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難易度ナイトメア! クズ勇者に嵌められた俺はついに本気を出すときがきた 悪役令嬢と塔を攻略しよう!  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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攻城戦 広場の激戦

 チャラ男を先頭にゆっくりと歩いてくるNPCとモンスター達。

 バリケートまで大体1キロぐらいの距離だ。


 状況は俺達が考えた中で最悪の部類だ。

 想像よりも遥かに格上のモンスター(NPC)が攻めてきた。


 もちろん俺達は最悪のパターンの作戦も決めている。


 神楽坂は俺を見て頷く。


「ハルキ……すまん、ボスモンスターを頼む……」


「任せろ。お前らは街を守れ」


 俺は勇者に近づいて胸を軽く叩いた。


「街はお前に任せる」


 勇者は邪気の無い笑顔でサムズアップをした。


「おう! 任された!」


 アリスも勇者と向かい合う。


『この戦いが終わったらあなたとゆっくり話がしたいわ。死なないでね』


「ああ、俺もちゃんと話したかった。この前街で君と喋って、君が本当にアリスかわからなくなってきたんだ……俺の知っているアリスと少し違う……」


『今は攻城戦に集中ですわ。お互い死なない様に頑張りましょう』


「おう!」





「さて、喋っている時間も無いぞ!」


 神楽坂は激を飛ばす。


「ハルキの道を作るんだ!!」


 俺たちは速やかに動き出した。








 チャラ男がゆっくりと歩きながら背中からなにか取り出した。

 マイクである。

 俺達に向かって大音量で喋りだした。


「あ〜、マイテスッ、マイテスッ……は〜い!! みんなお待たせ! やっと始まる攻城戦!」


 モンスターがバリケードに到着するまで500メートル。一瞬の距離だ。

 俺とアリスが門へいける様に生徒達が爆弾を大量に投げつけて援護をする予定だ。


 NPCはイレギュラーだが悩んでいる暇は無い。


「爆弾隊、投げろー!!」


 強化された筋力で爆弾を投げつける。それは手榴弾の様にピンを取って10秒後に爆発する。爆発するまでの時間がかなりある。

 この距離だとちょうどいいところで爆発するだろう。


 チャラ男は飛んでくる爆弾を気にもせず、マイクで喋り続ける


「みんなびっくり? 俺も驚きだよ!? 予定よりも全然早い、まだまだ一緒にいられたと思ってたけど、上司には逆らえないぜ!」



「俺達は君の敵になりました!!!」



 爆弾が着弾して、爆発と爆風が起こる。

 俺は一気に門まで走り始めようとしたが、アリスに引っ張られて止められた。


「きゅっ!!!」


「どうしたアリス!」


 チャラ男が手を軽く振ると、爆弾の煙幕がすぐさま晴れた。

 NPCたちは無傷であった。多少通常モンスターを倒したのみでまだ道が開けていない。


 チャラ男は立ち止まりマイクを回転させている。


「歓迎の花火ありがとね! じゃあ俺達もオープニングの花火をプレゼントするぜ!」


「さあ行くぜ! 俺達にチカラを示せ!!」


 チャラ男の横にいた美熟女エルフが前に躍り出た。エルフに似つかわしくない豊満で熟れた身体から膨大な魔力が発生する。


 突き出された手のひらから大きな火の玉が作られる。

 それはどんどん大きくなり一軒家と変わらない大きさになった。




「10層特別試練攻城戦!! 始まるぜ!!」





 チャラ男の掛け声で火の玉は手の平から離れる。

 轟音をあげて俺達に襲いかかって来た。




「うそ! あんなの勝てないよ!」


「やっぱり駄目なのか?」


「NPCは俺達の師匠だよ! 無理だよ!」


 泣き言を言う生徒が増えてきた。

 士気が下がっている……



 勇者が前に躍り出ようとする。NPCをなぎ倒して俺を塔へ行かせようと考えているようだ。

 お前でもあの人数のNPCは無理だぞ。


 神楽坂は切り札を使うか悩んでいる。


 くそ!



 花京院を筆頭にカトリーヌの機械乙女たちが障壁を張った。

 唸りをあげて迫りくる火の玉。


 神楽坂が後ろでなにか喚く。


「あっ、こら、ばか! 後ろに下がれお前はどこのどいつだ!」


 そいつは俺達をすり抜け、障壁を通り越して前にでた。


 その男は仁王立ちで俺達の前に立つ。





「来たれ我が軍勢!!!!!!」




 男の元から巨大な質量の光線が放たれる。

 まるでレーザーの様なそれは火の玉を消し飛ばし、NPC達のところまで襲いかかって来た。


 チャラ男の悲鳴が聞こえる。


「ちょっ、マジで!」


 着弾したそのレーザーはNPC達を混乱させるのには十分だった。

 NPCの隊列が瓦解する。


 神楽坂が叫んだ。


「ハルキ!!!」


 ――ああ、今がチャンスだ。

 

 アリスと俺は駆け出した。

 後ろでその男が叫んでいる。


「我が友、藤崎氏! 我の軍勢は時間制限がある! 我が全力で道を切り開く! 行くのだーーーー!」


 その男の周りに次々現れたのは、筋肉隆々な男や女たちや怪物と車と機械人形とハリネズミ達だ……

 カオスな謎の召喚生物達はNPCに襲いかかっていった。






 走り出した俺達の目の前にNPC集団が迫る。

 NPC達は男が召喚した軍勢に手間取っている。


 アリスは俺の頭に乗って魔術を詠唱すした!


