ケジメをつけよう
「あははー。そんなこともあったなー……」
「うみ? どうしたの?」
「いや、ういのせいで嫌な記憶思い出しただけ」
「どういうこと!?」
なぜか急に罵られたけど、割といつものことなので軽く流すことにした。
それよりも、心配なのはめいの方だ。
一人でお姉さんに会いに行ったのだろうか。
「……あのぉ」
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「出たぁぁぁぁぁ!」
「……二人とも幽霊が出た時みたいな反応するのやめてくれません?」
後ろから呼びかけられ、思わず飛び退く。
うみは正面から見えていたはずなのに、私に共鳴するように叫んだ。
振り向くとそこには何やら暗い顔をしためいが立っていた。
俯いているから、余計幽霊みたいに見える。
「め、めい! どこ行ってたの!?」
幽霊だとかそんなことより、どうしてここにいるんだろう。
ここで待っててと止められたから、てっきりお姉さんのところにでも行ってるのかと……
「あー……その、扉からお姉ちゃんたちの会話盗み聞きしてました」
「……ほぇ?」
間の抜けた声が出た。
盗み聞きしてたって……いつからそこに? うみがここに来た時から? だとしたら結構長い間聞いていたことに……
私たちは顔を見合わせて、めいの方を向いた。
「盗み聞きしてたことはごめんなさい。でも、お姉ちゃんたちの会話を聞いてわたしも心の整理ができました」
「めい……」
「わたし、お姉ちゃんが好きです。今目の前にいるお姉ちゃんも、向こうの世界のお姉ちゃんも」
「……うん」
私は今めいにどんな顔を向ければいいのかわからないけど、それでもめいはちゃんと私を見てくれている。
だからこそ、ちゃんと向き合わなければ。
「だから、向こうの世界のお姉ちゃんにも会って確かめたいです。わたし自身がどうしたいのか」
めいは一呼吸置いて、私たち二人と向かい合った。
いつものようなふわふわした表情じゃなくて、覚悟を決めた顔を浮かべて。
きっと……いや絶対、これを私に伝えるのは相当つらいだろう。
でも、めいは私たちに伝えようとしてくれた。
「……うん。ちゃんとケジメをつけなきゃね」
「お姉ちゃん……」
「一緒に行こう。私も見届けるよ」
私はめいに手を差し出して、めいの手を握った。
その小さな手は微かに震えていたけど、やがて私の手を握り返してきた。
そして、私たち三人は共に自分たちの気持ちへ向き合うためにういさんの元へ向かった。
「あ、やっぱり来てくれたんだ」
「……私とめいが一緒にいるって、知ってたんですか?」
「確信はなかったよ? でも、私と同じ顔で同じ名前ってなったら……ね。多分そこにいるんじゃないかなって」
「……っ」
「色々言いたいこともあるだろうし、こっちも色々聞きたいことがあるから……まあ座ってよ」
ういさんは私たちを部屋の真ん中にあるソファーへ誘導する。
私たちはそれに従い、警戒しながらも素直に座った。
ういさんはお茶を淹れて、私たちに差し出してくれた。
「はい、どうぞ」
「……どうも」
「ありがとうございます……」
「そんなに警戒しなくても……って言っても無理か」
私たちは出されたお茶を一口飲む。
ういさんは自分の分のお茶を持って、私たちと向かい合うように座った。
「特にその黒髪ロングの子には悪いことしちゃったしねー」
「そんな軽い感じで言わないでください! ちゃんとホラーだったんですよ!?」
ういさんは黒髪ロングの子……うみの方に視線を向けて、からかうようにケラケラと笑った。
うみはそれに過剰に反応して、ういさんに向かって抗議する。
何があったのか詳しくは知らないけど、ういさんと入れ替わったあとのうみの動揺っぷりはすごかったから、相当やばいことがあったのだろう。
でも、私としてはそんな話をしている場合じゃない。
「……あの、本題に入ってもいいですか?」
「お? そうだったね、ごめんごめん」
ういさんはふざけた態度から一転し、真剣な表情に変わる。
今までのひょうきんな印象から一変して、大人な雰囲気を醸し出すういさんに私たちも自然と背筋が伸びた。
「ういちゃんも、めいのことが好きなんだよね?」
「はい」
「そうか。私もめいを諦める気はないよ」
「はい。それもわかってます」
それを聞けて安心した。
……いや、本当は不安になってしまう心を必死に奮い立たせてるだけかもしれない。
だけど、ういさんも同じ気持ちなら私たちが喧嘩する必要なんてない。
そうすると、めいが一番つらい立場に立たされるが……めいも覚悟の上だろう。
「なら、あとはもうめいの気持ち次第じゃないですか?」
「そうだね。めい、君はどうしたい?」
ういさんはめいの方を真っ直ぐに見て、問いかけた。
めいは隣にいる私を見て、再びういさんの方を向く。
そして意を決したように口を開いた。
「わたしは……」




