クー
クレア(モンスターハンター)は私を自分の家まで案内した。
木製の家だ。丸太を組み合わせて作ってある。別にそれがダメというわけではないが、人とは器用な生き物だなと思った。
手先が器用なのもそうだが、発想が器用だ。常時、二足歩行をしているからだろうか?
それなら私にもできるはずだ。今の私はキメラだが、元は人間だったのだから。
「ねえ、君のことなんて呼べばいい?」
クレアは短剣を机の上に置きながら私にそう言った。別に呼び方なんてどうでもいい。
名前なんてどうだっていい。
キメラになった瞬間、私は人間だった頃の名前を忘れてしまったのだから。
「なぜそんなことを訊くんだ?」
「え? いや、だっていつまでも『君』だと君が迷子になった時、外見でしか君を説明できないから」
「私を外見で説明できるのなら、それでいいだろう。しかし、まあ特定の呼び名があった方がいいと思うのなら、お前が私に名前を付けろ」
この子、今までどうやって生きてきたんだろう。
変身魔法が使えるみたいだから、お金がなくても食べてこられたとは思うけど。
「え? いいの? じゃあ、クーちゃんにしよう」
「クー? 変な名前だな」
「えー? そうかなー? かわいいと思うんだけどなー」
「お前がそれでいいのなら、それでいい。今日から私は『クー』。よし、覚えた。しばらく世話になる。よろしく頼む」
「うん、よろしく」
その日から私は『クー』になった。
クレアが私の正体に気づくまで、あと……。




