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 ……これは、ウザい……


 レオノール子爵、義弟のエドワード、家庭教師のルイ先生を紹介された次の日の朝から、ルイ先生の教育が始まった。


「ルクレツィアさま。ひじが下がってます。……ナイフをお皿に当てない。……はい、私の手元をジロジロ見ない。人の手元を見た後は、もう少し目線を上品に、ゆっくり外しましょう」


 朝食も、食べ方の真似をするようにと、向かいに陣取ったルイ先生が、所作の一つ一つにダメ出しをする。おかげで、ほとんどの料理が冷めてしまったというのに、まだ三分の一程度しか食べれていない。


 エドワードは、私の隣で、ずっとルイ先生の真似をして、頑張っている。時間はかかっているが、ダメ出しがない分、私よりは順調だ。


 先生いわく、私を完璧な淑女に仕立て上げるのに、1ヶ月は短すぎるそうで、先生は私のマナーだけを徹底的に直す、それまでは、エドワードは、ひたすらついて歩いて、先生の真似をして自習ということになった。


 お父様も、お母様も、なかなか終わらない指導に、関わりたくないと思ったのか、無言で素早く食事を取ると、退席してしまった。


 お母様には、レオノールとエドワードを焚きつけた件について、文句を言おうと思っていたが、そんな余裕もない。


「ルクレツィアさま。今、別のことを考えていましたか? 手元がおろそかになってますよ」


「……申し訳ありません。でも、ルイ先生……そろそろ、普通に食事を取らせてもらえませんか? 気を張りすぎて、手が震えてきました」


 いや、頑張るとは言ったけど、ご飯もまともに食べられないのでは、頑張るものも頑張れない。


「そうですね……次の予定も押していることですし、わかりました。では、朝食はここまでにしましょう」


 ルイ先生が合図すると、食事が下げられた。


「えっ?! まだ、食べてるのに!」


 思わず、叫ぶ。


「早く上手になれば、食べきれるようになりますよ。昼食は、頑張ってくださいね」


 涙目で睨むが、ルイ先生は、気にした様子もなく、にっこりと微笑む。これは……なかなか厳しい暮らしになりそうだ。


「……ところで、マナーを教えていただくと聞いて、女性の先生を想像していたのですが、先生は、女性の所作にも詳しいのですか?」


 朝食を諦めた私は、気になっていたことを聞いてみた。ゲームのときは、あまり気にならなかったが、女性のほうが良さそうな気がする。

 ……いや、けして、怖いからとか、厳しいからとかではなく、一般論としてね。一応ね。


「そうですね……マナーだけなら、女性のほうが確かにいいかもしれません。ただし、今回は教養だけでなく、経営要素の座学もありますし、なにより、ダンスの授業では、直接お相手できたほうが効率がいいですからね」


「ダンスですか?」


「淑女であれば、必須のたしなみですよ。余裕があれば、ロラン殿下のご趣味だとお聞きしていますので、乗馬もお教えいたします」


 ……思わず、体育会系の熱血師弟関係を想像してしまったが、大筋で間違っていない予感がする。


「所作については、女性向けに調整していますので、そのまま真似をしていただいて大丈夫ですよ。あ、エドワードさまには、後で簡単に説明しますね」


 必死で真似をしていた所作が女性向けと聞いて、後ろでショックを受けているエドワードに向かって、ルイ先生は、さらりと言った。

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