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19.【三宅澄江(ニュータウン住民)の証言③】


こんにちは。悪いわねえ、ご馳走してもらっちゃって。

ここの喫茶店、チーズケーキセットが最高なのよ。


それで今日は……そうそう、都築さんの次に丘の家に住んでた方のことよね。

有賀さんっていうご夫婦でしたよ。

2000年代に入ってから……たしか日本でワールドカップがやってた頃に越してらしたと思うわ。子供はいなくて、夫婦二人暮らしだった。


有賀さんはそうねえ……あまりご近所との交流が無い方たちだったわ。

言っちゃ悪いけど、上から目線っていうの?

『うちはあなた達とは違う』っていうのが滲み出てたというか。

何でも、こっちに越してくる前はタワマンにお住まいだったらしいのよ。

ご主人はIT長者っていうのかしら?シュッとした青年実業家みたいな人で、あの頃のITブームに乗って事業を拡げたけど、潰しちゃってマンションを手放したみたい。


それでも奥さんはご主人よりは馴染もうとなさっててね。

最初はちょっと上から目線の若奥様って感じに見えたけど、話してみるとそうでもなくて。"金の切れ目が縁の切れ目"な人もいるのに、事業で失敗したご主人を辛抱強く支えててねえ。割安で売りに出てたあの家を見つけたのも奥さんで、購入も奥さんの貯金からだったらしいの。


当時はデフレ真っ只中で、ここらの中古ってすごく安く買えたのよ。まだ新築信仰が生きてる時代でしたし。タワマンから中古の戸建て暮らしになったのも、『前から戸建てでガーデニングとかやりたいなって思ってたから、ちょうど良かったんです』なんて笑ってたわ。


でも、そういう態度が余計にご主人のカンに障ったみたいなのよ。

『家計の足しに働きに出たい』って言ったら『俺への当てつけか』って言われて許可してもらえなかったってこぼしてらしたもの。


まあ、そんな感じだったから……ああいうことになっちゃったんでしょうねえ。


出てっちゃったんですよ。旦那さん残して。

その前から、時々有賀さんのお宅の近くで見慣れない若い男の人を見かけることがあってね。

『泥棒かしら?』なんて怖く思ってたんだけど、奥さんが出て行ってからとんと見なくなって、『どうも奥さんは浮気相手と駆け落ちしたらしい』って噂が立ってね。


さすがに家に上げてる所なんかを見た人はいないけど、状況証拠っていうの?

『若いツバメが奥さん恋しさに、外で会うだけじゃ我慢できずにせめて家の外から彼女の憂顔を想い……』なんて近所の主婦の間じゃもっぱら噂でしたよ。その頃ブームだった昼ドラみたいに、井戸端会議でめいめい自分が考えた"シナリオ"を披露しちゃってね。


その後も旦那さんはしばらくあの家に住んでたみたい。意地もあったと思いますよ。見下してた「近所の主婦連中」に好き勝手噂されて、逃げ出すみたいに出ていくのは嫌だっていう。

……まあ、今思えば意地悪だったかなとは思いますけど。正直、ちょっと痛快さもあれば反感もありましたからね、有賀のご主人への。奥さんがいなくなってますます周りを見下すような態度を隠さなくなりましたし。


ただ、ご主人もさすがにあの家にずっとはいなくて、いつの間にか人の気配がなくなってましたね。それでも手放してはいなかったみたいだけど。どこかで、いつか奥さんが帰ってくるかもしれないって思ってらしたのかしらね……。


それから山田さんの前の住人が入るまでは、誰も住んでなかったと思うわ。

いつの間にか売りに出て、いつの間にか新しい方が住んでたみたい。


……有賀の奥さん?ええ、綺麗な人でしたよ。それに料理上手だった。

今みたいにスマホでレシピも見られない時代に、一風変わった外国のお料理なんかも作れてね。

トルコの料理って言ってたかしら……親戚からたくさん茄子をもらった時におすそ分けしたら、調理して返してくれたのよ。茄子のペースト入りのホワイトソースを合わせたシチューだったんだけど、すごく美味しかったから覚えてるわ。



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