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5話

カーテンの隙間から射す日差しでセレフィアは目を覚ます。

まだ下がってこようとする瞼をこすりながら起き上がると部屋の時計が目に入る。

その瞬間セレフィアの意識が急激に覚醒した。

「遅刻しちゃう!!」

滅多に寝過ごすことのないセレフィアはこの時ばかりは、日頃から目覚まし時計をセットする習慣のない自分を恨んだ。

パジャマを脱ぎ捨て大慌てで制服を身に纏い軽く髪を整える。

「いってきまーす!」

そう言って家を飛び出したセレフィアは学校まで全速力で走った。

いつも学生たちで賑わっている校門付近に人が居ないのを見てセレフィアはさらにスピードを上げて走った。

昇降口に着き、息を整えているセレフィアの後ろから声がした。

「セレフィア?」

その声に振り返るとそこにはノイルが立っていた。

「ノイルはいつもこんなギリギリに登校してるの?」

セレフィアの言葉にノイルは首を傾げた。

「ギリギリって?今日は寧ろすごく早く来たよ?」

キョトン、とした顔のセレフィア、訳が分かっていないノイル。

二人の間に少しの沈黙が流れたが、ノイルは自分の腕時計をセレフィアに見せた。

「ほら、今は7時45分」

その瞬間セレフィアはへたり込んだ。

校門に人が居ないことに焦っていたがそれはそうだと納得した。

「遅刻するかと思って朝ごはんも食べずに走って来たのに、ただの見間違い……」

朝ご飯を食べ損ねていたことを知ったノイルは、自分の朝ごはん用に持ってきていたパンを鞄から出して半分に分け、セレフィアに差し出した。

「これ食べなよ、またお腹鳴っちゃうよ?」

とセレフィアを揶揄ったノイルに、顔を真っ赤にしながらも食欲に勝てなかったセレフィアはそれを受け取り、恥ずかしさから話題をそらしたくてノイルに尋ねた。

「そういえばノイルはどうしてこんなに早く学校に来てたの?」

そうセレフィアが問いかけるとノイルはハッとして残った半分のパンを鞄に戻して言った。

「先生と約束があるんだ」

言い終えるとノイルは職員室に続く廊下を走って去っていった。

「行っちゃった」

ぽつりと呟くとセレフィアはゆっくりと自分のクラスへと向かって階段を上り始めた。

自分の席に着き鞄を置くとセレフィアはノイルにもらったパンを齧りながらふと思った。

早く来すぎたせいでやることがない。

図書室ならこの時間でも開いているかもしれない。そう思ったセレフィアは図書室のある一階へと向かった。

図書室の扉を開くと、紙とインクの香りがセレフィアを包み込んだ。

天井まで届きそうな本棚には、数え切れないほどの本が並んでいて、普段はあまり足を運ばない場所だったが、今日は不思議と心が弾んだ。

まるで宝探しをするように、セレフィアはゆっくりと本棚の間を歩き始める。

小説、詩集、図鑑、専門書、語学書、そのどれもがセレフィアの心を躍らせた。

そろそろ読む本を決めようかと、普段あまり手の伸びない民俗学の棚に向かった。

そこで、一冊の本が目に留まった。

『星と月の古代伝承』

その題名に惹かれ、セレフィアは本を手に取った。

星の加護と月の守護。

その存在を知らない者は、この国にはほとんどいないだろう。

そして古代よりその力を守り続けてきた一族がいることも。

けれど、それぞれの一族に伝わる特別な魔法については、今も分かっていないことが多い。

セレフィアはページをめくりながら、ある一節に目を留めた。

『ステルミラ――星々に刻まれた記憶を読み解く古代魔法。その継承者については、現在も明らかになっていない』

そして続く項目にはこう記されていた。

『ルン・セイル――月の光を介して、人々の心の奥底に眠る想いを映し出す古代魔法。その力は代々ルネア家に受け継がれてきたと記録されている』

「星の記憶、か……」

小さな頃から両親にルネアの家系のことを知らされていたセレフィアは自身が月の一族であり、継承者だということを知っていた。

けれど、星の魔法を受け継いだ者がどこにいるのか、セレフィアは知らなかった。

まだ気になることは沢山あったセレフィアだが予鈴が鳴ったのが聞こえ、本を元の場所に戻し教室へと向かった。

本鈴が鳴り担任の先生が教室へと入ってきたとき、セレフィアはふと思い立った。

古代エルヴェナ語や歴史を研究している先生なら何か知ってるかもしれない。

そう考えたセレフィアはホームルームが終わると教室を出ようとするエルヴァ先生を呼び止めた。

「エルヴァ先生、今日のお昼休みお時間ありますか?」

そう尋ねるセレフィアに先生は少し驚いた顔をしながら答えた。

「お昼ご飯を食べ終わったら先生の準備室においで」

職員室じゃないのかと思いつつも、先生にありがとうございますとお礼を言い、セレフィアはその後の授業を受けた。


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