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『正義』

<雉野 雪野視点>

(ふふふ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。でも、運までこなたの味方やわ。やっぱり負ける気はせーへんのー。)

彼女は微笑んでいた。誘拐したのは彼女ではないが、単純に自分の運のよさによるある意味実力だろうと考えていた。雪野は、おおそよの紗耶香の思考を知っていた。

雪野のパートナーの能力は、相手の精神に入って、幻影を見せたりその人が考えていることを当てることだった。自分のことを詐欺師とのたまう香川天彦対策に連れて来たパートナーだった。彼女を慕っている信者の一人であり自分の能力を少しだけ知っている数少ない信者だった。

だが、伊勢神宮にて幻影を見せることで時間稼ぎをしたり、香川天彦の妹が誘拐されていることを知ったりでき、思っていた以上の活躍を見せていた。

(にしても、最弱とはいえスプリーム4やわ。こなたが、ここまで能力を使うとは。香川天彦さんもアホやのぅ。もしも、遮断が使えなかったらこなたはあんな能力は使えませんのに。自ら墓穴を掘るとは。まぁ、妹さんの誘拐なんて想定外やからそれを叱責するのも弱者の方には可哀想やもしれませんけどなぁ)


雉野雪野は黒川紗耶香のことを心底バカにしながらも、一度負けたことのある相手である彼女のことを心のどこかでは警戒していた。

能力開花の前とはいえ負けた事実がそうさせた。負けがほぼない雪野にとっては警戒するに足る存在であると口でなんと言おうと心の弱い部分が警戒を促してしまっていた。


(せやけど、警戒し過ぎたかね?伊勢神宮の八咫鏡で決着をつけることもできたかもしれへんな。反省やな)


もうすでに、彼女には八咫の鏡が見えていた。雉野雪野は、神知としての役割を再び演じる。

ただ、日常に戻る。

そのことに絶望している自分もいた。

(本当は、天彦さんとやりたくもあったんやけどなぁ。まぁ、運も実力のうちですから仕方があらへんけど、もう一度くらいは勝負してもよかったかねー)

奴隷勝負に勝ってからは奴隷になってしまうだけに勝負はイーブンの状態ではできない。

そのことを少し残念に思う自分もいた。

新雪の巫女は、外来からの未知の生物との勝負を心の底から楽しみにしていたのだった。


黄金の風が舞った。

「そこまでですわ。NPCとはいえ、たくさんの命を奪って心はないんですの?そのうえ、うちの主人の妹を誘拐して勝利しようとするなんて非道もいいところ。私が正義の鉄槌をくださせていただきます」

彼女の非を突き付ける正義の味方がそこにいた。


この場所まで紗耶香が来たことを驚いた雪野は、驚く前に

「紗耶香さんに『遠雷』」

『プレイヤー 雉野 雪野により『遠雷』の発動を受理しました』


無機質すぎる、ジーニの声が響き渡った。


どすん


それに重なって、感情のない音が聞こえる。

黒川紗耶香は遠雷により動けなくなっていた。


「紗耶香さんもまだ、王道なんていうあまっちょろいことを考えておざりますの?そんなんでよくもまぁこなたに勝ちましたわ。本当に鬱陶しいクソガキでおざりますねぇ。こなたを見つけた時点で、『遠雷』を発動していれば勝っていたものを」

無情なまでに正確なプレイイングを雪野はしていた。驚く以前に、速度で勝る紗耶香を行動不能にすること。

その正確な判断を下していた。この判断ができるからこその白星の積み重ねだった。

「そなたの、勝ちはこれで万が一にもなくなりましたのぉ」

嘲るように紗耶香を見下す。

そして、黄金の髪を持った少女の腹を思いっきり蹴る。

蹴る。蹴る。

殴る。

そして、再び蹴る。

清廉な巫女服の袖を揺らしながら彼女は暴行を繰り返す。無表情に淡々と。

無抵抗の紗耶香に向かって無慈悲の暴力を。胸を大きく揺らすほどに躊躇いのない暴力を。


「遠雷の時間はまだ余裕がありはりますし、ここは仮想空間でおざりますからどれだけそなたを傷つけてもいいんやよね。こんな幸せな空間はありませんなぁ。せやけど、遠雷によって、顔をしかめることすらできんのはつまらんなぁ。もっと、紗耶香さんの顔を歪めて嬌声を聞きたかったんやけど」 


そうして、飽きたと感じて、再び八尺瓊勾玉の方へと進む。

清純な巫女服を着た、獣の感情を持った人形は、勝利への道を哀れな人形としてただ突き進む。


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