第170話 底辺テイマーは北海に着く
「マルビィ、お前が船に乗ると言うのか?」
「ええ、お父様、僕が彼らをやつらのところに届ける」
「そうか、お前なら大丈夫だろう。しかし良いのか?」
会話の内容からすると、マルビィは代表の息子なのだろう。そして、操舵能力はかなりの物なのだろう。
そうであれば、俺たちは敵の排除に注力出来るだろう。
檻から出された俺はマルビィに手を差し伸べた。
「よろしく頼む、マルビィ」
「マルビィさんだろう。お前たちは僕たちのために働くのだから。早速行くぞ」
マルビィは他のイエティたちよりは小柄とはいえ、俺よりも頭一つほど大きい。
俺を見下ろして、マルビィはそう言うと、俺たちに背を向けた。ついて来いと言うことだろう。
まだ眠っているシェリルをマガミの背に乗せ、俺たちはマルビィの後を付いて行った。
「ところで、これkら排除するよそ者って言うのはどんな奴らなんだ?」
「そんなことも知らずに引き受けたのか? 命知らずだな」
マルビィは振り返ることなく、答えた。
「仕方がないだろう。あの場で受けると言う選択肢以外ないだろう。こっちは檻の中だったんだから」
「……それもそうか。奴らは人間だ。何十人も乗れるような大きな船でやってくる。それが三隻も」
「大きくても、所詮は漁船なんだろう」
「本当に何も考えずに受けたんだな」
真っ白な毛に隠れた表情は、あきれ顔になっていることがはっきりわかる。
「ただの漁船なら、いくら大きくてもただの漁船なら、僕たちでも対処できる。あれは、漁船と言うよりも海賊船だ」
「海賊船……」
海賊船は通常、船が多い航路に現れるものだ。こんな人もいないようなところになぜ現れているのだろうか? それに海賊ならば、イエティたちに漁をしたものを奪いそうなものだが、何か理由があるのだろうか? まあ、理由があろうがなかろうが、俺たちのすることは一つだけなのだが。
そんなことを考えていると、マルビィは倉庫のまえで止まった。
そこには、十人は乗れそうな船があった。どうやら帆船で帆と舵を一人で操作できるようになっているようだ。これならな、俺たちを乗せてマルビィ一人に船を任せても大丈夫だろう。
「大きいな。しかし、ここから海まではどうするんだ?」
倉庫は陸の上にあり、海までは距離がある。海の上に停泊していると流氷などに衝突されるのを防ぐために、ここに置いているのだろう。
「引っ張るんだよ。そこの犬っころが」
そう言ってマルビィはマガミを指さした。
「なんで、僕が!」
「お前がやらかしたことに対する代償なんだから、お前が引くのは理にかなっている。頑張れよ」
「えー!」
まあ、これはマガミの罰なのだから、仕方がない。それに船には移動用のそりの上に乗せられている。思ったほどは大変ではないだろう。
こうして、俺たちを乗せた船を、マガミが引っ張り、流氷の見える海へとたどり着いた。
文学フリマ東京38に出店して時間が足りませんでしたが、何とか更新間に合った!
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