幕間2:理想郷
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拙い文章ですがお読みくださりまことにありがとうございます!
「ちょっと待ってよ、本気なの!? 見つかったら逮捕されるよ!!」
「逮捕?? なんだそれは。バレなきゃ大丈夫だって!」
おいおい、その自信はどっから来るんだ? でもこの世界には警察とかは居ないようだから捕まることはないな。もしも見つかったらリーザ達には一生軽蔑されるぞ。
「ふっ、エノムくんは若いな。彼女らは俺達に覗いて欲しいのさ。ここで覗かないのは彼女らに失礼だよ」
「そうそう。お前だってマイアやメルフィの裸を見たいだろ。男なら皆そうだぜ」
「いや、そりゃあ……見たいよ。でもリーザもいるぞ。一緒に温泉入ってるんだから」
「!! ああ! そうだった。お前らリーザは見るなよ!!」
結局覗くのかよ。いや見るでしょ、どう考えても。
「よし、じゃあ行こうか。早速マイアさんにメルフィさんのあの豊満な胸を拝めるとはね。さっきのドレスアップした彼女らの胸元を見たかい? 零れ落ちそうだったじゃないか」
「ああ、けしからん。あれはけしからん。早く拝みたいぜ」
おい、マルス。仮にも勇者を名乗るつもりなんだろう? 見つかったら勇者から一気に変態だからな。
そう言いながら俺達の足は女の子達が泊まる別館へと向かって歩いていた。
「それにしてもエリオって凄い美人なんだな。びっくりしたぜ。なんであんな騎士みたいな格好してるんだ? もったいない。胸はまだ発展途上のようだったけどな」
「君知らないのか? エリザベスさんはあのエアリア・ハーティスの実妹なんだよ。今回はエアリアさんには内緒でゴブリンロードの討伐隊に志願したようだけどね。最近あのゴブリンロードが暴れ回っていたようだからそいつを倒してエアリアさんに認めてもらいたかったんじゃないかな」
「そうなのか!? 道理で綺麗な分けだな、まさか【剣聖】の妹だったなんてな」
【剣聖】だって? エリオはそんな人と俺を戦わせようと思ってたのか? 俺は戦闘民族じゃないんだ、絶対やだぞ。
「まあ、結局はエアリアさんはお見通しで親友のメルフィさんに護衛を頼んだんだ。これ、内緒だよ。俺はギルドマスターに言われて今回の依頼に参加したんだけどね。普段は王都のギルド支部で活動してるんだ。近くに来るようなら是非寄って行ってくれ」
「ああ、必ず行くぜ。何しろ俺達は死線を共に潜り抜けた戦友だからな」
おーい、お前ら何時の間に戦友になったんだ? これから女風呂を覗きに行こうとしてるのに格好つけられてもなあ。握手止めろ、変だぞお前ら。
「よっしゃ、あそこだ。あの湯気は間違いない、かの理想郷シャンバラだ。さあ、あの崖を登ろうぞ」
「よし、落ちるなよ君たち!」
「ええ?? この断崖絶壁を登るのか? そんな体力あるの二人共!?」
待て待て、この高さは30メートルはあるんじゃないか? あの戦いの後によくそんな元気あるな! まあ、俺も昇るけどさ。
誰も女風呂覗けないようにこんな崖の上に造ったんだろうな。女性は宿から直接行けるから問題ないだろうけど。覗く方の身にもなってくれ。
そして俺達は三人でこの絶壁の壁を登り始めた。これは正に命綱なしのロッククライミングだ。
それに落ちて死んだらこんな不名誉な死に方ないぞ。
間違いなく女風呂覗をこうとして壁登って落ちて死んだんだってなるぞ。
「おい、お前ら大丈夫か??」
「くっ、君こそ人の心配してる余裕あるのか? もし俺が途中で力尽きるようなら俺の屍を踏み越えて行って欲しい。俺がダメでも誰かがあの理想郷へ行ければそれで俺も報われる」
「馬鹿野郎、弱音を吐くな! 皆であそこに行くんだよ! 一人でもかけたらそれは俺達の敗北を意味するんだぞ!」
おーい。青春ドラマみたくなってるぞ。でもあと少しだ。ここまでする奴らがいるとは宿側も想定外だろう。普通はこの崖を前にしたら諦めるからな。
よし、あそこに手を掛ければもう頂上だ! よし、俺が一番だ。他の2人はもう少しだ、頑張れ!
