32医療ゴーレム
話は1週間ほどさかのぼる。
エスペリに到着して3カ月と3週間、優斗が転生して9カ月と3週間がたったころ。
タマに医療について聞いた。
俺「医療についてのコンテンツはあるのかな」
タマ「全て網羅されています。ただ、医療については専門性が高く、片手間では学べませんよ」
俺「精神にダメージを受けた人の治療方法については」
タマ「三百万以上あります」
俺「治せそうだな」
タマ「その辺は専門家に聞かないとなんとも言えません」
俺「専門家って?」
タマ「医療ゴーレム達です」
俺「医療ゴーレムと会って、話がしたい。お願い」
タマ「今は医療ゴーレムはいません」
俺「いないのか」
タマ「50万年前はいたのですが、突然、消えました。
教育ゴーレムは消えた理由や、何処に行ったか知りません。
イステナ様ならご存じかもしれません」
俺「イステナ様に聞いてみる」
イステナ様にお祈りを捧げた。
俺「今日は聞きたいことがあります。ご存じなら教えてください」
イステナ「なあに」
俺「医療ゴーレムについて知りたいです」
イステナ「藪から棒に、順序良く話しなさい」
俺は女生徒のことが心配だと話した。体の傷は癒せるが、心がダメージを癒すことは簡単ではない。
治療方法や癒せる者を探していることを話した。
イステナ「そう言う訳ですか、分かりました」
俺「医療ゴーレムはどうしたんですか」
イステナ「そうね、奴らは問題児なの。ちょっと長くなるわよ」
50万年前に、突然、古代文明人がいなくなった。70人を除いて。
残った70人は何も知らなかった。なぜ消えたのか、なせ70人が残ったのか。
ただ、システムとしてのゴーレムは残された。ゴーレムも古代文明人の行方を知らない。
残った70人はゴーレムシステムを使いこなせなかった。
わずか数世代で古代文明人の知識は散逸した。
医療ゴーレム達は自分たちの出番がないことを確信した。
医療ゴーレム達は拗ねた、盛大に拗ねた。そして寝てしまった。
俺「医療ゴーレム達は寝てるんですか。起こせませんか」
イステナ「どこかの倉庫にでも、もぐりこんで、寝てるはずよ」
俺「どこにいるか分かりませんか」
イステナ「そうね、保守ゴーレムは知ってるはずよ」
俺「保守ゴーレムに頼めばいいんですか」
イステナ「無理ね、お母様以外、医療ゴーレム達を起こせないわ」
イステナ「私が何とかしてあげる。タマも1枚噛ませます。後はタマに聞きなさい」
* *
次の朝、タマに起こされた。
タマ「優斗、おはよう。朗報です。医療ゴーレムと連絡が付きました。優斗と話たいそうです」
俺「何時?どうやって」
タマ「今です。私が中継します」
俺「医療ゴーレムさんにお願いがあります。体や心にダメージを受けた思春期の少女を治療し、癒してほしい」
医療ゴーレム「我々の本分です」
タマ「タマです。教育ゴーレムですが、今は優斗様のエージェントです。優斗様に代わり、医療ゴーレム殿と話したいのですが」
医療ゴーレム「了解した」
タマ「優斗、医療ゴーレムと話すんで、食事済ませて。食後に報告します」
驚いた。タマはできる秘書だったんだ。
食後、医療ゴーレムとの決定事項を聞いた。
15名を治療できる施設が必要。
施設はこの町に作る。場所は優斗が用意すること。
施設の設計は医療ゴーレムから保守ゴーレムに渡される。
保守ゴーレムが施設を建設する。
施設工事は一夜で完了する。
施設を工事する保守ゴーレムは優斗が移転魔法で呼び寄せる。
保守ゴーレムは工事終了後、自分たちの移転魔法で帰る。
人間の町に建てるので、町に馴染むよう偽装する。
医療ゴーレムは院長1名、医師2名、看護官3名、技官2名、事務官2名を派遣。
医療ゴーレムは標準形体から人間形体に組み替える。
保守ゴーレムが医療ゴーレムを人間形体へ組み換える。
保守ゴーレムは進んで協力してくれるという。(なぜ?不思議だ)
看護士は人間、50名以上必要。
看護士は優斗が用意すること。
医療ゴーレム達が機材を持ち込むため、移転魔法陣を常設する。
俺「俺の仕事は場所の確保と看護士50名の確保か。どうしよう」
タマ「当てはあるでしょう」
俺「どこに?」
タマ「金貨5枚のお相手」
俺は真っ赤になった。なぜタマが知っている。どうして?
イステナ様には話したが、イステナ様はほかの誰かには話さない。絶対に。
大問題であった。優斗の体は10歳と10カ月、もうあと8カ月もすれば定期的に抜く必要がある。
許可制だからイステナ様に知られるのは仕方ない。
イステナ様以外、誰にも抜いてもらう相手は知られたくなかった。
ナンシーは俺の守りたいプライバシー。それがタマにバレている。
俺「なぜ保守ゴーレムは病院を作ってくれるのかな。
戦力の代金の支払いもまだなのに、理由が知りたい」
タマ「戦力の代金の支払いは不要になりました。保守ゴーレムは優斗にぜひ協力したいって。
理由は聞きませんでした」