「きゅっきゅっきゅ、きゅーーー!!」


 立ちはだかるNPCを風の暴風が襲いかかる。

 見知った顔のNPCが風の刃で切り裂かれていった。


「道が見えたぞ! NPCは無視だ! アリス全速力で行くぞ!」


 俺とアリスは混乱したNPCの隙間をかいくぐり、門まで一気に駆け抜けた。


 ――あいつゲーセンの店員か……また今度勝負してやるよ!



 塔に入ってからが俺達の本番だ。


 そっちは任せたぞ。






 ***********




 私はハルキの背中を見送った。

 

 ――頼む!


 その男の軍勢は恐ろしく強かった。

 迫り来る敵に拳で、剣で、回転しながら体当たりで、車で轢き殺したり、銃で打ちまくりながらNPCとモンスターを倒している。


 あいつは私と同じクラスの暗めの男子だったな。

 その男子の額に青筋が立っている。耳から血を流し始めた。

 スキルを維持するだけで死にそうになっているのか……


「くっ、だ、駄目だ……もう持たぬ……神楽坂氏……あとは頼みましたぞ……」


 そいつは血を吐いて息絶えた。

 その顔は戦士の死に顔だった。


「お前の死を無駄にしない……私たちも行くぞ!!」


 その男子の死を厭わぬ姿勢に生徒たちの士気は爆発した。


「「おう!!!」」


 少し予定と違うが、こっからが勝負どころだ。

 ハルキがボスモンスターを仕留めるまで時間を稼ぐ。


 まずは遠距離攻撃をしながら城まで下がるぞ。


「――っうてえええええええ!!!」


 城の上層部からの弓と銃での狙撃と、広場からモンスター達に向けた魔術攻撃。

 NPCに効かなかった爆弾も投げつける。通常のモンスターは楽に殺せるからだ。


 チャラ男は笑いながら攻撃を避けている。


「ははは!!!! ヤバイね!!! あれは初めて見る能力だよ!!」


 召喚した謎の生物たちは、男子が息絶えたことにより消えた。

 NPCがこっちに走り出してきた。



 私は即座に勇者と花京院に指示をだす。


「生徒の攻撃だけでは決定的なダメージにならない! お前たちがNPCたちを撹乱してろ! 殺せるなら殺して戻って来るんだ!」


 ひとまずその繰り返しで広場の戦場を膠着状態にさせよう。あとはハルキの早さ次第だ。








 勇者パーティーと機械乙女パーティーが前にでる。


「うぉぉぉぉ! 初っ端から本気でいくぜ! バーストモーード!」


 勇者が赤く燃え上がる。


「我の守護天使、みんなを、守って」


 花京院の左手から天使が召喚される。

 

 右手はいつもの義手と違う。可憐で華奢なからだに似合わない無骨で巨大な獣の様な機械の義手をはめている。機械獣の義手から爪が5本でた。


「俺達がチャラ男さんを止める!! スミレ達は他のNPCを頼む!!」


「承知……」


 二人のパーティーが戦場に舞い降りた。





 *************




 ――私が、とめる


 ――ここの世界は居心地が良い。私の暗闇の世界とは大違い……意地悪な上司もいない。魔女も出ない。


 ――もし叶うなら……この世界にずっと……




 私の戦闘用義手『ベヒーモスの爪』がたやすくNPCの身体を引き裂く。

 四方から襲いかかるモンスターの攻撃を天使が障壁で止める。


 光を放ち低位モンスターを撃退する。


 私は戦場を高速で駆け周った。



 「我は機械乙女……戦闘乙女……いつか普通の女の子になりたい……そして……恋をしたい」



 後ろを見ると、打ち漏らしたNPCや通常モンスターがバリケードに襲いかかっている。

 奮闘虚しく幾多の生徒たちが光となって消える。


 今まで共に過ごしたNPCが生徒たちを殺す。


「道具屋のおばちゃ……」

 

 魔道具で毒殺されていた。

 

「酒場のおっさん!! 俺が振られた時になぐさめてくれたのは嘘だったのかよ!」

 

 巨大なハンマーでバリケードごと圧殺される。



 広場はまさに血まみれの戦場となった。


 ――数が多い。これ以上殺させない……出し惜しみは無し……


 私達パーティー全員は懐から眼帯を取り出し左目に装着した。

 パーティメンバーの髪が黒色に変色する。


 私のアシメショートの金髪の髪も黒く変化する。機械獣の爪も黒くなる。

 白い天使も黒く変色した。


 ――黒化完了……


 黒い天使がケダモノのような奇声を上げた。


「ウォ……ウォ……シィシィッ!!!!!」


 私は心のチカラを増幅した。


 天使の口から黒い禍々しい剣がでる。





「我らは普通の女の子になりたいだけの人生だった。……ここは通さない!」





 *************




 俺はちらりと花京院の様子を見る。


 黒い天使から取り出した? 黒い剣を振り回して奇声を上げながらNPCたちを虐殺している。

 恐ろしい強さだ……あれはSSSランク超えてるんじゃねーか?


