第22話 召喚状をゲット
二章に突入しました! これからの新しいエノムの冒険をよろしくお願いします。
「エノム殿、これは国王様直筆の召喚状なのですぞ! それがどのような意味があるのか少しはお考えになって下され!」
俺にガミガミと苛立ちながら説教しているのはこの街の自治会長らしい。折角の楽しい団欒を邪魔してくれた上にこの怒鳴り声だ。俺も流石に苛ついてくる。
「だからなんで俺がそのバーティッド王って人に呼ばれたからって直ぐに行かなきゃならないんだよ。とにかく嫌だよ」
── 俺達は白のグリフィン亭に一泊した後、オロビアの村のアルバスさんに皆でお礼を言いに行くことにしていた。
皆で帰り支度を済ませロビーでくつろいでいると慌ただしく初老の男が俺を訪ねて白のグリフィン亭にやって来た。
その初老の男は昨日の祝賀会にもいたらしい。俺は握手をして話までしたらしいが全然覚えてない。
それでその自治会長がここに来た用件がその召喚状だ。
しかも差出人はバーティッド・ルディ・キスタック13世とかっていうこの国の国王らしい。異世界といっても国もあるし規則や規律、歴史なんてもの当然ながらあるわけだ。
まったくそれでも昨日の今日で休む暇もない。その上、国王なんて冗談じゃないよ。
「エノム殿。何度もいいますがここタリナムの街はラザ・ジュエル王国に属している自治州の一つなのです。これは我が国王からの呼び出し状なのです。 しかもエノム殿をご指名しておりますから背けば反逆者としての烙印を押されることになるのですぞ」
「何回も言わなくたってわかったよ」
「それでは頼みましたぞ。早急に王都に向かって下され」
そう言い残して自治会長は帰って行った。
ああ、面倒なことになった。俺は国王に呼ばれて『あれをやれ、これをやれ』と命令されるようなどこかの勇者みたいな生活は絶対に嫌だ、冗談じゃない。
そんなのはこの世界の勇者さまがやってくれ。俺はこの世界を楽しみたい。やっとあのダンジョン生活から解放され魔剣のレーヴァとも相棒になれた。
しかも!! マイアは俺に好意を持ってるそうじゃないか!
昨日お風呂を覗いた時にマイアが自分で言ってたんだ。しかもマイアの裸を俺だけが見たんだよな。あの裸体は今でも目に焼き付いて離れない。まさに芸術品のようなプロポーションだったよ(注:最低野郎です)
「それにしても国王自らのご指名とは凄いことですね」
一緒に話を聞いていたエリオが言う。エリオはたしかガルバリア帝国の騎士団の福騎士長だったな。福騎士長なのにエリオってば凄い可愛いんだよ。おそらく俺よりも年下だし、今だってこの容姿で紫髪のツインテールとフリルのドレスは反則級だ。騎士の鎧も似合うがこっちの方が断然いい。
もうエリオとメルフィさんは帝国に帰ってしまうから滅茶苦茶残念だ。
今回は国益とかには関係なくギルドを通して個人的にエリオとメルフィさんがゴブリンロードの討伐隊に参加したんだって。討伐隊はシリウスを含め王都からは5人派遣されていたんだ。
一応、ラザ・ジュエル王国とガルバリア帝国は同盟国らしいから機会があればまた会えるだろうけどさ。
メイド服の受付嬢兼冒険者のメルフィさんも魅力溢れる女性だよなあ。あっ、こっち見た?
