20話 魔鉱石の濃縮核
私たちを襲った野盗たちはものの見事に私を襲う事に成功。そしてシュバルツ様にはトドメをささず、彼の目の前で私を辱めた事で、シュバルツ様には大きな精神的ダメージを負わせてやった。
――という事にして、この内容を伝えにダリアス様のもとへ戻れと私は野盗に命じた。
それを聞けばあの陰湿なダリアスでも充分満足するはずだからだ。
「それと、貴方にはこれを差し上げますわッ!」
私はそう言って、馬車の中に入れておいた私の小さめなトランクバックから、予備の私の下着を取り出した。
「え? パンツ?」
「わ、私のお気に入りですわよ! それをちょっと破いた感じにしてダリアス様に手渡せば、彼も納得しますわよ!」
「リ、リフィルさん。いくらなんでもそこまで……」
「あーッ! シュシュ、シュバルツ様はまだ目を開けちゃダメですわぁー! ちょっと貴方、さっさとそれ、ポッケにおしまいなさい!」
弟のルーフェンと、この何処の馬の骨とも知らない野盗なんかにパンツを見られるくらいどうでもいいですけれど、シュバルツ様だけには見られたくありませんもの。
「……俺、本当に殺されないよな?」
ダミ声の野盗がまだ心配そうに呟いているので、
「大丈夫ですわ。もし仮に私やシュバルツ様が王都で彼らに会ったりしても、なんとなく話を合わせますから。だから貴方はさっさと帰りなさい。もし本当に困ったら、アルカードにお逃げなさい。そうしたら今度こそルーフェンが助けてくれますわよ」
「……わかったよ。あんたらに逆らっても、ダリアス坊ちゃんに逆らっても俺には勝ち目はねえ。だったら、お嬢ちゃんの言う通りにするわ。なんか……すまなかったな」
急に従順になったダミ声の男は、ペコリ、と私たちに頭を下げた。
「おう。もう二度と何があってもリフィル姉様を襲うなよ。次は本当に絶対殺すからな」
「う、わ、わかってる。けど、その……お、俺がやばかったら、あんたの所に頼ってもいいんだよな……?」
「……リフィル姉様が言ったんじゃ仕方ねえからな。ダリアスの所へ行って、上手くいかなきゃ逃げてこい。匿ってやる」
「し、信じるからな? 絶対だからな!?」
「あーわかったわかった。さっさと帰れッ!」
「あ、俺の名前、ドノヴァンっていうんだ。ドノヴァン・グース。覚えといてくれよなッ! 世話になるかもしれねえし!」
そう言って野盗の男は去り際に名前を告げ、そして私のパンツをギュッと握りしめ、王都へと帰って行った。
「……しかし本当にダリアスの奴に何もしなくても良いのか? また何か嫌がらせをしてくるかもしれねぇぞ?」
んもう、ルーフェンったらまた同じ事を言い始めましたわ。
「大丈夫ですの。彼は放っておいても、近い将来それどころじゃなくなるんですわ」
「それどころじゃなくなる? ってのは一体……」
私の【魔力提供】の効力が尽きて、魔力キャパシティも本来の状態に戻り、覚えた上位魔法もほとんど使えなくなる、という事なのだが、それは口にできない。
「……私、内緒にしていたんですけれど、実は星占いに最近ハマっていたんですの。その占い結果にそう出ていたんですわ」
「う、占いぃー……?」
「リフィルさん、いくらなんでもそれは希望的観測過ぎるのでは……」
ルーフェンもシュバルツ様も少し馬鹿にした感じで私を見るが、もう他に言いようがなかったので、私は強引にそれで納得させた。
とにかく何もしなくていいのだ。
私の予想が正しければ、あと一ヶ月もすればダリアス様はまた落ちこぼれ魔導師に戻るはずなのだから。
「はあ。なんだか疲れて喉が渇きましたわ……」
「あ、それならリフィルさん、ルーフェンくん。これでよければ」
そう言ってシュバルツ様は黄色い液体が入った蓋付きの瓶を私たちに手渡した。
