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聖女の加護を双子の妹に奪われたので旅に出ます  作者: ななみ
第六章 審判編

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おじいさまの気持ち

 大事に育てたわしのマリー。わしを大好きだと言って笑うマリー。

 知らなかったとはいえ、リリーはそんなマリーを危険に(さら)した。


 それが許せない自分が許せない。あの子も同じ孫なのに……。


 キッチンでパンを切りながら、わしは割り切れない気持ちを持て余していた。


「お爺さん。量多くない?」


 後ろから覗き込むフェルネットの声で我に返ると、手元には切り過ぎたパンが山になっている。


「あ、ああ。最近みんなよく食べるからな」

「ははは。そうだね。寝込んでるガインさんの分は先に貰っていい?」


 わしは(こころよ)く引き受けて、パンに肉や野菜を挟んで皿に乗せた。


「今日はガインの好きな香草のスープだ」

「きっと喜ぶよ!」


 フェルネットが鍋のふたを開けると、小皿に取って味見をして満足そうに頷いている。


 しかし、まさかあれがマリーの姿をしたリリーだったとはな。


 リリーとは生まれた時に会ったきり。その後は時々手紙で成長を知らされていた。それもマリーがうちに来てからぱったり途絶えたけれど。


「お爺さん?」


 わしはまた考え事をして手が止まり、フェルネットに苦笑いをされていた。




「待たせたな」


 両手に朝食を載せた皿を持ち、(ひじ)と背中でドアを開けると、慌ててマリーがドアを支えに走ってくる。


「おじいさま。無理しないでくださいよ」

「ありがとうな。マリーは優しい子だな」


 くしゃっと顔を崩して笑顔になるマリーを見て、いっそう愛おしさがこみ上げてきた。

 この笑顔はわしにしか見せない特別な顔なのだ。この甘えた笑顔を見れるのはわしだけ……。


 視界の先にハートを見つけ少し気分が落ちていく。

 そうだ。この件もあったのだ。


 ハートにライバル心を芽生えさせながらテーブルに朝食を並べていく。

 テッドが皿をみんなに配り、フェルネットが「今日は香草のスープだよ」とスープの鍋をどんと置いた。


「いいね」「旨そうだ」


 わしはテーブルを前にみんなの様子をボーっと眺める。


 いつものように自分でスープを皿に盛り、いつものように楽しく話をしている。

 わしの心だけが取り残された気がして落ち着かない。


「おじいさま。大丈夫ですか?」

「早く早く」


 フェルネットとマリーが突っ立っていたわしの腕を引く。

 テーブルに手をついて席に着くと、すかさずテッドが皿にスープを入れてわしの前に置いてくれた。


 ああ、本当に良い子達だ。


 シドとハートは真剣な顔で何かを話している。

 わしは彼らを見ながら目の前のスープを(すく)って口に入れた。


「ねぇ、マリー。今日はどうするの?」

「事情聴取の続きです。聖騎士に依頼したので帰りにお買い物に行こうかと」

「それなら僕にいい考えがある」


 フェルネットが悪い顔でニヤ付いている。


 シドがフェルネットの言葉に苦笑いをして「私とハートは少し出かける」とハートを見た。

 ハートはシドに同意してパンを(かじ)りながら頷いている。


「おじいさまは?」

「わしか? わしはギルドに顔を出してくる」


 気もそぞろのわしの様子に気を使い、みんなはそれ以上聞かずにいてくれた。


「行ってくる」


「「「いってらっしゃい」」」


 後片付けをテッドに任せて、わしはひと(あし)先に家を出る。

 あのまま家にいたらみんなに心配をかけてしまう。


 わしには考える時間が必要だ。


 トボトボとギルドに向かって足は進むが、これと言って用事もない。

 ふと、(きびす)を返して中央公園に行き先を変えた。


 リリーがマリーの加護を奪った話は聞いていた。


 あの当時マリーは『リリーに自覚は無かった筈だから責めないで欲しい』そう言って辛そうに笑った。


 それ以上、マリーはリリーの事を口にしない。

 だからわしも敢えて触れなかった。

 リリーの事に触れて欲しくないのだろうと。


「もっと話を聞いてやれば良かった……」


 わしはベンチを見つけてそこに座ると、背もたれに背中を預けて空を見上げる。

 そっと目を(つむ)ると中央の噴水で遊ぶ子供達のはしゃぐ声が心地良く感じた。


 今回もマリーはリリーを責めてはいなかった。

 でも、わしはリリーを許せなかった。


 マリーが戻って来なければ、わしはどうしていたのだろう。


 (まぶた)を開けると子供達が笑いながら水を掛け合う姿が目に映る。

 それを何の感情もなく見つめていると、男の子が誰かの肘に当たって尻もちを着いた。


「あっ」


 わしが腰を浮かしかけた時、そばにいた男の子が「ごめん」と言って手を伸ばす。

 今にも泣きそうだった男の子が、その手を取るとにっこり笑った。


「良かった」


 あの子が彼の手を振り払わないでくれて良かった。

 笑ってくれて良かった。


 その姿にリリーを許すマリーを重ね合わせる。

 マリーがリリーの手を振り払う姿は想像できないな。


 そうだな。わしはマリーが信じたリリーを信じよう。

 簡単な事じゃないか。今まで通り、あの子が信じたものを信じるだけだ。


 そう思うと、ここ数日間のモヤモヤが嘘のように晴れていった。


読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク、評価、いいね頂いた方、感謝です!

誤字報告、本当に本当にありがとうございます!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 1.更新ありがとうございます。  お祖父様もリリーが騙されたとはいえ、聖女に対して狼藉をやらかして苦悩するのを見ると「辛かったですね」と言いたくなるのは私だけだと思います。  タイムパラド…
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