閑話:ワルイユメ
書きたいから書いた。反省する気は無い。
( ^∀^)
暗い闇の中、誰かの声がする。
奥行きも無い、光も無い世界。
高く、優しい声。低く、落ち着く声。
そして静かに私を呼ぶ声。
「末晴」
「お兄ちゃん?」
後ろから呼ばれて振り向くと、お兄ちゃんがいた。真っ黒な格好で立ってた。
そして、血塗れだった。お兄ちゃんの後ろには文字通りの地獄絵図があった。
鉄の雨が世界を炎は全てを焼きつくし、死体は堆く積み上がって山となり、地面は血の川が這いずり、悲鳴と怨嗟と絶望の合唱が木霊する空を鋼鉄の鳥達が飛ぶ。
死体の山には人だけじゃない。見たこともない動物と化物の死体も積み重なってる。
体の何処かが無い死体。穴だらけの死体。切り刻まれた死体。焼け焦げた死体。身体中に破片の刺さった死体。爛れた死体。ただ眠っているかのような綺麗な死体。
人も獣人も亜人も妖精も化物も関係無く命が消されていく。
何でそんなとこいるの?そこにいたらダメだよ。
「お兄ちゃん!」
手を伸ばして抱きしめようと、近付いた時だった。
乾いた音が響いた。
それが銃声なのは直ぐわかった。だってお兄ちゃんが撃ったんだから。
私に拳銃を向けてる。何で?どうして?
弾は当たらなかった。違う。わざと外したんだ。
お兄ちゃんは拳銃を下ろして、とっても苦しそうに声を絞り出す。
「来るな。こっちはお前が来ていい所じゃない」
嫌だよ。ずっと一緒にいようよ。
「ゴメンな」
そう言って背を向けて何処かに歩き出す。
「待って!」
考えるよりも早く、走って追いかけていた。
「待って!!」
走ってるのに、追い付けない。
「待ッテヨ!オニイヂャン!!」
◆◇◆◇◆◇
夢。それはとても嫌な夢。普通の人ならば最悪の寝起きになるだろう。
だが少女は、違った。
いつもの最低最悪な夢ではない。兄に会えるこのできた最高の悪夢だ。
うなじがピリピリと疼き、鼓動が速くなる。それは恐怖でも寂しさでもなく、歓喜にあった。
「ウフフ。待ッテテネ、オニイチャン」
その時の少女は、狂気しかない酷く歪んだ笑顔だった。
だが少しだけ、瞳に光が戻る。
◇◆◇◆◇◆
暗い闇の中、誰かが呼ぶ声がする。
奥行きも無い、光も無い世界。
高く、優しい声。低く、落ち着く声。
これは母さんの声?こっちは父さんの声か?
それと妹の声。
「お兄ちゃん」
「すーちゃん?」
妹の声に振り返ると、やはりというか妹の末晴がいた。
ただ末晴を見た瞬間、息が詰まり、背筋が凍った。
瞳に光は無く濁りきった狂気が満ちて、口は三日月のように歪んだ、恐怖しか感じない笑顔だった。
手には血の滴る刀。
何を斬った。誰を斬った。
答えは末晴の後ろにあった。いくつもの死体が転がっているのだ。
死体は人だけじゃない。見たこともない動物と化物の死体も転がっている。殆どが一撃で葬られ、身体的特徴から女性とおぼしき死体は顔が重点的に潰され、原型を留めていない。
誰だお前は。
「モウ離サナイカラ」
来るな。考えるよりも早く、走って逃げていた。
「モウ、ズットズット、ズーーーット一緒ダヨ。オニイチャン」
そう言いながらゆっくりと追いかけてくる。
走ってるのに、追い付かれる。
「 逃 ゲ ル ナ 」
◇◆◇◆◇◆
悪夢に叩き起こされて、目が覚めたら見知らぬ場所にいた件について。
まだ背筋が凍ってる感じがするし、すーちゃんってあんな娘じゃなかったよな。お兄ちゃん心配です。
今はそれより……。
「ここ、何処だよ」
周りを見ると木、木、木、大の字のおっさん、寝てるちび、イビキかいてるチャーリー、木、木。
どういう状況だよ。
最後の記憶は…こいつらとCASで遊んでたら隠し通路見つけて落っこちて、そっからは気を失ってたのか。
とりあえず、こいつら起こすか。