 黒い天使もかなりヤバい。

 あ、モンスター食いやがった!? 

 


 



 

「はいは〜い! よそ見は良くないぜ!」


 チャラ男の鋭い突きを間一髪で躱す。


 俺はチャラ男の足止めをしていた。

 がだ、こいつ強い。

 いままで戦った中で、最強の部類に入る。

 王都の剣聖でもここまで強くなかっただろ!?


 接敵してまだ数分。俺の身体は傷だらけだ。

 だが、現状、俺以外の止められるものはいない!


 勇者の仲間達は全力で俺のフォローに周っている。

 バフ、デバフ、回復、周りのモンスターの処理。

 俺がチャラ男を対峙出来る環境を作ってくれた。






 俺は大剣で渾身の突きを放つ。


 チャラ男にマイクの先で剣を止められた。

 ……やっかいなマイクだぜ。


 そのまま連撃を繰り出す。

 ひらひらと躱すチャラ男。


 チャラ男はマイクを口に近づけた。


「やべ!」


 俺はなりふり構わず横っ飛びをした。


「ーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 マイクから放たれる衝撃波が、俺の後ろにいたモンスターに襲いかかる。

 モンスターは粉々に消滅した。


「う〜ん、勇者くんは勘がいいね〜」


 背筋が凍る。こいつはマジでヤバイ。

 小細工は通用しない。

 よし、最大級の攻撃しかねえ。


「おや〜、目の色が変わったね。くる? くる?」


 チャラ男は笑いながら俺を挑発する。

 マジでムカつく。

 一発かましてやる。


 俺は剣をアイテムボックスにしまった。

 代わりに豪奢な短剣を出す。


 短剣で躊躇なく手の平を刺す。


「ん!? 何してんの君! 頭おかしくなっちゃたの?」


 チャラ男は期待してかのように待っていてくれる。

 ……今は助かるぜ。


 手に刺さった短剣は俺の血を吸い始めた。


 ――くっ! さあ来い! 俺の聖剣!


 短剣は、血を吸いながら貫いた右手と一体化し始めた。

 徐々に大きくなる剣。

 それは身の丈を超える大剣に変化していった。


 その短剣は勇者の血と魔力を吸うことによって、本当の聖剣に進化する。


 俺は雄叫びを上げる。目が髪が真っ赤に燃え上がる。


「真バーストモード!! 聖剣開放!!」


 雄叫びをあげながら俺は渾身の力で聖剣を振るう。


「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!! 死ね!!」


 先程のレーザーと比較にならない光の質量が地面をえぐり取りながらチャラ男に襲いかかった。


 さすがに焦ったチャラ男は回避に入るがすでに遅い。



「ちょ、まてよ!! それ反則だよ!」



 お前のマイクも反則だろ!


 チャラ男がいた一帯がクレータと化した。






 **********




 ――くっ! 勇者パーティーと機械乙女パーティーが奮闘してくれているが、モンスターの数が多い。あいつら塔と一緒で無尽蔵に湧くのか!


 ――犠牲が多くなってきた。もうここは持たないか……


 私はバリケードの放棄を決意した。

 勇者の攻撃で敵が怯んだ今がチャンスだ。


「撤退だ!! 城に立てこもるぞ!!」


 取り巻きの忍者たちに指示を出した。

 即座に全生徒へ伝令される。

 前線の生徒たちは撤退を始めた。



 私の横に変態錬金師が息を切らして駆け寄ってきた。


「か、神楽坂……はあ、はあ、やっと出来上がった……」


 やっと変態錬金術師の最終兵器が完成した。

 なんとか広場の戦場に間に合ったか……


「よくやった! 最後に一発かますぞ!」


 私は錬金術師の背中を叩いた。


「げふん!? ちょっと触らないで下さい。僕は小さい子しか興味ないんで……」


 錬金術師は息を整えて最終兵器の準備を始めた。

 巨大な筒状の機械が広場に鎮座している。


「はぁ、師匠に見せてやるよ。これは魔剣と僕の錬金術を掛け合わせて、勇者の魔力と機械乙女たちの技術力で錬成した最高の爆弾……」


 忍者から撤退完了の報告が来る。

 

 私は錬金術師に合図をした。


「うぉし! ぶちかませ!!!」


 機械に備え付けられた爆弾は、バリケードを越え始めたNPCたちの真ん中に落ちていった。



 激しい轟音と振動が響く、私たちはミサイルの結果を見る前にすぐさま城の中に入っていった。


 ――あとで、遠隔カメラで確認だ!


 私たちの戦いは、城内での防城戦に移行していくのであった。

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