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火花  作者: ミズノ
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 それから何年も経った。京介は高校を卒業して、町の外の大学に進学した。それから、どこかの有名企業のご令嬢と挙式して今は都内在住だ。兄貴はどこかの会社の社長になったらしい。僕とヤスは地元に残った。ヤスは高校卒業後は就職して、工場で自動車の部品を作り続けている。

 一方の僕は、大学進学を機に外へ出たものの、都会の空気にあわずまたこの町に戻って来てしまった。しかし会社は都内、家は地元と、ヤスと京介のハイブリダーゼーションといった感じだ。

 そして僕にも子供ができた。男の子だ。息子は、今年で小学生の高学年になる。そろそろ、大人の決めたルールに疑問を覚え始めるころ合いだろう。

 ある日息子は、僕に向かってきっと、こう問いかけるのだ。

「どうして、火花に近づいてはいけないの」

 と。

 そして僕はこう答えるのだ。

「やけどをすると危ないからだよ。だから決して、夏休みの間は火花のそばに近づいてはいけないよ」

 今までは僕の言うことはすべて正しいと信じて疑わなかった無邪気な目に、今は疑いと不信の色が宿っている。僕は無意識のうちに、右腕に残った火傷あとを反対の手で触るだろう。僕が一年長袖を着ている理由。それに、息子が気付くのはいつになるだろうか。

 今年の見張りは、気合いを入れてかかろうと、僕はそのとき決心するのだ。



 そういえば高校生の時、京介からこんなことを聞いた。

「空に打ち上げる『花火』の英訳って、なんでfire 『flower』じゃなくてfire『works』っていうんだろうな」

 京介は当たり前と言った様子で答える。

「fire 『flower』だと、『火花』の英訳と一緒になっちゃうだろ。だから『works』なんだよ」

 僕の長年の疑問は、ここになってようやく解決した。

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