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アメリカからの帰国

柊君がアメリカから戻ってきた直後です!


※次話は明日更新予定です!

 2話更新で、1話目は7:00、2話目は19:00予定です!

どうやら目的の人物は私の出している看板を見つけたようで、

笑顔でこちらに向かってきた。


大きなキャリーバッグを引っ張りながら、

こちらに近づいてくる姿はまるで学生のようだった・・・。

純粋で、真っ直ぐで、好印象を抱かせる。




「アメリカからの長いフライトお疲れさまです。」


「こんな下っ端のお迎えありがとうございます。」


「そんなことはございません。

 柊様は今回のプロジェクトのキーパーソンのお1人でございます。

 その御方の送迎を担当させていただけるのは光栄でございます。」


私の目の前にいる28歳の青年に頭を下げて、挨拶をする。


すでに私は一通りのプロフィールを読み込んでいた。


この仕事について30年経過している私。

どんな些細なことでも相手に不快なことを感じさせないように心がけており、

当然、手に入る情報すべてを集めて、確認して対応している。


まあ・・・今回は・・・私の持つルートではなく、

とあるルートからの情報を貰っているのだけど・・・




「これが柊についてのプロフィールだ。」


「拝見させていただきます。」


渡された書類を読みながら、彼の経歴を追っていく。


国立の阪大学を卒業後、我が社の照明事業部に入社し、

その一年後には再度卒業した阪大学の大学院に進学。


籍は照明事業部に置いたままで、大学院に通っていたのか・・・


その2年後には修士を獲得して、照明事業部に戻る。

その一年後にアメリカの企業と大学との共同研究のため

渡米して、2年経過後に戻ってきた・・・。


経歴の流れの項目にはそう書かれていた。

まあ、これだけなら優秀な社員で、数人くらいはいそうな話ではある。



そして私はそのまま下に続いている成果をみるのだが・・・


彼が入社してから携わっているのは有機ELと呼ばれる分野の研究であり、

その研究に使われる材料について開発を行っていた。


その成果だが、独自の材料開発に成功しており、

すでに彼の特許を使った材料が市販化されて、その売り上げが・・・


「20億!?」


思わず声を漏らしてしまう。

慌てて、


「失礼しました。」


「いや、その気持ちはわかる。」


苦笑して笑うのは我が社にある中央研究所の所長である宮本所長。


「それを入社して大学院を卒業するまでに達成したのが柊っていう子だよ。」


私は何も言わない。

私はただの運転手である立場をわきまえているのだから・・・


そんな私を理解しているのだろう。

宮本所長は、続けて彼の成果を話していく。


「4つの大学との共同研究を進めて、そのうち3つの研究成果を実用化し

 10億を稼ぐまでに至っている。

 それとは別に柊が独自に開発した材料で10億円の売り上げを達成している。


 ハッキリ言って・・・


 化け物だな。


 まさに絵に描いたようなプレイングマネージャーだろう?

 それぞれの大学の折衝とマネージメントをこなして、成果をだす。

 更には当の本人も成果をだしているのだからな。」


苦笑している宮本所長ではあったが、その目は全く笑ってはいない。


「更には国際学会での発表をこなして、

 その年で我が社内で一番報告した研究者となっている。

 我々中央研究所を押さえて、ただの事業部ごときがな・・・。

 更にはその年の本社の最優秀研究として照明事業部が受賞する要因となっている。

 いや~本当に素晴らしい。」


その冷たい目を見るだけで私は背筋が凍るのを感じる。

その笑みがまったく笑みをなしてはいなかった。


「まあ、その後は我々中央研究所が照明事業部から

 最優秀研究を奪え返したのだが、去年だ・・・。」


バキ!!


持っていた万年筆が折れた!

その怒りの籠った手によって・・・


「また柊が最優秀研究で返り咲きやがった!!!」


ふー、ふー、ふー・・・。


肩で息をしている宮本所長。


宮本所長が言っているのは渡されている書類に書いてあった。


それはアメリカの企業と大学、そして我が社で

世界一の性能を持つ有機ELの開発に成功したという記載だ。


今までソファーに座り、私は対面のソファーに腰をかけている状態だったが、

宮本所長は立ち上がって、自分の席にドカっと座る。


そのまま、机の上に置いてあった一枚の書類を手に取って、

私に向けてきた。


私も立ち上がり、その書類を受け取り、


「拝見しても?」


「かまわん。」


「それでは失礼します。」


その書類はメールを印刷したもので、

送り主は・・・


社長!?