「お、こりゃあハニーウォーターだな。シュバルツ殿、なんでこんな物を?」
「リフィルさんが以前、夜会で好きだと言っていたので多めに買い置きしておいたのだ。良かったらそれを飲んでくれ。私も頂くとする」
「ありがとうございますわ! 私、喉がカラッカラでしたから助かりましたわぁ」
「さすがシュバルツ殿だ。気が利くぜ」
私たちはお言葉に甘え、ハニーウォーターで喉を潤す。
「それよりルーフェン。貴方、一体なんでこんな所にいたんですの?」
「ああ。俺が孤児院から戻ったら、ルーラの奴が教えてくれたんだ。姉様が彼氏とデートだって。きっと明日の朝まで戻らないだろうから、用があるなら今のうちに追いかけた方が良いって言われてな。俊足の魔法で追いかけて来たってわけだ」
「「ぶーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」」
私とシュバルツ様が同時にハニーウォーターを吹き出した。
「ど、どどど、どーゆー意味なんですのそれは!? そ、それにまだシュバルツ様は彼氏とかではなくて……ッ」
「ゲホッゲホッ……! んん! そ、そうだルーフェン殿。私とリフィルさんはまだお付き合いしているわけではなくてだな……」
「あん? そうなのか? おっかしいな、ルーラの奴は姉様ったらすっごいイケメン貴族令息にメロメロで、きっと今晩は熱い夜を過ごすはずだからとかなんとか言ってたんだが……」
私とシュバルツ様は同時に顔を真っ赤にして、その後もしばらくわけのわからない言い訳を繰り返した。
「まあそれはともかく、姉様に渡しておきたい物があったんだ」
そう言ってルーフェンは胸ポケットから小さな青白い小石のような物を取り出して、私へと手渡した。
「これはなんですの……?」
「そいつぁ世にも珍しい希少石、魔鉱石の濃縮核だ」
「なんですの、それ?」
「コイツぁな、探そうと思っても見つかる物じゃねえ。世界にどれだけあるか知らねえが、滅多にお目に掛かれる代物じゃねえんだが、偶然孤児院のガキからもらったんだ。リフィル姉様、いまだに上位魔法はひとつも覚えられねえんだろ? だったらそれを飲み込んでみろ」
「え、ええ……? この小石を飲むんですの……?」
「そりゃあ魔鉱石って言ってるが厳密には石じゃねえ。魔力の濃縮された結晶みたいなもんだ。そいつを体内に取り込むと、爆発的に潜在魔力が底上げされる。魔力キャパシティも大きく上がるから姉様でも絶対に上位魔法を覚えられはずだぜ」
「ルーフェン……貴方、これを私に届ける為に、ここまで追いかけてきてくださったの?」
「そうだよ。だって姉様、まだ【宝石変換】できねえんだろ? 王都でパーティやらに出る時は貴族婦人の必須魔法みたいなもんだし、これでそれを覚えられればリフィル姉様も肩身が狭い思いをしなくて済むだろ」
「ルーフェン……ありがとうございますわ」
「ま、むしろそいつのおかげで姉様やシュバルツ殿を助けられたから、一石二鳥って奴だな」
シュバルツ様も頷いて、
「本当に助かったルーフェン殿。ありがとう。また後日、貴殿のお屋敷へ礼にお邪魔してもよろしいだろうか?」
「何言ってんだシュバルツ殿。あんたは姉様の彼氏なんだから、遠慮なくいつでも遊びきてくれ」
ルーフェンったら、またそんな事をッ!
シュバルツ様もルーフェンの言葉に「自分なんかではリフィルさんには不釣り合いで」とか否定しなくても良いのに。
こんな騒ぎがあったものの、私たちはようやくパレードに遊びに行く事ができたのだった。
連載版もお楽しみいただけて、ありがとうございます。
この先もエンディングまで可能な限り毎日更新心掛けていきます。
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