「バーティッド王と言えば武神の異名を持つ最強の王なんだよね。私達の帝国ギルドでもその武勇伝は今でも畏怖されているわ。もしかするとエノムくんと手合わせしいのかもね」
「ええ? メルフィさん冗談止めて下さいよ。益々会いに行くのが嫌になってきましたよ」
「今は丸くなったていう話だから大丈夫よ。それにしてもよく今回の件がこんなに早く王様の耳に入ったわね。それはちょっと驚きね。まさかシリウス君?」
メルフィさんはさっきから黙って様子を伺っていた魔法使いのシリウスにチラリと視線を向けた。
シリウスは少し俯きそれからやっと喋りだした。
「すまなかった、エノムくん。実は昨日のうちに王都のギルドに報告したんだよ。それがまさかバーティッド王にまでその話がいってしまうなんて思いもしなかったんだ。でも勘違いしないでくれ、これは冒険者ギルドで生きている者としては当然の義務なんだよ」
「そうだったの。いや、そうなら仕方ないよね。別にシリウスを責めてる分けじゃないから。でもまいったな」
俺一人で王都に行ってその武神と言われる王様に会うだって? よくない事が起きる予感しかしない。せめてマルスも呼ばれたんだったら心強かったけどな。そしてマルスが今までにないくらい真剣な顔つきで話かけてきた。
「なあ、エノム。ここは俺達に任せて王都に行ってこいよ。お前がいなかったら正直、この街も俺達もゴブリンロードと配下のゴブリン共に全滅させられてたかもしれない。お前がいたからこそ今こうしていられるんだ。お前にはその力があるし、これからもその力で沢山の人をお前なら救える。それにきっと王様はお前に褒美をくれるんだと思うぜ? それだけの功績を上げたんだからな」
「でもなぁ、俺なんて最後にゴブリンロードに止めを刺したくらいだしさ」
「それになエノム。バーティッド王の娘、つまりラザ・ジュエル王国の姫君のシャロン・ルディ・キスタックの美しさは国宝と言われるくらい美しいらしいぞ。きっと王都に行けばその美姫にも会えるぞ」
「!! ほ、本当かマルス? ちょっとそれは見て…………」
うっ!! マイアとリーザが俺の方をジッと見てる。マルスめ、余計な気を使ってくれてありがとう!!
結局は行かなくてはならないことは初めからわかってたけどさ。
ここで行くとか言ったら俺がそのシャロンとかって姫さまに会いたいから行くみたいじゃんか。
マイアも俺の方をあまり見ようとしない。俺もマイアを見ると昨日の姿が頭に浮かびあがってしまう。
ああ、もう一度じっくり見たい。
「なあ、エノム」
マイアがやっと俺を見ながら話かけてくる。顔がほのかに赤かった。俺はおそらく耳まで赤いだろう。
「どうしたのマイア?」
「う……うん。王都に行ってもオロビアの村に戻ってくるんだろう?」
「え? うん。そのつもりだよ。アルバスさんにもお礼を言いたいし、皆にもまた会いたいからね」
「そうか、ならいいんだ。必ず戻ってきておくれよエノム」
マイアの言葉とその表情に俺はドキッとした。ああ、もう一度皆に会いたいのは本当だ。必ず戻ってくるよ。
「エノムさん、また会えるよね。また一緒にお喋りしてお茶したり食事したり色々しようね」
「うん、今から楽しみだよリーザ」
リーザからの色々しようっていう言葉で俺は必ず戻ってくると魂に誓った。勿論、リーザは変な意味で言ったんじゃない。でも俺はその言葉だけで死んでゾンビになろうがここに戻ってくる!
「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。あそこで自治会長が俺に目を光らせてるし。じゃあ、行ってきます!」
「おう、エノム! お前なら何でもやれるから頑張れよ! 待ってるぞ」
「エノムさん、気を付けて行ってらっしゃい」
「今度は帝国で会いたいですね。お姉ちゃんもきっとエノムさんと戦うっていいますから。楽しみです」
「そうね、エアリアに今回のこと教えたらエノムくんを探しに行っちゃうかもね」
おーい帝国組のお嬢様方、聞かなかったことにしておくよ。俺は逃げるからね。
「エノム、ありがとう。エノム、あたしは変わろうと思う。エノムが帰ってきた時にびっくりさせるよ」
「マイア、楽しみにしてるからね。それじゃあ皆、またね!」
そう言って俺は一人、いや、魔眼術師エノムは魔剣レーヴァテインと共にラザ・ジュエル王国のバーティッド王の待つ王都へと出発した。
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