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37傷の癒し方

エスペリに到着して5カ月、優斗が転生して11カ月たった。


救出した8人の男子生徒の扱いはタマと雄太達6人に任せた。

タマには人数分の教育IDを発行し、会話、読み書き、一般常識のチュートリアルを管理してもらった。

雄太達6人には先達として男子生徒の世話をお願いした。

タマには密命として男子生徒の精神状態の監視をお願いしている。

「いじめ」とかあると嫌だ。

もし兆候がれば対処するつもりだ。

男子生徒にも女生徒救出が終わったことを話した。

彼女たちは病院で治療を受けている。

まだ会えないと話した。

女生徒たちが肉体、精神にダメージを受けていることは想像できたのだろう。

不満は聞かれなかった。


病院で女生徒の状況と今後の治療方針を話しあう。

俺「トコ院長、女生徒達の現在の治療状況を教えてください」

トコ院長「現在16名が入院しています。

命に係わる患者はいません。

身体的ダメージは軽傷の者10名、中傷の者5名、重傷の者1名です。

軽傷の場合、1週間で完治します。

中傷では2週間、重傷で1カ月で完治します。

既に身体的に完治したものは7名います。

精神的なダメージですが、

軽度の者1名、中度の者5名、重度の者8名、重度超の者2名です。

軽度の者はカウンセリング、教育で対応します。

中度、重度の者は神経再生後、幻惑の管理下でカウンセリング、教育します。

重度超の者は脳ネットワークおよび記憶を記憶球に退避、神経再生、脳組織再生を行います。

神経再生、脳組織再を行うと感情情操はリセットされるため、記憶を元に再体験させ、感情情操を育てます。

感情情操の成長が脳ネットワークを修復し、治癒します」

俺「治療期間を教えてください」

モモ医師「軽度で10日、中度から重度は12日から45日、重度超では6カ月です」


俺「花田あかりの身体は元に戻るのでしょうか」

ユズ技官「花田さんの身体を戻すための移植生体の製造は私が担当しました。

移植生体の形状は花田さんの記憶から割り出しまいた。

元の生体の形状に加え、花田さんの願望も加味しました」

アン医師「私が花田さんの生体を移植しました。

92か所移植しましたが、本人でも見分けがつかないほど馴染んでいます。

ただ、まだ不安定なので、触る等の確認はできませんが、見ることはできます。

ぜひ確認してください」

俺「その、体を確かめるには本人との合意がないと。

現状では本人の確認が取れないので、遠慮します。

ユズ技官とアン医師のお話で、安心しました」

アン医師「そうですか。

花田さんの身体は本当に美しく再生できました。

勇斗様に確認していただけないのは、少々残念です」


俺「女生徒達は精神的なダメージが大きいようですね」

モモ医師「本来、女性の精神はしなやかで、男性よりストレスに強いのです。

このため、女奴隷の調教では、残虐羞恥な行為を命令し、絶望を与え、精神の抵抗力を破壊します。

その後、抵抗できなくなった精神に従順さを植え付けます。

この一連の過程で脳神経が大量に死滅します。

脳神経の死滅で、感情情操と脳ネットワークがダメージを受けます」


俺「治療中に面会とかできますか」

モモ医師「どなたに会われますか?」

俺「雨宮玲とローラ」

モモ医師「ローラさんはいつでも面会可能です。

雨宮玲さんは時期を選べば可能です。

重度超ですので、神経再生、脳組織再中です。

この治療はあと10日かかります。

そのあとなら可能です。

この後は感情情操の教育なのですが、0歳から記憶を元に再教育しますので、精神は最初は赤子です。

5カ月かけて12歳まで育てます」

俺「会ってもいいんですよね」

モモ医師「はい、面会できます。

優斗様に雨宮玲さんの精神支柱をお願いする予定でした。

精神支柱となる方の面会は好都合です」


俺「精神支柱とは?」

モモ医師「雨宮玲さんと花田あかりさんは0歳から召喚時点まで、再育成が必要です。

再育成期間には育成と同時に精神支柱を形成します。

育成が完了した時点で、両名はアレフギアでの記憶がありません。

両名のアレフギアでの記憶は精神を壊すほど過酷です。

アレフギアでの記憶を戻すには精神を保護する機構が必要です。

この保護する機構が精神支柱です。

精神支柱なしに記憶の再登録を行えば、

両名の精神は前と同じく破壊されます」


俺「アレフギアでの彼女たちの記憶を戻す必要がわかりません。

必要なのでしょうか?」

モモ医師「人間の記憶メカニズムは複雑です。

記憶を消しても、不安感や恐怖感は残ります。

不安感や恐怖感におびえて生きるか、

それを乗り越ええて生きていくかの選択です。

アレフギアでの記憶を戻さない場合、

彼女達は将来、訳のわからない不安感や恐怖感が原因で精神を病むことになります」

俺「アレフギアでの記憶を戻す件は理解しました。

精神支柱について説明してください」


モモ医師が精神支柱について説明してくれた。

精神支柱はどんなことが起きようが必ず助けてくれる存在、

例えるなら「幼子にとっての母の様な存在」、

そんな存在が精神支柱。

「必ず助けてくれる」ことを理性を超えて実感し、

無条件で信じられる必要がある。

精神支柱は体験を通してでしか育たない。

また、一度、精神支柱となった場合、一生続く。

途中で精神支柱を止めることはできない。

それは死が分かつまで続く。

まあ、玲は俺の嫁だから問題ない。


モモ医師「花田あかりさんについても精神支柱が必要です。用意をお願いします」

俺「了解しました」

雄太のことが頭をよぎる。お願いしてみよう。

重い話だ。雄太は引き受けてくれるだろうか。


    *    *


ドアをノックした。「どうぞ」の声に、ドアを開け、

俺「こんにちは、入って良いですか」

ローラ「あなたは、どなた?

もしかして娼館から私を救い出してくれた人ですか」

俺「はい。俺がローラをここに連れてきました」

ローラ「ありがとうございました。

でも、その、どうして」

俺「俺、ローラさんの知り合いです。

それで助けました」

ローラ「知り合い?お客さんかしら。

覚えてなくてごめんなさい」

俺「前、森でローラさんを見つけて、クジュ村に送りました」

ローラ「あ、あの時の。

そう、奴隷に売られたはずなのに、なぜかクジュ村にいたの」

俺「ローラさん、家に帰りたいって泣いたから、送りました」

ローラ「ありがとう。

でも覚えてないの、お名前は?」

俺「優斗です」

ローラ「ローラと呼んで。さんはいらないわ」

俺「ローラ、病気が治ったら、俺と暮らしてください」

ローラ「ありがとう。まさかプロポーズ?」

俺「はい。一生ローラの面倒見ます」

ローラ「本気?」

俺「はい。本気です」

取りあえずはこれでいい。

明日も来よう。


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