俺は腕も足もガクガクになりながらやっとのことで崖を登り切った。そして岩陰から湯気の出先を確認する。やったぜ、女湯の露店風呂だ!!
つ、遂に拝めるぞ!! さあ、ありのままの姿を俺の前に晒すんだ! おお、い、いる。女の子達の声が聞える。くっそ、湯気が邪魔で良く見えないぞ。
「うわあ、マイアさんもメルフィも大きいですねぇ。リーザさんもかなり大きいです、羨ましいな」
エリオの声だ。大きい? もちろんあれのことだな、ぐっふっふ。
「エリオさんも凄く綺麗な形してるし肌もすべすべで透き通るような白肌で本当にお姫様みたいね」
おお、リーザだ。綺麗な形? もちろんあれのことだな、ぐっふっふ。
「私も大きい方だけどマイアさんには負けましたね。私ショックです」
「マイア、どうしたの? さっきからなんだか元気ないよ?」
「いや、ちょっと逆上せたのかもしれないな。ちょっと向こう行ってくるよ」
「!!!」
げげっ、マイアがこっちに来る!!
(おいっ、エノムどうした! 見えたのか?? マイアやメルフィの裸は見えたか!?)
(エノムくん! 早く教えてくれ、彼女達はいるのかい!? もう少しで僕らもそこに辿りつける!!)
(ストップ、ダメダメ!! ヤバい、見つかりそうだ!! そこで止まって!!)
「…………」「…………」
「じゃあなエノム。俺らは戻る」「このことは口外しないでくれ」
(おいっ、そんな戦友だろ! 俺だけ残してって、帰りはゴキブリ並みに速いじゃないかよ!)
「え、エノム!? まさか、そんな? ここは女湯なのに」
「!!??」
うわああああ!! マイアだあああああ。当然だけどやっぱり裸だあァァあああああ!!
プルンプルンのメロンが二つあるぞおおお!! しかも大事なとこも見えちゃってますウケドおおお!
「そ、そんな……エノム」
ああ、終わった。俺の冒険もここまでだ。せっかく相棒のレーヴァともこれからだってのに俺にはもうその資格すらなくなった。あの時の冗談だった『魔眼野郎の最低チカン生活』が幕を開けてしまった。
ここでマイアに叫ばれたら俺は袋叩きにあうのか??
「あたしはもうエノムの事しか考えられなくなってしまったのか。こんな所にまでエノムの幻覚が見えるなんて」
(え?)
「さっき、エノムにドレスが似合ってるなんて言われたぐらいで顔も見ることが出来なくなるなんてね。自分でもびっくりするよ。あたしは心底エノムに惚れてしまったよ」
(……ええ?? まじか、マイア!! でも俺のことを幻覚と思ってる? もっと見たいけどこれ以上いるとヤバい。けどもっと見たい!! どうする??)
「ねえ、マイア。そっちは景色いいの? でもあんまりそっちに行くと誰かに見られちゃうかもしれないよ」
(うわっ、リーザも来たっ)
「リーザ、こっちからの眺めはすごいよ。誰にも見えないから来てごらんよ」
(今だ、闇に紛れて逃げよう!!!)
「ほら、どうだい。いい眺めだろう? やっぱりさっきのエノムは幻覚だったね」
「え? エノムさんがどうしたの?」
「いや、なんでもないよ。リーザ、あたしの為に来てくれて本当に感謝してるよ」
「もう、何回も言わないでよマイア。でもよかったね、マイア」
「ああ、ありがとう。父さんと母さんも感謝してるよ」
── 俺は死にもの狂いで下まで崖を降りた。マルスとシリウスが隠れて俺の様子を伺っていた。
お前ら戦友とかなんとかいって土壇場で逃げたよな?
「お、おい、どうなったエノム? 見つかったか」
「エノムくん、もちろん俺達のことは言ってないよね?」
「……大丈夫だった。湯気で何も見えないし、向こうもこっちを見えてなかったよ。やっぱり悪いことはするもんじゃないな」
「だ、だよなあ。俺達は一応勇者御一行だし、覗きなんてする分けないよな」
「そうそう、疲れたから早く部屋に戻って休もうかな」
そして俺達はこそこそとそれぞれの部屋に戻り、俺は久しぶりのふかふかのベッドで眠りについた。
と、思ったけどマイアの体が目に焼き付いてなかなか寝付けない夜だった。
「うーん。でも、やっぱり楽しいな異世界」
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