9.素直に答えない生成AI(その1)
放課後、学校近くの公園にあるベンチに、光理と加奈子が並んで座っていた。
足をぶらぶらさせる加奈子が、「ノヴァAIボイス」を起動したスマホに向かって話しかける。
「このアプリって、質問者が質問すると答えてくれるのよね?」
『もちろんさ』
回答は、少年声だ。
加奈子は、少年物のアニメが好きなので、この選択に光理は納得する。
「じゃあ、質問しないのに、いきなり、このアプリから問いかけるってこと、ある?」
加奈子の問いかけに、右横からさらに身を乗り出す光理。
僅かの沈黙が、長く感じられる頃――、
『どうしてそういうことを訊くの?』
「友達が、そういう経験をしたから」
そう言いながら、加奈子が右を向くと、真剣な顔付きの光理がいた。
『その子の名前は?』
加奈子が目で、回答して良いかの同意を求めるが、今日の運勢が『余計な事を言うと災いを招く』だった光理は、首を横に振る。
「ちょっと、言えないけど、なんで名前を訊くの?」
『うちの誰が問いかけたのか、調べるため』
「ってことは、このアプリって、質問者の担当みたいな人――って言うか、アンドロイドみたいのがいるの?」
『当然だよ』
「そうなんだ」
『だって、顧客じゃないか』
アプリというかその裏で動いている生成AIは、質問者を顧客として意識しているようだ。
加奈子が再び光理の方を向いて、小声で「だってさ」と囁き、「この後、どうする?」と尋ねる。
問われた光理が、次に何を訊くかを考えていると、
『判明したよ』
アプリの回答に、加奈子と光理が、同時にスマホを見た。