎた頃からは悲しいシーン、そしてそれを主人公が乗り越えて成長していく感動のシーンと涙無しには語れないシーンの連続だったからだ。

俺の計画では、ふと隣を見ると横山さんが泣いている。そこにさりげなくハンカチを差し出す予定だった。だが、気付けば横山さんに差し出す予定だった新品のハンカチも自分の涙で湿っているではないか。なんとも間抜けな話だ。

それでも俺にとって不幸中の幸いであったのは、横山さんも周囲の観客も多くが俺と同じように泣いていたことだった。自分だけであったらこの上なく格好悪いシチュエーションであったが、皆がというシチュエーションが幾分恥ずかしさを和らげてくれる。

それにしても泣ける映画は家で1人の時にこっそり見る方が良さそうだ。


「私、泣いちゃった。」


エンドロールを眺めていると横山さんが話し掛けてくる。相手が雨宮だったら俺はそんなことなかったと強がるところだが、濡れたハンカチ片手にそんなことを言っても説得力がない。


「俺も泣いちゃったな。」


そう素直に言える自分に俺は少し驚いていた。



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