11-31 水晶宮譚③
三人の人魚は、水面から上半身を出したままで泳いでいました。
そして、もっとも近いところにいた真っ黒い色の巨大クジラに近づいて行きました。
「ピュ―――!こんにちはー!」
「ピュ――――! パタチョンさ――ん、お元気ですかー?」
ナラジャーとイマジャーは人魚族の通信手段の一つである甲高い音をさせながら、声を出してアイサツをしました。
そして、クジラまであと15メートルほどの距離に近づいたとき、人魚たちは奇妙な者が有尾人たちに混じって彼女たちを見ているのに気づきました。
ひと目見て、彼らが有尾人でないということがわかりました。
その者たちは、有尾人より首一つほど背が高く、毛皮一枚の有尾人たちと違って、全身を覆う布を着ていて、シッポもなく、足もはだしではなく何だか黒いものを履いていました。
そして、その異形の者たちは手に黒く長いモノを抱えていました。
人魚娘たちが見ただけでも洗練された恰好をしているとわかる者も数人いました。
「?...」
「ナニ、これ... ちょっとヘン?」
「引き返しましょうっ!」
しかし、決断は遅すぎました。
パタチョン族と異様なモノたちの後から現れた有尾人を見て、三人は一瞬、凍りついたようになりました。
黒嘴鳥の黒い羽根を数本頭に飾った有尾人は、若い人魚を好んで狩る カインガー族の戦士たちだったのです!
「!」
「カインガー族!」
「逃げなきゃ!」
三匹の人魚が水の中にもぐるよりも早く、カインガー族の戦士たちは、目にも止まらない速さで吹矢をセレシアたちに向けて飛ばしたのです。
狙いたがわず吹矢を受けた人魚娘たちは、それでも身を翻して水中に潜りました。
彼女たちの後を追うように数人のカインガー族の戦士たちが次々と川に飛び込みます。
しばらくして、カインガー族の戦士たちはグッタリとした人魚を腕に岸辺に泳ぎつきました。
カインガー族の戦士たちが人魚を抱えて泳いで来るのを待っていた、背が高く、洗練された恰好をした者が、そばにいたカインガー族の中年の男に訊きました。
それを頬に打撲の痣があり、片耳のないパタチョン族の者が通訳します。
「ぼりぞですさまは、その人魚をどうするのか、と聞いている」
カインガー族の戦士がドサッと人魚を土の上に投げ出しながら答えます。
「XXXX! XXXXXX. XXXXXXXX!」
「“決まったことだ。大酋長ツピナンバに捧げるのだ!”と言っています」
「ほほう!有尾人は人魚を食らうのか? 肉はおいしいのか?」
「XXX! XXXXX、XXXXXX! XXXXXX!」
「“若い女の人魚の肉はおいしいが、それ以上に長寿を得ることができるのだ!”と言って...」
三匹の人魚は見ただけで若いメスだとわかりました。
それぞれ緑色の髪、黄緑色の髪、それに水色の髪をしていましたが、それぞれこんもりともり上がった胸をちょっとだけ覆う形の衣装をつけていたからです。
魚同然の下半身を見なければ、人族の美少女と言えそうな美しい人魚たちでした。
「ツピナンバ大酋長が食べさせる前に、その三匹の人魚たちを俺に貸してくれないか?三日でいいから」
片耳のない通訳が通訳すると、若いカインガー族の戦士は血相を変えて何か大きな声で言いはじめました。
そこでボリゾディスは中年のカインガー族の男に向き直って言いました。
「君に袋いっぱいの金貨をあげよう。これを若いカインガー族の戦士と分けるということで、この三匹を私に三日間だけ貸してくれないか?」
「.........」
「俺はこの人魚たちと楽しみたいだけだよ。傷一つつけないから安心しろ」
副官が気を聞かして潜水艦の中から金貨の入った袋をもって来てボリゾディスに渡しました。
ボリゾディスはずっしりと重い袋をカインガー族戦士の若頭にあたえました。
「XXXX XXXX!」
「“三日の夜に無傷で引き渡すこと!”と言っています」
「さすがに年季の入った若頭は物分かりがいい。わーっはっはっは!」




