表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
ラストウオー
471/526

11-24 ゾオルSOS⑥

 大魔王殿の庭園があったところに、その石像はあった。

やや傾いており、しとしとと降る細雨にぬれていた。

 石像は女の顔をしていたが、その表情は恐怖に歪んだものだった。

そして、石像の前には小さな男の子が立っていた。


 その細雨にぬれた顔には、あきらかに雨とは違う二筋の水が流れていた。

赤髪で色で肌の白い男の子の名前はルシエル、3歳。魔王ルゾードとアニュイパランの子どもだ。


「ママ... どうしてこんなになっちゃたの?」


美しい庭園だったところは、芝生は吹き飛ばされ、美しい花や緑の葉が茂っていた木々は根こそぎ倒され、瓦礫が散らばる荒れ地のようになっていた。

目の中に入れても痛くないかわいい孫・キリュアナ(アナ)を魔族に殺された白龍王妃アシュマナーダが、“報復”のために白龍たちを連れて、魔王の宮殿アヴァダータ・プラサーダ城を攻撃したときに、この美しい庭園もいっしょに破壊されてしまったのだ。


 もっとも、白龍王妃は“過去のモノを現在にもって来る”能力でキリュアナ(アナ)を助けたので問題は解決したのだが、「白龍族に手を出したらどうなるかを教えてあげるわ!」と白龍妃が魔王に制裁を加えたのだった。

 魔王の恋人だったアニュイパランは、メデューサの盾でスケさん、カクさんやタンヤたちリョースアールヴ(光のエルフ)を石化したが、エルフ女王アイミのミラーバリアーによって石像と化した。


 石と化した母親に抱きついて泣いているルシエルをアヴァダータ・プラサーダ城の塔の窓から見ている者がいた。魔王ルゾードだ。


「魔王さま。作戦室の方で呼んでおります。」

声の主は、魔王に影のようにつきそっている副官のゲフィオンだ。


「ゾオル攻略の方で問題か...」

「そのようです。」



 魔軍総司令部の作戦室に魔王が現われると、将軍や参謀たちはガタガタっと椅子から立ち上がり敬礼をした。


「どうした? またエルフの魔術師たちでも現れたのか?」

「はっ。ゾオル攻略支援のために残った『ヴィヤカラ・マハン(飛行輸送戦艦)ナーガ』2隻と『ドゥルガ・ナーガ』(飛行輸送巡洋艦)10隻のうち、ヴィヤカラ・マハンナーガ2隻とドゥルガ・ナーガ8隻は、午前中に現れた同盟軍の飛行新兵器によって撃墜されました。

さらに、獣人族軍の防衛部隊は壊滅状態にあり、ゾオル占領は今日、明日中にも完了する予定だったのですが...」


そこまで言って、少し言いよどむグロスヴェル参謀副長。


「同盟国軍の戦車部隊の攻撃を受け... ゾオル攻略部隊の損失は車両800台、兵員3万以上。撃墜された2隻のヴィヤカラ・マハンナーガと8隻のドゥルガ・ナーガ、および140隻のラーヴァ快速飛行戦闘船の乗組員の死者数は約9千5百人です。

確定情報ではありませんが、ゾオル攻略部隊と交戦したのは、ドワーフの機械化部隊のようで、どうやら新型の重戦車を投入しているようです。」

「ドワーフ軍か... イーストランジアでもドワーフ軍には苦汁を二度も三度も飲まされたが、今度もドワーフ軍が邪魔だてをするか...」


みんな黙ってしまった。

たしかにドワーフ軍は、魔軍にとって疫病神のようなものだった。

イーストランジアでの失敗から、魔軍は中央大陸を攻略して、さらに魔族‐兵力‐を増やし、軍事力を高めてから最後にイーストランジアを攻略することを計画していたのだ。そうすればドワーフ軍も破ることができると考えていたのだ。


「それで、飛行船団は現在、どの位置にいるのだ?」

「魔海にはいったところです。アンターカ半島には24時間後には到着します。」

アサグ参謀長が答える。

「結局、第二陣にたよるよりほかに方法はないのか?」 

「同盟軍の飛行新兵器は100機ほどで、報告では10機ほどに損害をあたえたとのことですので、600隻を超す飛行船団の機銃をもってすれば、残りの90機がふたたびやって来たとしても物の数ではないでしょう!」