目を見開いてみてしまうが、それでも平穏を装いながら、

内容へと目を移していく。


そこに記載されている内容の要約は、

有機ELの性能を今度は我が社単独で世界一にして、

技術力をアピールするということであった。


そのために新規のプロジェクトを各事業部の垣根を越えて、

形成していく旨が記載されていた。


「・・・はっきり言って、研究ということであれば、

 当然我が中央研究所がするべきことだ。


 なのに・・・


 なのにだ!!


 各事業部で行えと言ってきているのだ!!!」


なるほど・・・

これでは中央研究所の面目がつぶれてしまっているということか・・・


「僭越ながら、私もこのプロジェクトは中央研究所で行うべきだと思っております。」


私の発言に微笑みながらうなづく宮本所長。


「そうだろう中里。私もそう思う。

 だが、どうやら社長はそうは思っていないようだ。

 私が探りを入れたところ、どこからかの差し金で社長には昨年の成果が報告されており、

 更には照明事業部がこの有機ELの材料で20億の売り上げを達せしていることが

 お耳に入っているらしい。」


首を横に振り、不快ため息をつく宮本所長。


「中里は知らないだろうが、我が社の考え方としては、

 新たなプロジェクトがスタートするには3年後に20億を稼げることが前提になる。

 稼げないような事業はまずしない。

 そう言う意味で、悔しいが照明事業部は成しえたんだ。

 そしてここで、私は嫌味を言われたよ。その探りを入れた相手からね。」


「・・・嫌味ですか?」


「ああ・・・。


 『本来であれば材料開発は中央研究所が行い、成果を出すのでは?』


 とね。」


あの女狐が!!と叫ぶ宮本所長。


所長室には宮本所長の罵声が響く。


やっと落ち着いてきたのか、それとも疲れたのか罵声がやっと止むと、


「まあ、だが私達も認めないといけないこともある。

 当然中央研究所は研究を目的としているため、金を稼ぐことまでは考えていない。

 しかし、やはり会社というのはお金を稼ぐ必要があるということを。

 まあ、ここら辺は研究者としては物欲よりも名誉を求めてしまう悪い癖なのだがな。」


そう言って笑う宮本所長。


「その点、今回の件はまさに渡り船と思っている。

 ここで共同で研究発表をして世界一を取れれば、

 事業部からお金を稼ぐことが出来るからな。」


「と、言いますと?」


分かってはいるがここでバカなふりをして聞かないと

この宮本所長は怒り出してしまう。


「我々の技術を売りつけ事ができるからな。

 ちまたで聞くとロイヤリティーは売り上げの数%になると聞いている。

 あいつら事業部が必死で働いている間に、我々は何もしなくてもお金を稼げる。

 もしも稼げない場合も事業部の連中が働いていないからだと言えるからな。」


その笑みは黒い影を含んでいる笑みだった。


「まあ、そのためにも我々中央研究所が今回の主導権を握る必要がある。

 そのために・・・君だ。」


「私・・・ですか?」


「君が1週間ほど柊がこちらに滞在する間の運転手兼秘書を務めるらしいな。」


「・・・はい・・・。」


「そう警戒しなくていいだろう。たまたま、その話が聞こえてきたんだ。」


たまたまと言っているが、この男なら間違いなくその情報を自らの手で集めたのだろう。

その狙いは当然・・・


「柊の行動を逐一報告してほしいのと・・・


 彼の何かネタがあれば提供してほしいのだよ。」


・・・やっぱりか・・・


「なぁ~に、分かるネタがあればでいいのだよ。

 見つからなかったら仕方がない。

 ただ、行動の報告だけは必ずして欲しい。」


「・・・。」


返答をせずにいると、


「今、普段運転手として君が付いている取締役は・・・


 中央研究所出身だからね。」


その言葉を聞いて、


「かしこまりました。」


「うんうん、君のように誠実な人間は心苦しいかもしれないね。

 ただ、私としては我が社がより発展することを願っての一手なのだよ。

 だから・・・ここは申し訳ないけど宜しく頼むよ。」


そいって、宮本所長は私の肩に手をのせてきた。

その顔に黒い影を纏わせて・・・



気づいた点は追加・修正していきます。

拙い文章で申し訳ないです。

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