第6話 お手洗いを待ち侘びて
『え? こんな時でさえですか?』
こんな時だからこそだ。
異性入れ替わっちゃった系でまず直面する壁がトイレ問題!
この醍醐味を今味合わないでいつ味わうというのだ!
美青年が私の身体を使って用を済ませる……想像しただけで色々な意味で身震いが。
『今日だけですよ』
毎日してくれ、朝昼晩晩晩だ。
『そんな毎日するんですか?』
デリカシーが無いのかフレディー?
乙女にトイレ行きまくりですねは良くないだろう?
それに私はトイレと友達なのだよ、夜発情した私に、スッキリする場所を提供させてもらっているのだからな!
『……』
しかし困ったものだ。
第五施設にトイレは無く、その隣に続く第四も無い。
人がメインで働く一、二、三の三つの施設にしか設備していない不親切設計なのだ。
右左うんぬんしても第三施設に中々辿り着けない。
足もなんだかプルプルして来た。
だがフレディーもこのプルプルを感じてると思うと、私の心とどこかがプルプルしだしてしまうじゃないか。
『あ、第三施設に到着ですよ。よ、ようやく着きましたあ』
いい子だ美青年よ。
よぉしよしよし、とフレディーを撫で回したいところだが、生憎憑依されているから出来ないな。
あ、待ってフレディー、限界が近いからってお腹付近を撫で撫でするのはアウトだって。
何故かってアウトだからだ!
だがもっとしてもいいんだぞ!!
止めろとは言ってないからな!!!
そんなアウトな状態で少しでも身体に衝撃が伝わらないよう、足をへの字にしながらドアを開ける。
トイレ特有の重いドアを開けた先、そこには手を洗い終わり丁寧にハンカチで手を拭くナンシーの姿が!
「あ、変態だ」
フレディーは私の身体で応える。
「まあ変態ですよねえ」
ちなみにフレディーは私の身体で自由にお喋り出来る。欠点は私自身が喋れないことだな。
ハンカチを折りたたんでポケットにしまったナンシーは、私達に接近して睨みつける。
「昨日の諸々、とても不愉快だったんだ。お返し、だ!」
握り拳を作ったナンシー。私のお腹に目掛けてパンチをお見舞いしようとする。
普段戦場で鍛え抜かれた、機敏な反応で危機を察知出来るフレディー。
しかし今、膀胱が爆発寸前、さらに憑依という慣れない環境下においてその危機察知能力が失われていた!
私は走馬灯が見えた。
プレスする私、フレディーの妄想にふける私、プレスする私、プレスする私、妄想───
バトル漫画並の速さで繰り出された腹パンは、お腹スレスレでピタリと止まった。
「なんてな、まあおまえの例の行動はもはや日常だからな。早く済まして仕事に戻れよ」
そう素っ気ない笑顔で横を過ぎるナンシー。
な、なんて良い奴なんだ……!
そう思っていた私は異変に気づくがもう遅い。
ナンシーは去り際に、なんとなくの気持ちでした、腹パンならぬ腹ペチを。
お腹に伝わる微細な振動。
その振動は、腹パン寸前を免れほっとし緩んだ身体、つまり緩んだ膀胱とアレにダブルヒットした。
その瞬間。
『───ぐわっ! あ、あれ? 追い出された?』
フレディーは私の身体から投げ出されるように勢いよく飛び出す。
フレディーは私に視線を向けながら。
『もしかしてまた……あ』
「………………んぁっ」
この汚い哀れな女を見ないでくれフレディー。
純粋な美青年が見てはいけない光景なんだ。
私は悶え痙攣する身体を必死にうずくまって抑えるも、もう身体が限界のようで、新鮮な魚の如く床タイルの上でピチピチ跳ねていた。
そんな私に驚きを見せるナンシーが一言。
「なんか、その、ごめん……」
ナンシーは積み上げてあった新品のトイレットペーパーを手に取った。




