27 男二人
部屋に残された男二人は、ちょっとどうして良いのか分からず無言だった。だから、思い切って俺が話し始めた。
「ワグネルさん、私達はこちらの世界を知りません。申し訳ありませんが、頓珍漢な事を言ったりしたりするかもしれません。その時は気にせず注意してくださいね。」
「分かりました。ヒロタカ様」
「おっと、ワグネルさん、ヒロタカ様は恥ずかしです。こっちではちょっとすごい力を持っているのかもしれませんが、向こうの世界ではただの40歳のおっちゃんだったんですから。それにワグネルさんの方が年上なんですから。なるべく普通に話しましょう。肩も凝りますしね。」
俺が笑いながらそう言うと
「はい、そうします。」
「それにしても、ヒロタカさんは異世界人でしたか。どうです、こっちの世界は?」
ワグネルは随分と普通に話すようになった。
「そうですね、女神アイシャに森の中に送られた時は焦りましたよ。せめて村の近くにしてほしかったですよ。」
笑いながらそう言うとワグネルも笑っていた。
「と、言うことは、ヒロタカさんは、アイシャ様に合ったんですか?」
「会いましたよ。」
「綺麗な人だったでしょ、優しくて、スタイルもいいし。完璧な女性という感じですよね」
俺は若干のズレを感じながらも、
「そうですね、綺麗な人でした。ワグネルさんもアイシャ様に会ったんですか?」
「そうですね、そちらの世界では分からないですが、こちらの世界では教会に行くと時々に来ているんですよ。だから、殆どの人はアイシャ様を見たことがあるとおもいますよ。その為、教会には子供と男の人が結構通ってるんですよ。この前、アイシャ様が来てるから、店ほったらかしで見に行って妻に怒られましたよ。」
ワグネルは笑いながら言った。
「それと、【生活魔術】でしたっけ。あれはびっくりしました。特にクリーンは凄いですね。」
「そうですね。あれは便利ですよ。掃除、洗濯、ご飯の片付け、色々便利ですよね。こちらの世界ではほぼ全ての人が生まれながらに持っているんですよ。まれに持って来ず生まれる人も居ますが、周りで【生活魔術】を使っていると、後天的に発現するんですよ。」
生まれながらに持っているのには驚いた。
「後、魔獣には驚きましたよ。向こうの世界には動物は居ても魔獣は居ないですし」
「そうですよね、魔獣の居ない世界なら驚きますよね。私達はずっとこの世界でしたから気にしていませんが。恐いのには違いないですね。でもその割にこちらの世界に慣れてるという感じがしますが?」
「そうですね。向こうの世界にはこういった異世界に行ってしまう。というお話が結構売っているんですよ。ラノベと言って、若者向けの読みやすいお話なんですよ。私も色々読んでいまして。」
笑いながら話すと
「へぇー、そうなんですか。やはり、そのラノベとやらにはよく似ておりますか?」
「レベルがあり、スキルがあり、魔法があり、魔獣が居て、獣人がいてラノベの中みたいですよ。早く村にいってみたいですよ。」
「失礼ですが、レベルはいくつなんですか?」
俺はその問いに隠すのもめんどくさいので
「107になりました。」
と、何気なく答えたが、ワグネルさんは
「ひゃ、107ですか?流石異世界の人は上がるのが早いとよく聞きますが凄いですね。それならランクAの魔獣も倒せても不思議じゃないですね。107と言ったら人類では最強じゃないですかね。」
「ははっ、そうですかね。でも、レベルが高いと安全に暮らせそうですしね。それで、ワグネルさんはいくつなんですか?」
ワグネルさんは頭を掻きながら
「お恥ずかしい、15なんですよ。」
「そうなんですか。この世界の一般平均男性よりは高いんですね。」
「あれ? よくご存じですね。どなたかに聞いたんですか?」
ちょっと不思議そうに聞いてきた。
「あー、それはですね、私のスキルの中に【賢者】というのがありまして、十六夜。」
「はい、弘隆様。」
突然の声にワグネルは周りをキョロキョロしている。
「すみませんね。ワグネルさん。これが十六夜です。私達が帰って来たときに美恵が待っていたのは、十六夜が先に美恵に連絡していたんですよ。なっ、十六夜。」
そう言うと十六夜が
「はい、そのとおりです。前もって美恵様に連絡しておきました。改めまして、初めましてワグネル様。よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
どこに向かって挨拶をして良いのか分からず、なんか、ぎこちないワグネルだった。
「と、まーこんな感じで色々気が付いてやってくれるんです。いつもありがとうね。十六夜」
「もったいないお言葉です。」
そんな会話をワグネルはポカーンと聞いていた。
「それで一般男性のレベルがいくつぐらいなのか聞いたんですよ。」
「なるほど、それででしたか。確かに私は昔、冒険者をかじったことが有ったんですよ。でも、途中で断念しました。魔獣が苦手で止めたのですよ。それでも店を開くと、こうやって危険な目に合うのを覚悟で仕入れをしているなんて、不思議なものですよ。」
「今回は大変でしたね。」
話をぶり返して悪いなと思いながらも言ってしまった。
「そうですね。今回は酷かった。普段でも偶に夜襲は有るので、冒険者を護衛に雇っているのですが。ゴールデンニードルベアを見た瞬間にもう駄目だと思いましたよ。今回お願いしたのはランクB冒険者4人で、討伐依頼なら多分4人いれば倒せた思いますが、護衛の野営時になると遭遇時からハンデが有りますからね。そう思うと今回は奇跡でした。助けに来てくれたのがヒロタカさんで。」
そんな話をしていると奥の部屋からワイワイガヤガヤ、声が聞こえてきた。




