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「それにしても……レオさま。エドも……よろしいのですか?」
結局、全員で机に座って、紅茶とスコーンを頂くことになった。今日も、スコーンが美味しい。庭の薔薇で作ったジャムが、上品に香る。
「ルーは、なにが心配なの?」
レオノールが、笑顔で首をかしげる。
「先ほど、婚約者候補と話しておりましたが、私がロラン殿下のことをお慕いしていることは、聞いておりますか? お2人には、1年間、無駄に過ごさせることになるかと思うのですが……」
最初から失礼かもしれないが、他の選択肢を選ぶつもりはない。牽制のつもりで聞いてみる。
「ルーに、他に好きな人がいるのは聞いているよ。私も、ザリア伯爵夫人から話を聞いたときは、断ろうかと思ったんだけどね」
レオノールが、笑顔で続ける。
「夫人から、自分に言い寄ってくる女性だけを見て、自分に魅力があると思い込むのは楽でいいですねって言われてね。本当の魅力は、自分に興味の無い女性を落としてこそなんだって。確かに、それもそうかなって」
……お母様、一体、なにをやってるの??
「私も、たまには本気になってみたくてなってね。振り向いてもらえるよう、頑張るよ」
レオノールは、私の手を引き寄せると言った。
「そんな、無理です」
思わず、手を振り払って、かぶりを振る。
「そんなに硬くならないで。まずは、友達になろう。ロラン殿下との愚痴も聞くし、男性がいつ、どう思うのか、教えてあげるよ」
レオノールは、振り払われたことなど、無かったかのように、笑顔で話を続ける。
「……ロラン殿下のお話、してもいいんですか?」
「もちろん」
レオノールは、爽やかだ。
……確かに、男性の意見が聞けるのは、貴重かもしれない。
「お友達としてなら……」
「とりあえずはね。……さて、私はそろそろ帰るよ。今日は、顔見せだけのつもりだったから」
レオノールは、立ち上がると颯爽と去っていった。
立ち去る後ろ姿も、優雅で爽やかだ。
「エドは、どうなんですの? 私と婚約しなくとも、ザリア領を継ぐのは変わらないでしょう? 無理して婚約者候補などにならなくても」
あっという間に去っていったレオノールに、しばらく呆然としてしまったが、気を取り直して、エドワードに振り向いて聞いた。
「僕も、夫人……お義母様から、領地を本気で継ぐ気なら、まずは味方を増やすことだと、教えていただきました。みんなに受け入れてもらうには、ルーを手に入れるのが、1番手っ取り早いと」
お母様は、一体なにをやっているんだろう……私の味方では無かったのか……
「……ご迷惑でしたか?」
私が無言でいると、エドワードが、涙ぐんで聞いてきた。……可愛いなあ。なでなでしたい。
「迷惑な訳じゃないわ。私と婚約しなくても、エドはすでに私の大事な弟です。全力で味方になるし、みんなに受け入れてもらえるよう、私も協力するから」
なでなでしたい欲望を抑えて、答える。
「……今は、弟としてしか見てもらえなくても、仕方ありません。振り向いてもらえるよう、頑張りますので、よろしくお願いします」
エドワードは、ぴょこんと礼をする。
「えーと、……よろしくね、エド」
今は肩に力が入っているようだが、ザリア家に馴染めば、私と婚約したいなどと言わなくなるかな。そんな風に思った私は、とりあえず話を終わらせた。




