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奇襲・後編

 階段を駆け上がれば木製の扉が進路を塞ぐ。が、勿論そんなものが障害になる筈がない。俺は身体強化魔法を全身にかけて力一杯に扉を蹴り破る。木製の扉は幾つもの木片となり砕け散り俺たちに新たな光景を見せてくれる。

 扉の先は書斎のような場所であり俺が蹴破った音を聞いたのか部屋に数人の男が入って来る。見るからに村人ではない。盗賊を思わせる風貌の男たちは俺を見ると腰にかけていた短剣を取り出しこちらに襲いかかって来る。


「死ね!」


 俺は放電を前方に向けて起こす。空気の抵抗を受けて真っすぐには進まない雷だが進路を決めていた事と男たちが持つ短剣を避雷針にして突き進む。男たちが短剣を話す行動を取る事もままならない状態で雷が全身を感電させる。一瞬だけしか通らない自然の雷とは違い男たちが確実に死ぬまで雷を出していく。

 やがて周囲の家具に引火し村長宅を燃やしていく。その段階になり、漸く雷を止めたが男たちは全員皮膚を黒くなるまで焼かれ絶命していた。それを確認した俺は後ろにいるリナに言った。


「俺は上に行く。お前は一階を掃討するんだ。もし村人たちが襲い掛かって来るようなら殺して構わない」

「分かりました!」


 リナの返事を聞き俺は部屋を出ると二階へ通じる階段を登っていく。そして寝室と思われる部屋の扉を蹴破る。が、俺はその瞬間頬に激痛を感じると同時に部屋の外に吹き飛ばされていた。村長宅の柱に衝突したため外に放り出される事はなかったものの柱はへし折れてしまった。別に俺の家ではないしどうでもいいがな。


「くっ!」

「はっはっはっ! 馬鹿なやつを一人仕留めてやったぞ! よくやった!」


 あまりの痛みに意識が飛びそうになりつつ部屋の中を見れば俺を攻撃したであろう龍人族の女性とその隣ではしゃぐ村長の姿があった。デブなおっさんが飛び跳ねるようにはしゃいでも気持ち悪くて汚いだけだ。今すぐその顔面に一撃を入れたいがその前に目の前の女性をどうにかしないといけない。

 リナによると龍人族は奴隷にならずに今も抵抗を続けている魔族でありその力は魔王に匹敵する実力を持っていたらしい。勇者と言えど全員を討ち取る事が出来ずに現在までその命脈を守ってきているようだ。そんな種族の一人が目の前にいて俺に立ちはだかっている。

 正直に言って勝てるかは分からないな。流石に相手が強すぎる。とは言え倒さない限り村長には届かない。


「……」

「仕方ない。お前には悪いが本気で行かせてもらうぜ」


 俺は鬼属性魔法と武属性魔法を重ねが決して身体能力と武器に斬撃ダメージ、更に防御力を大幅に上げていく。バフの上から更にバフをかけていく。その様子を少し目を見開いてみている女性。恐らく俺の重ね掛けに驚いているのだろう。リナだって最初に見た時は驚いていたからな。


「よし、こんなものか」


 全てのバフをかけ終えれば俺は一種の万能感に包まれる。それは間違いではないだろうし余程のことが無い限りこの世界の最強近くまでなれたはずだ。俺は刀を抜き、構えると一気に駆けだす。先程までは三歩かかっていた距離を一足飛びで軽く超えて女性に接近する。奴隷の首輪の影響だろう。女性も魔法を自身にかけて攻撃に備えている。更に両腕が鱗で覆われ鋭い爪が姿を現した。こういった種族特有のドラゴンになれるような感じのものだろう。部屋の中ゆえにドラゴンになったりはしないのかもしれない。

 だが、そんな事は俺にとっては好都合。全力を出し切れない相手に俺は全力で挑む。刀を上段から振り下ろせばそれを僅かな動きで避ける。二回目、三回目と攻撃を行えば相手も同じように避ける避ける。すべてが小さな動作で済まされている辺り相手の動体視力は高い。

 そして今度はこちらの番だとばかりに鋭い爪が襲い掛かって来るが俺も僅かな動作で避ける。武術の心得がない俺では女性の様に最小限とはいかないがそれでも俺に出来る最小限の動きで避けた。


「ふっ!」

「っ!」


 次の攻撃の為に一度両腕を下げたところを突き刀を下から頭部に向けて突き刺す。目を掠るように飛び出て来たそれに女性は思わず仰け反った。ここに来て初めてにして恐らく最大にして最後のチャンスだ。俺は刀から手を離し、右手を握り締めた。そして、


「おらぁっ!!!」


女性の腹部に向けて渾身の一撃を叩きこんだ。


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