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煩悩だらけの異世界転移 ~裸が見たいだけなのに聖人扱いされています~  作者: kammy


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第六十二話 裸が見たいだけだから

王宮。


俺は今、王様から感謝を述べられる会に参加していた。


さすがに、あれだけのことがあれば隠しておくわけにもいかなかったらしい。


「此度の戦い、皆の働きは見事であった。心から感謝する」


王様の言葉に、参加者たちが頭を下げる。


報告によると、四騎士団は全員無事に帰還したそうだ。


死傷者ゼロ。


あれだけの魔獣が押し寄せ、さらには暗黒龍まで現れたというのに、死人は一人も出なかった。


……本当によかった。


俺が治した兵士たちが、みんな無事に帰ってきた。


それだけは、素直に嬉しかった。


「ケンジよ」


「はい」


王様に呼ばれ、俺は顔を上げた。


「あの戦場で、遠く離れた大勢の兵士を一度に治した魔法。あれは何だったのだ?」


「広範囲治癒魔法です」


俺はできるだけ平然と答えた。


「なるほど。では、今後も何かあれば、その魔法を使えるのか?」


――来た。


俺は一瞬、言葉に詰まった。


ほんの数秒。


だが、その間に俺の頭の中では、さまざまな可能性が駆け巡っていた。


もし、いつでも使えると言ったら?


今後、何かあるたびに呼び出されるのではないか。


戦場に連れていかれ、怪我人を片っ端から治すことになるのではないか。


そして、何より……。


聖者だの何だのと祭り上げられ、自由な生活を奪われるかもしれない。


女性の裸を見るどころではない。


それだけは、絶対に避けなければならない。


「確かに、私は広範囲治癒魔法を使いました。しかし、魔力の消耗があまりにも激しく、今も魔力の回復がうまくいっていません」


俺は少し表情を曇らせた。


「この状態では、もう一度あの魔法を使うことはできないと思います。おそらく、二度と使えないでしょう」


「そうか……」


王様は難しい顔で頷いた。


「現在、私にできるのは、これまでと同じです。対象を直接見て、触れて治す。それが限界です」


俺は内心、胸をなで下ろした。


よし。


これで、何かあるたびに呼び出されることもないだろう。


聖者だの何だのと祭り上げられることもないはずだ。


……たぶん。


「ケンジよ。此度の功績、誠に大儀であった。国を救ったお前には、相応の褒美を与えねばならぬ」


王様が真剣な表情で告げた。


褒美?


いやいや、そんなものはいりませんよ。


「ありがたいお言葉ですが、私は当然のことをしたまでです。褒美など、とんでもございません」


「謙遜するな。爵位を授け、領地を任せることも考えている」


……はい?


爵位?


領地?


ちょっと待ってくれ。


そんなものをもらったら、領地の管理だの、貴族との付き合いだの、面倒なことが山ほど増えるじゃないか。


俺は平穏に暮らしたいんだ。


「いえ、本当に結構です! 爵位も領地も必要ありません!」


「何を言う。これほどの功績だぞ。何も与えぬわけにはいかぬ」


王様は譲る気がないらしい。


まずい。


どうする?


このままでは、望んでもいない地位と仕事を押しつけられてしまう。


「では、こうしよう。爵位や領地が不要だというのなら、ほかに何か望みを言え。できる限りのことは叶えよう」


……え?


何か望み?


そんなことを言われても、困るんですけど。


俺は必死に考えた。


爵位もいらない。


領地もいらない。


仕事も増やしたくない。


できれば、これ以上目立ちたくもない。


……そうだ!


「陛下。一つ、お願いがございます」


「おお、何でも申してみよ」


王様は満足そうに頷いた。


「魔力の回復がうまくいっていないこともあり、しばらく療養したいと考えております」


「療養か。なるほど」


「はい。そこで、温泉のある観光地で、一年間ほど療養させていただけないでしょうか」


「……一年間?」


王様が聞き返した。


「はい。一年間です」


俺は真剣な顔で頷いた。


温泉。


観光。


一年間。


なんて素晴らしい響きだろう。


爵位も領地もいらない。


面倒な仕事もしたくない。


温泉に入って、観光して、美味しいものを食べて、のんびり過ごす。


これこそ、俺が求めていた生活だ!


「……わかった」


王様は、なぜか複雑そうな顔で頷いた。


「国を救った者の願いだ。その療養、認めよう」


「ありがとうございます!」


よし!


これで勝った!


俺は心の中でガッツポーズをした。


こうして、王様との謁見は終わった。


爵位も領地も断り、温泉のある観光地で一年間の療養を認めてもらった。


我ながら、なかなかいい条件を勝ち取ったと思う。


あとは、誰と行くかだ。


もちろん、決まっている。


俺はスカーレットさんのそばへ向かった。


「あの、スカーレットさん」


「何ですか、ケンジ君?」


「実は、温泉のある観光地で一年間、療養することになったんです。よかったら、一緒に行きませんか?」


スカーレットさんは、きょとんとした顔で俺を見た。


そして、ふっと笑った。


「もう、ケンジ君ったら。冗談はやめてください」


「いや、本当なんですけど……」


「はいはい。療養、楽しんできてくださいね」


そう言って、スカーレットさんは行ってしまった。


……信じてもらえなかった。


一年間だぞ?


一年間、一緒に旅行できるチャンスだったんだぞ?


俺はその場に立ち尽くした。


温泉旅行の計画は順調。


ただし、スカーレットさんの同行は、初手で失敗した。


だが、まだ落ち込むには早い。


温泉のある観光地で、一年間。


一年だぞ、一年!


温泉に、美味しい料理に、観光。


そして……温泉。


温泉といえば、当然、裸だ。


普段の生活では、なかなかお目にかかれない女性の裸。


それが温泉地なら?


もしかしたら、夢のようなチャンスがあるかもしれない。


いや、あるはずだ!


もちろん、真面目に療養するつもりだ。


ただし、目の保養も大切だと思う。


うん。


一年間、実に有意義な時間になりそうだ。


こうして、俺の一年間の療養旅行が決まった。


目的地は、温泉のある観光地。


温泉、美味しい料理、観光。


そして、もしかしたら……。


いや、期待しすぎるのはよくない。


だが、一年間もあるんだ。


何かが起こる可能性は十分にある!


俺は期待に胸を膨らませ、温泉地へ向けて出発した。


さあ、待っていろ、温泉!


俺の第二の人生は、これからだ!


――第一部・完

ここまでお付き合いしていただいた方、ありがとうございました。ケンジの話は一旦終わりにします。また、気が向いたら続きを書くかも、です。

次のお話もよろしければ覗いてみてください。

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