エレナと逆さま博士 ◆ 9 ◆
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「えっ」の目をしているエレナに、ファウストはぐっと顔を近づける。慇懃な態度が剥がれ落ちていく音をエレナは聞いた。
「いいですか小娘。耳の穴かっぽじってそのちいちゃいオツムに叩き込みなさい」
ファウストはスーッと細く息を吸い――
「崇高で聡明なドクター・ファウストの1分1秒をガキのお守りで浪費させないでください。ありとあらゆる学問をきわめたこの私の価値ある研究と東洋のライスバーガー屋さんごっこが同じだと? 〝知識〟の一画目すら心得ていないような小娘にアカデミックを語られるとは心外です。し・か・も! 忌々しいメフィストフェレスの血族に~~~~!! あ~あ、いけないいけない。私の唯一の欠点は気が短いことなんです、ご容赦を」
一気にまくし立てて、最後にニコ、とついでのように形だけの笑みを作った。彼はパッとエレナの頬を放したが、彼女は目を白黒させるばかりで何も言えなかった。ファウストはエレナの様子を気にもせず、踵を返して晴れやかな顔で外を眺め、のびーっと背伸びをする。
「さ、ライスバーガーのことは忘れて魔界に帰りましょう。そうすれば私は晴れてお役御免で、と~っても有意義な研究に戻れるのです」
ちらっとエレナを振り返って、ファウストは歯を見せた。
「理解していただけましたか? さっさと頷く程度なら無能な貴女でも難しくないでしょう?」




