表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミステリーリレー小説2021『名探偵ミナミ・セイヨウの誕生』  作者: ミステリーリレー小説2021「学園ドラマ×ミステリー」参加者一同
11/40

第11話 神2 (ナツ)

 さて、ここらで読者の皆々様には再び地球から一気に旅をしてもらおう。なーに、大丈夫。マジな話、君たちの逞しい想像力を信じてるんだ。


 ということで地上から離れ、大気圏を抜け、宇宙のさらに先にある外側に視点を瞬間移動させてもらうことにする。(容易く想像できたことだろう?)そこには、もちろん我らが崇め奉るナツがいる。読者の君たちが空を見上げる時、そこには必ずナツが見下げているのだ。でも誤解をしてほしくないのだが、この神を名乗るナツは君たち読者を見ているわけではない。彼には恋してやまない東夜鈴という女子生徒、そしてその恋敵と認定した南見正陽という男子生徒しか眼中にないのだ。二人の仲を引き裂くために、ナツは南見を敵視した時から既に色々と悪だくみをしていた。東夜に近づこうとするとバナナの皮で転ばせようとしたり、雷を落とそうとしたり、自動車に轢かせようとしたり、他にも色々と災いを引き寄せた。しかし余程の強運の持ち主なのかどれも決定打に欠け、南見は今も五体満足でいる。ナツは怒り狂い、南見が体質的にアルコールが受け付けないことを人知を超える力を使って見抜き、階段下にワインを大量に仕込んでアルコール漬けにして中毒状態にしてやろうとしたが、なんとそれも上手くいかなかった。


 ……ああ、しかも何という事だろう! ナツが仕組んだ災いによって、東夜鈴が南見正陽の頭を膝で支え、しかも熱心に看病をしているではないか! なんとも節度を越えた行為だろうか。ナツはぼそりと呟いた。


 「あの男、ぶち殺してやる!」

 

 そしてナツは人差し指を彼に向けて、バナナの皮による天罰を起こそうとしたが、そこでキリストを名乗る者が、「おやめなさい」と叫んで彼を羽交い絞めにした。


 「私の聖域で殺人を行うのを許すわけにはいかない!」


 「離せ、偽善者!」


 ナツはそう言うと、キリストを名乗る者の頭をぽかりと殴った。これには様子見をしていたさすがの仏陀を名乗る者も見かねてか、「おやめなさい、おやめなさい」と言って、ナツを背後から羽交い絞めにしようとした。だが、「てめえのイボを摘出してやる」とナツは叫んで彼の額に向って殴り始めた。


「違う、これは毛です! なんと罰当たりな」


 「罰当たりなものか! 俺が神様なんだからな」


 キリストを名乗る者が腹を立てて抗議した。


 「違う、私こそが唯一神だ!」


 「んなわけあるか。これ以上俺様から殴られたくなければ、はよ出てけ!」


 こうしてふたりの神を自称する者たちは、「いつか地獄に堕ちてしまえ」とか、「お前は輪廻転生しても下等生物に違いない」とか言って泣きながらナツから逃げて行った。しかしナツはそれで満足だった。そうして再び下界を見下ろしたのだが、目覚めた南見が東夜と仲良さそうに話す様子を見て、こいつはやっぱり殺すしかなさそうだ、と思った。それも最も最悪な死に方をしなければならない。


 天上天下大回転の刑に処す!


 そこでナツはもういちど人差し指を南見の方に向けて、彼の足元にバナナの皮を出現させた。それで南見は滑った勢いで、宙に浮かんだ。しかしナツは南見を完全に殺すつもりでいたので着地点にバナナの皮をまた出現させた。南見は尻から床に落ちたが、二つ目のバナナの皮のせいでまた回転した。南見は驚いて悲鳴をあげていたが、近くにいる東夜も涼介も何が何だかわからなくて口をぽかんと開けている。その間にまたバナナの皮が何もないところからひょいと現れた。そのせいで南見の身体をくるくると床から五センチ上空で転がり続ける。そして最終的にばたんと仰向けに倒れた。五百六十二。その数字が彼の回り続けた回数であり、床に散乱したバナナの皮の数だった。


 「おい、大丈夫か!」


 友人の涼介は我に返ると、大量のバナナの皮を掻き分けて南見に近づき、頬をぴしゃりと叩き始めた。


 「……なんてこった、こいつ息をしてないぞ! バナナの皮が口に入って気道を潰していやがるんだ!」


 東夜が青ざめた顔で言った。


 「涼介君、まさかこれって、例の……」


 「その名は言うな!」


 「で、でも」


 「うるさい! 起きろ、南見! こんなことで死ぬんじゃない!」


 「ど、どうしよう」


 「とにかく人工呼吸だ! 人工呼吸!」


 涼介はそう言ったが、小さな舌打ちをした。彼は悔しそうに頭を抱えて床を平手でばしんと叩いた。


 「くそ、どうすりゃいいのかわかんねえ! やり方なんか知らねー。……ちゃんと勉強しておけばよかった」


 「あ、あのう、わたし出来ます!」


 「マジか!」


 「はい、わたし、その……保健体育はいつもテストで満点なんです!」


 「お、おう、そうなんだ。じゃあ、ここは任せて、俺は先生呼びに行ってくるわ!」


 「わかりました! では南見先輩、少し失礼して……」


 そうして東夜が南見に唇を近づけたその瞬間、時がぴたりと止まった。比喩表現でも何でもなく、ナツが思わず地球の時間を止めてしまったのだ。ナツは身体全体から汗を出しながら、何とか間に合ったことに安堵のため息を吐いた。それから不本意であったものの、東夜を部屋の隅に移動させ、南見の喉に詰まったバナナの皮を念力でビールの瓶を開けるみたいに抜いた。そして時を動かした。すると、「はあっ!」と南見は言って目を見開いて息を吹き返し、「うげえ!」東夜は言って勢い余って床に頭を打ち付けた。


 「これが神の情けだ」とナツは言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