「問題は、その飛行新兵器が、ドワーフ軍の攻撃で大きな損失を受けたゾオル攻略部隊を明日また攻撃しないかです!」


参謀のボウデイッカが、ほかの将軍たちや参謀たちが危惧しながらも言えずにいたことをハッキリと言う。


「ボウデイッカの言う通りです。ただでさえ、空からの支援がなくなったゾオル攻略部隊に、さらに敵による空からの攻撃が加われば損害はさらに増え、ゾオル攻略も難しくなります...」

姉のハイバデイッカ参謀もその可能性が大きいことを強調する。


「ドワーフ軍が相手では、地下トンネルを掘ってかくれても無駄だし、トンネル掘りはなによりドワーフ軍の得意なことだからな...」

一人の参謀がつぶやく。


「目的はゾオル攻略であって、防衛陣地を構築することではない。何より、速度が最優先されるべきだ!」

アサグが釘を押す。


「問題は、飛行船団が帰って来て、第二陣を乗せてもどるまでの60時間、二日半を第六軍が持ち堪えるかどうかね!」

ベイアリア総軍統括長が締めくくる。

「たのみの綱だったザパータ―厭忌(えんき)の者たちも、不甲斐なくエルフの魔術師たちにやられてしまったしな...」

魔王が唸るようにつぶやく。




 ゾオル郊外東にある街道。

石畳のその街道は幅が広く、海岸地方と首都を結ぶ幹線道路でもあることからよく整備されている。

 しかし、その長い直線が続く街道はほぼ封鎖され、照明で煌々と照らされた街道には勇者王国軍のND-T3戦闘機がずらっと駐機しており、人々がND-T3戦闘機に取り付いて何やらやっており、何十台もの車両が忙しそうに走り回っている。


 彼らはナンバ市郊外にあるナンバラボの飛行機製造工場から送られて来た整備士や修理工たちだった。ナンバからは銃弾、燃料、交換部品などが彼らとともにドコデモゲートで送られて来て、明日の攻撃の準備と魔軍の攻撃を受けた戦闘機の修理を行っていた。


 ナンバラボがドワーフ兵器廠と共同開発したND-T3戦闘機は、レオの強い要望で“防弾設備”を強化した戦闘機だった。

 レオが前世で〇〇人として生きていたとき、地球のほとんどの国を巻き込んだ最後の大戦争で〇〇軍が製造した軍用機には防弾設備が皆無であったため、多くの優秀なパイロットたちが無駄死にしたということを本で読んで知っていた。

 そこで、ND-T3の開発にあたっては、エンジン下部とコックピットの床と周囲には、それぞれ15ミリと20ミリの防弾鋼板を付けさせ、燃料タンクも自動防漏式のものを付けさせた。


 ドワーフの技術者たちもナンバラボの技術者たちも、レオがどうしてそこまでパイロットの安全を気にするのかわからなかったが、最初の戦闘で8機が被弾したものの、防弾装置のおかげで  一人のパイロットも失わなかったことを知って、レオの心配が杞憂ではなかったことを理解したのだった。


 キムリック少佐がパイロットたちを道路わきの空き地に集めて明日の任務を伝えている。


「いいか、明日は日の出と同時に出撃する。任務はゾオルに北西および南西より進んで来る魔軍部隊を食い止めるために投入されるドワーフ軍の緊急展開部隊の支援だ。明朝マルヨンサンマル(4時半)時に出撃する!」


「「「「「「「「「「「ニャ―――ゴ!」」」」」」」」」」」」


ネコ族のパイロットたちが雄たけびをあげる。


「1中隊と第2中隊は私の指揮で北西の魔軍部隊を攻撃。第3中隊と第4中隊はスクークム大尉の指揮で南西の魔軍部隊を攻撃する!偵察隊からの情報では、両方とも2隻ずつの大型飛行船によって守られているそうだが、大型飛行船など飛翔弾で簡単に撃墜できる!それぞれ1小隊に長距離有眼式飛翔弾を装備させ、敵の有効射程外から攻撃する!」


