第169話 底辺テイマーはイエティの願いを聞く
「そこの白狼が、ことあるごとに我々の村を襲い、食料を奪って行ったのだ」
想像をしていた通りの理由だった。それならば、これまで奪った食料の補填をし、罪を償わせるだけだ。
「俺の仲間になる前のこととはいえ、それは申し訳ないことをした。奪った命は償えないが、奪った食料については俺たちも補填させてもらう。それで勘弁してもらえないだろうか?」
俺はシェリルを起こさないように座ったまま頭を下げた。
イエティの法は分からない。命は命で償えと言われれば、抵抗するしかないが、俺たちができることで罪を償えるのならば、できることをするしかない。
これによって、マガミが自分が何をしたのか、これから俺たちと一緒に行動するのに何をしなければいけないか理解してくれるだろう。
「それで、どのくらい補償すればいい? 俺たちができるのは獲物を狩って来るぐらいだが」
「獲物は必要ない。というか、白狼が数年にわたって奪った食料を一気に狩られると、このあたりの獲物が絶滅してしまう」
「しかし、俺たちもそんなに長い間、ここにいるつもりはないんだが……」
どれだけ、この村を襲ったんだ? この馬鹿狼は。
俺がマガミを睨むと、そっぽを向いた。
「それはこちらとしても、この白狼を長期間ここに置いておくのは、他からも文句が出る。そこで、ひとつお願いがある」
「お願い?」
「ああ、われわれは、基本的に魚やアザラシ、クジラなどを撮って暮らしている。最近、その漁場を荒らしている者たちが現れたのだ。その者たちをどうにかしてくれないか? やつら、獲物を根こそぎ狩る勢いで困っている」
おそらく彼らは昔ながらの漁の方法で、自分たちが食べる分だけ捕り、海と共存してきたのだろう。そこによそ者が豊富な漁場を荒らしているのだろう。そう言えば、タコのハッちゃんも稚魚を守り、海の生命を守っていたのを、人間が邪魔に思い排除しようとしていた。今回も人が一時的な自分の欲のために、海の獲物を捕りつくそうとしているのかもしれない。
「わかった。そいつらは俺たちが何とかしよう」
「本当か!」
「ああ、ただし、俺たちは船がない。そちらの船を貸してくれ」
イエティたちはざわめき始めた。
彼らにとって、船は大事な狩りの道具だ。よそ者同士がつぶし合うのは良いが、大事な船を壊されてはたまったものじゃないのだろう。
俺はじっとイエティたちの出方を待った。
すると、代表らしいイエティが他のイエティたちに鎮まるように合図をし、静かに言った。
「船は貸そう。しかし、お前たちは船を操ったことがるのか?」
「無いが、何とかなるだろう」
「ダメだ。そんな者に大事な船は貸せない」
どうだろうな。ここにハットンがいてくれたら、何の問題もないのだが、現状でどうにかしなければいけない。いくら、シェリルでも海の上にいる相手では厳しいだろう。
さてどうしたものか。
俺が困っていると、代表らしいイエティの後ろから、ひとまわり小さな子供のイエティが声を上げた。
「だったら、僕が船に乗るよ」
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