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魔王国民謡:痘痕の月
痘痕の顔を丸く映して
月よ 今日も 空を往くか
醜貌されど鏡のごとく 陽の光を受けて輝く 輝く
痘痕の顔を丸く映して
月よ 今日も 空を往くか
草焼きの煙にむせこんで 顔をばわずかにそむけけり
痘痕の顔を丸く映して
月よ 今日も 空を往くか
幼子のような 我らを覗きこむ瞳
痘痕の顔を丸く映して
月よ 今日も 空を往くか
雲の切れ間に現れ隠れて
(注¹)麦の花の香 祝うなり
・解説
魔王国における麦栽培の始まりに、儀式として作業者皆で歌うもの。いくつかのバリエーションがあるが今回は王家ヴァサントに伝わるものを代表として文章化した。
赤麦の播種から収穫までの期間が約85日間であり、満月の日に蒔くと3回目の満月の日に収穫となることからこの歌が歌われる。
聖王国の慣習と違い、月を醜いと歌うことが特徴的である。醜い月の話は魔王国のひとつの文化的特色でもあり、民話でも醜女だが気立てのよい月の女神の話がある。美と善とは別のものとする魔族特有の美的感覚が分かりやすく表れている。
(注¹)麦の花。通常の小麦ではなく魔王国の主食、赤麦の花のことを言う。ごく淡いが後に麦飴になるときに表れる甘い香りがある。