「「「「「「「「「「「ニャ―――ゴ!」」」」」」」」」」」」


「今日は、獣人族が用意してくれた仮設テントでゆっくり休め!」


「「「「「「「「「「「ニャ―――ゴ!」」」」」」」」」」」」


「解散!」副隊長のスクークム大尉の言葉でパイロットたちはテントへ向かう。



 翌朝4時半、ドワ・デドリグ・バルンバム大佐指揮下のドワーフ軍の緊急展開部隊の『雷斧』部隊は、DY-5号戦車を先頭にドコデモゲートから飛び出した。土煙をあげて、街道沿いに南西へ進む。


《『雷斧』部隊指揮官、『雷槌』部隊指揮官、こちらはこちらはホワイトドラゴン偵察隊第5班、応答願います》


ホワイトドラゴン偵察隊第20班ラドリエル少尉がマソキで『雷斧』部隊の指揮官と連絡をとる。


《ホワイトドラゴン偵察隊第20班、こちらは バルンバム大佐だ!》

《魔軍の北西部隊は、貴部隊の西に見える低い山脈の西、約4千メートルを進撃中。戦車の数量は約千台!》


《ホワイトドラゴン偵察隊、この街道から山脈の西に出る道はあるか?》

《こちらはホワイトドラゴン偵察隊、前方千メートルほどのところに、山を越える道があります。それを過ぎて5千メートル行くと山脈は低くなっており、戦車でも超えることが可能です!》


《わかった!情報に感謝する》

 



 偵察隊との交信を終えたバルンバム大佐はマソキのチャンネルを変えてマイクに向かって怒鳴る。

《こちらはバルンバムだ。勇者王国軍空軍の攻撃後に作戦を開始する。

魔軍部隊は西の山脈の向こう側をゾオルに向けて進軍中だ。こ

の街道を1キロほど進むと山脈を超える道がある。第一中隊と第二中隊は、

その山越え道を通って敵の横腹を突く。

第三中隊と第四中隊は、このまま5キロ進んだところで西に針路を変え

敵の正面から攻撃する。いいな?》


《《《《了解》》》》


中隊長たちからすぐに回答がある。



 ゾオルを北から攻めるべく進軍していた魔軍攻略部隊の指揮官は、ヴャガラ突撃戦車の東南の方角から急速に近づく無数の飛翔体を確認した。

同じ時、魔軍攻略部隊の前方を飛行していた飛行巡洋艦も急速に接近するND-T3戦闘機を発見した。

「艦長、敵の飛行新兵器が4時の方向より迫っています!」


「機銃要員、4時の方向から敵の飛行新兵器接近、戦闘用意!」

「全機銃、4時からの敵の飛行新兵器に機銃を向けろ!」


副艦長が伝声管に向かって命令を伝える。


そのとき、数条の白い煙が急速に飛行巡洋艦に向かって高速で飛んで来た。


「敵の飛翔弾だ!回避!取舵いっぱーい!」


「操舵、取舵いっぱーい!」


副艦長が艦長の命令を伝え、100メートルを超す巨大な飛行巡洋艦は左に傾いて飛翔弾の針路から外れようとしたが、飛翔弾はカーブを描いて飛行新兵器に向かって来た。


「飛翔弾が追尾して来る!ウワァ――――ッ!...」


ドドド―――――ン!


