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第三十話 巨大獣ボルゴガ 火山の爆発を食い止めろ 5

 俺とマーヤちゃんはミザーリンを乗せた機動要塞ドグローンで奇岩島基地に帰還した。


 奇岩島基地では俺達のいない間、ダンダル軍務卿による恐怖のリサイタルが開催されていたらしく、捕虜や兵士達が死屍累々になっていた。


 まあ死者はいなかったが惨憺たる有様で、アクラデス執政官が仕方なく弟の尻拭いとして気付け薬を作っていた。


 ――まさかそれがあんな珍事を引き起こす事になるなんて!!――


 アクラデスは研究ラボで薬を作っているようだ、原作ではあまりにも仲の悪いバルガル将軍、ミザーリン諜報官、ブキミーダ参謀長を扱いやすくする為に薬を使おうとして性格反転薬が作られたのだが、今のこの状況……弟のせいで使い物にならなくなっている兵士や捕虜をどうにか回復させる薬を作る羽目になったようだ。


「おお、ブキミーダ、良い所に来たのだ。我は今あのバカのせいで使い物にならなくなっている兵士達を元に戻す薬を作っておるのだ。お前も手伝うのだ」

「了解です、アクラデス様」


 ――これが全ての悲劇、いや……喜劇の始まりだった。――


 俺はアクラデスの言う通りに薬の材料を揃え、調合の手伝いをした。

 マーヤちゃんはメモを元に薬の材料を薬剤貯蔵庫から持って来てもらっている。


 俺の指示した薬は――アポロンアクション1977――だ。


 薬を持ってきたマーヤちゃん、どこかその辺に置いておいたらしい。


「マーヤちゃん、持ってきた薬どこ?」

「え? あ、薬が無い! 何でなのー?」


 どうやら後で分かった事だが、その薬を何故か胃薬か何かと勘違いしたらしくダンダルが持って行ってしまったようだ。

 マーヤちゃんは急いで薬をもう一度取りに戻った。


「えーっと、確かアポロ……アポロ、マーブル……あれ?」


 メモをどこかに置き忘れてしまったマーヤちゃん、何か別の薬を持って来てしまったみたいだが


「あ、これだこれ、アポロトキシン5963」


 この時、焦っていた俺もマーヤちゃんも、持ってきた薬が別物だとは気が付いていなかった。


「ご苦労なのだ、後は我が薬を完成させるのだ!」


 アクラデスはそう言うと俺達をラボから出し、薬を完成させたようだ。


「ふう、疲れたのだ……そうだ、この薬が気付け薬の栄養剤なら我が飲んでも効果が有るはずなのだ!」


 そして……アクラデスが薬を飲んだ。


 俺達は部屋に戻り、食事を終わらせてからアクラデスの居たラボに向かった。

 すると、中から凄い甲高い大きな声が聞こえてきた。


「なんなのだー!! これわーー!!」


 耳が痛くなるほどのデカい声、アクラデスの声だろうか?

 しかし何かがあったらしい、コレは中に入って確認しなくては!


 俺とマーヤちゃんがラボの中に入ると、そこにはぶかぶかの服を着た可愛らしい女の子がそこに居た。


「お、お嬢ちゃん……誰?」

「われわ、あくらです……なのだ」

「!?!?」


 訳が分からない。

 俺の目の前に居る少女は自分の事をアクラデスだと言っている。

 オイオイオイ、どういう事だよ??


「か、可愛い。ご主人様ー、ワタシ、この子連れて行っても良いですか?」

「連れて行ってもって、ちょっと待つんだ、マーヤちゃん!」


 一体どうなっているんだ?

 そんな時にこの声を聞いたのか無線を聞いたのか、ダンダルがいきなり走ってラボに駆けつけてきた。


「兄者ッ! 一体どうしたッ!?」

「ふぇええ。こわいおじちゃんなのだ」

「な、何だと!? って、誰じゃこれ!???」

「われわ、あくらですなのだ……」


 どうやら本当にこの小さい可愛らしい女の子がアクラデスなのかもしれない。

 あの薬の実験結果が凄まじい結果をもたらしてしまったようだ。


 ――ひょっとしてこれって俺とマーヤちゃんのせい?――


 騒ぎを聞きつけたバルガル将軍とミザーリンもラボに駆けつけた。


 そして集まった全員があまりの超展開に唖然としている。


 どうやら本当にアクラデスが薬の効果で可愛らしい少女になってしまったようだ……。

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