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 ……ロランさまって呼んでた。……ロラン王子も、アメリアって。


 知らないうちに、知り合っていた2人にショックを受け、自分の部屋に閉じこもって、ひたすらグリューの背中を撫でる。


 あんまり長く撫でているものだから、グリューは、嫌がって離れかけたが、泣きそうな私の顔を見て、ため息をつくと、私の側に寄り、大人しく撫でられている。


「お嬢様ー。……なにがあったか知りませんが、落ち込む度に部屋に閉じこもるの、やめません?」


 廊下から、クラウスが能天気に声をかけてくる。今度は、リズミカルに扉を叩き出した。……あんまりうるさいので、諦めて扉を開けた。


「少しは、1人で落ち込ませてよ……」


「1人で落ち込んでもいいことないですよ。……経験済みです」


 一応、文句を言ってみるが、気にした様子もなく、朝食の支度をしていく。


「それで? 今日はどんなお悩みですか?」


 しぶしぶ、席に着くと、クラウスが聞いてきた。


「アメリアが……」


「ああ。……お嬢様が、一方的に敵視している人ですね。確かにいましたね、それで?」


 相変わらず、クラウスの認識は、雑だ。


「敵視なんて、してないわよ。ただ、私は…………とにかく、あんなに気軽にお部屋を訪ねて、ロランさまって呼んでて、……ロラン王子も、アメリアって……」


 話しているうちに、またどんどん落ち込んできた。声がどんどん小さくなる。


「ああ。教育を受けてないから仕方ないとはいえ、ちょっとマナー違反でしたよね。……レオノールさまも気になっていた様子でしたよ。あの様子を見て、殊勝だねなんて、逆に嫌味ですよね」


 クラウスは、別の意味で気になっていたようだ。


「え? そうだった?」


「どれだけ親しくても、先触れも、ノックもなしに、ロラン殿下の私室のドアを開けるなんて、考えられませんよ。それに、ロラン殿下のことを殿下と呼ばないなんて」


 クラウスは、あり得ないという様子で、首を振る。


「少し前のロラン殿下だったら、罵倒して部屋から叩き出してもおかしくないですよ。……お嬢様と知り合ってから、ロラン殿下も、ずいぶんと丸くなりましたよね」


「でも、……でも、それだけ仲がいいのかも」


 そう言われると、そんな気もしてくるが、思っている以上に、仲良くなっているのかもしれない。


「そうかもしれないですね。……そんなに、気になるなら、アメリアに、私の婚約者候補に近づかないようにって、釘をさせばいいのでは? マナーもなっていないあなたが、ロラン殿下に近づく資格は無いって」


「それ、鬼門だから」


 そんなことしたら、みんなから嫌われて、一気に没落コースだ。


「……お嬢様は、結局、オレのことも、他のみんなのことも、心の底からは、信頼してないですよね……」


 クラウスは、真剣な表情になると、言った。


「そんなつもりは……」


 そんなつもりはない。だけど、……ただ、不安なのだ。


「ありますよ。お嬢様が、アメリアに、どんなことを言ったって、オレも、他のみんなも、急にアメリアの味方に鞍替えする訳ないじゃないですか。……なのに、お嬢様は、それを恐れてる」


 クラウスの追求は、止まない。


「……今日は、オレに付き合ってもらえませんか? 少し、見せたい場所があるんです」


 クラウスは、真剣な表情のまま、そう提案してきた。

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