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11.【角谷啓吾(ニュータウン住民の息子)の証言】


……ああどうも。

親父は入院しちゃってるんで、俺で良ければ答えます。

とはいっても俺は町を出て長いんで、お役に立てるかわかりませんけど。


……ええ、そうです。80年代に宅地造成された当時に買った組です、ウチは。


まあ、ええ。結構減ってると思いますよ。

俺も含めて、成長した子供はどんどん出てっちゃって、親だけ残ってるって家が多いんじゃないかな。

買った当時は地価が右肩上がりで、両親も「将来は子供の資産に」なんて思ってたのかもしれませんけど。まあ、現実は知っての通りですよ。いわゆるニュータウンって、ある程度どこもそんなものじゃないですかね。

それでもここは都内への通勤圏だし、嘘八百の原野商法みたいなのを掴まされた人に比べればマシですよ。親父はその代わり、株の方でちょっとやられたみたいですけどね、はは。


……え?ははは、そうですか。

嫌な思いさせてたらすみませんね。親父も根は悪い人じゃないんですけど。ちょっと偏屈なところがあって。


親父もねえ。お袋が死んで一人になってから、俺も姉貴も『家を引き払って一緒に住もう』って言ってるんですが、頑として応じないんです。

リモートワークが増えて、この辺の戸建ても需要が増えてるっていうから、家を手放す良い機会だと思ったんですがね。一人で置いとくのも心配だし……入院を機に思い直してくれるといいんですが。


この前ここで育った知り合いと話したんですが、そいつの親も同じような感じらしいです。愛着があるだなんだって理由は色々並べられますけど、やっぱり売価がネックなんじゃないかな。

結局のところみんな、買った時の値段が忘れられないんですよ。


おっとすみません、脱線しちゃったな。


山田さん……でしたっけ?丘の家に越してきた方ですよね。

俺はその人自身とは面識が無いんですが。……前の住人ですか?

うーん、それもなあ……あそこは結構持ち主が変わってるんですよ。


俺が子供の頃は若い家族がいたと思いますよ。

やっぱり当時ここに住んでたのはほとんどファミリー層でしたから。

たぶん……俺の少し下くらいの男の子がいたと思う。


ただ、当時は子供も母数が多くてグループごとでつるんでたから、

年やグループが違うとほとんど面識ないんですよ。

小学校も一学年で数百人とかでしたし。


俺が高校生になる頃には、気づいたら空き家になってましたね。

覚えてるのは中三の時……受験勉強で煮詰まって、気晴らしに夜の散歩に出たんですよ。

それで何となく丘の方へ歩いて行ったんです。あの辺りは緑が多いから。


そしたら結構夜中だったんですけど、あの家の電気がついてて。

カーテン越しに忙しなく人が動いてる影が見えて、くぐもった……何か言い合いするような声も聞こえてね。その時は散歩してても頭は受験のことでいっぱいだったから、ちょっとヘンだなくらいにしか思わなかったんですけど。


高校受験が終わって落ち着いてきた頃かな。大人たちの会話が耳に入ったんです。

どうもあの家の住人、夜逃げしたらしくって。

その頃はちょうど、大手の証券会社が破綻して世を騒がせてた前後で、住宅ローン破綻も増えてたんですよね。

リストラなんかも増えて……『どうもあのお宅のご主人は失業してたらしい、その前から夫婦仲もマズかったらしい』なんてお袋が噂してるのを聞きましたね。噂話ですから、どこまで本当かわからないですけど。


その後は、たぶんしばらく空き家だったんじゃないかな。

俺も高校からは都内に通学するようになって、友達と遊んだりつるんだりもそっちが多くなってたから、正直あんまり覚えてないんですよね。


それにしても、あの丘の家にねえ……。

いや、別に悪いとは言いませんけど、女性の一人暮らしで選ぶ家かなと思って。


あの家って他の住宅から少し離れた位置にあるし、

裏が林で死角も多いじゃないですか。

女性が一人で暮らすには、ちょっと不安な立地だと思うんですよ。

元々ファミリー向けだから、一人暮らしには持て余しそうですし。


親父の入院で帰ってきた時に久々にこの辺を歩いてみたんですが、昔に比べれば街灯は増えたけど、それでも夜は暗いし、あの辺りは人通りも少ないですしね。


まあ、だからこそあまり人気がなくて、良い条件で買えたとかなのかもしれないですが……。


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