 3発の飛翔弾が炸裂し、飛行巡洋艦は真っ赤な炎に包まれて墜落していく。

長距離有眼式飛翔弾の有効射程は20キロもあり、オマゾン・トンボの目を利用した目標ロックオン 追尾式の飛翔弾からは逃れようがないのだ。

もう1隻の飛行巡洋艦もまたたく間に撃墜されてしまった。


 その後、ネコ族パイロットの乗るND-T3戦闘機隊は魔軍部隊の上に飛翔弾の雨を降らせた。

焼夷弾が尽きると、今度は機銃掃射の雨を降らせた。


『雷斧』部隊が突撃したのは、その後だった。


「なんだ、これは?! 勇者王国軍の新兵器隊が“おいしいところ”をみんな持って行ったあとではないか?」


バルンバム大佐は不満そうな顔をしたが、それでもわずか50機の戦闘機による攻撃の結果などたかが知れている。気を取り直して、マソキに向かって命令を発した。


《突撃ー!魔軍は一人も逃すな――!》


 DY-5V号戦車の100ミリ砲が火を吹き、DY-3号戦車の75ミリ砲と50ミリ砲が火を吹き、自走飛翔弾発射車が地獄の火のような飛翔弾攻撃を行い、そのあとに装甲車が突入し、車載機銃とドワーフ軍兵士たちの機銃で逃げ回る魔軍兵たちを倒して行った。

 そしてさらに、オムルカル湖南部の魔軍を包囲していた獣人族軍の猛将マスティフ将軍の師団が、ドコデモゲートで投入され、魔軍部隊を左翼から攻撃した。



 同時刻、スクークム大尉のND-T3戦闘機隊はゾオルに南西から迫っていた魔軍の飛行巡洋艦2隻と地上の魔軍部隊を攻撃した。その後、ドコデモゲートでラガル方面からUターンして来た虎族将軍ガドゥンガンの精鋭師団と馬族将軍ガヴァーロの師団が魔軍部隊へ攻撃を続けた。


また、北西の都市リタケオル攻略を目指して進軍していた魔軍部隊に対しては、ウルガット大佐の『雷剣』部隊が投入され、これもND-T3戦闘機隊の上空支援のもとで猛攻を開始した。



ゾオル攻防戦作戦図(ドワーフ軍緊急展開部隊投入後)

挿絵(By みてみん)





 ゾオル周辺に迫っていた魔軍部隊がすべて鎮圧された翌日、ゾオルから東にある都市イルードと魔軍着陸点より東にあるアイラベルタ市に向かっていた魔軍部隊も制圧されてしまった。


 かくして、二日間で魔王が送りこんだゾオル攻略部隊はすべて制圧されてしまった。

獣人族軍の損害は大きかった。獣人族軍の死者数は15万人を超え、負傷者数も20万人近くとなった。一方、ラガルなどの民間人の死傷者数も3万人を超えるという甚大な被害を受けた。

戦車などの車両も1500台が大破、または中破となった。


 しかし、魔軍の損失はそれ以上だった。

戦死者数約35万、負傷者数15万、戦車5千台、飛行輸送戦艦2隻、飛行巡洋艦10隻、快速飛行戦闘船150隻以上が破壊されたのだ。負傷者は全員捕虜となった。




 ゾオル攻防戦が一段落したあと、エルフで治療魔法を使える魔術師たち全員に非常招集がかけられ、ゾオル周辺とラガルにて獣人族軍の将兵、民間人、そして魔軍の捕虜たちに分け隔てなく治療魔法を受けることになった。


 もちろん、治療魔法ではミィテラの世界でトップレベルのエルフ女王アイミや仙人隊のベテランたち、それにリョースアールヴ(光のエルフ)たちも参加した。

 また、治療魔法はあまり得意ではない、というか一回も使ったことのないアウロラも見よう見真似で治療魔法を使って負傷者たちからたいへん感謝され― 誰でも美人のナース(治癒魔術師)にやさしくしてもらいたいのだ。


 もっとも、アウロラの専門は治癒魔術ではなく、攻撃魔術なのだが。

獣人族の将兵や市民たちから「アウロラさんみたいな美人魔術師に治療してもらって幸運でした」と褒められ、アウロラは赤面しながらも甲斐甲斐しく治療を行った。

 そして、なんとアイミの三歳の娘アイまでが治療に加わったのには、母親のアイミもレオもビックリした。

アイの治療魔法は、ほかの魔術師たちの能力とくらべても遜色のないものだった。


「まだ3歳なのに、これだけの能力を持っているとは!...」


絶句するレオパパ。


「アイちゃん、すごいわね? きっとママ以上の魔術師になるわよ!」


手放しで喜ぶアイミママ。


将来が楽しみなちびっこ魔術師が誕生した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