表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/44

(23)パチンコ

 

 2月22日、日曜の朝。

 対象者である村井俊司に関する依頼人から得た情報をもとに、行動に移す。

 村井は大抵、徒歩か電車移動のため、私の愛車を30分ほど離れた駅近パーキングに、駐車した。


 アパートの見える電柱の影から見張り始めたのは、朝8時過ぎ。彼の日曜の行動パターンは、午前中はパチンコが主。情報通り、9時前にアパート二階から出てきた。入手した写真で、対象者確認。尾行の開始。

 今日もお気に入りのミリタリーコートを着ている私は、フードをかぶり、電柱間隔二本分ほどの距離を保ちながら、追った。


 ターゲットは駅方面に歩き、電車移動。三つ先の駅で降車。徒歩5分ほどのパチンコ店敷地に入った。既に15、6人ほど並んでいる店舗入口手前の列後ろに、立った。


(寒いのに、パチンコのために並ぶんだぁ。依存症が多いと聞いたことあるけど……何が楽しんだろう?)


 パチンコに興味のない私は、そう思いながら敷地外の自販機を盾にして見張り続ける。列に並ぶ人が徐々に増えた頃、私も並んだ。闇嘔あんおうを行なうための場所の候補の一つが、パチンコ店内だからだ。

 依頼人の情報では、約三、四時間パチンコをし、ランチ後、午後の行動があるとのこと。その行動パターンは、パチンコに負ければネットカフェ、勝てば風俗店……が多いらしいため、その二ヶ所での闇嘔は困難と判断。


(でも、彼女は何でこんな男と一度は結婚しようと思ったのだろうか?)


 疑問だった。

 対象者の日曜の夜は、場所が定まっていない。ただ、友人や知人と飲食し、0時頃まで呑むらしい。店舗にもよるが、闇嘔場所の候補になる。最終的には、酒酔いして帰宅する路上での闇嘔を、想定していた。


 10時の店舗オープンと同時に、列が前に動き出す。何度も言うが、パチンコ店に入ったことすらない私は、ゲームセンターの雰囲気をイメージしていた。でも、違った。


(何でこんなに派手なの。奇麗だけど、こんな贅沢さはいらないでしょ!)


 少しムっとしたのが、正直な気持ち。

 遊ぶ機械がずらっと並び、その間に椅子の行列が二列。同様のセットがいくつも並んでおり、どこも同じに見えるのだから、困惑しないわけにはいかない。しばらくして、ターゲットを探した。四列目奥側の椅子に座り、縦長の機械に向かって、何やら腕を動かしている村井を発見。


 彼に近づく前に、他の客のパチンコする動作で、勉強。お金を入れる所、カードを差し込む所、機械を操作する所、などなど。後は機械をガラス越しにジッと見ている。それだけの動作で、(パチンコって暇そうね……)と感じた。

 私はパチンコもせず、彼の姿が見える所で遠目で見ていたが、15分もしないうちに席を立った。


(ぇっ、もう終わり?)


 違った。彼はキョロキョロ機械を見つめながら、別の席に座る。


(あぁ〜、席って自由に替えられるってこと、ね!?)


 しばらくして、制服を着た若い女子店員が、私を不思議そうに見ていることに気づく。


(そりゃぁ、そうよね。ここで何もしなきゃ、普通怪しむわね。……おまけに……コート、暑くなってきた……)


 思い切って、その女子店員に声を掛ける。彼女は笑顔を作ったが、頬も引き攣っており、目も笑ってない。


「すみません。実は二、三時間暇つぶしでパチンコしようと思ったんですが……実は初めてで、他のお客さんを見て覚えようかと。もしお忙しくなければ、遊び方を教えて頂けませんか?」


「そうだったんですね」


 安心したのか、彼女の目が笑い、優しく応えてくれる。


「大丈夫ですよ。では、先ずはコチラへ」


 素人相手に一から丁寧に教えてくれる彼女。玉を買い、試し打ちまで付き合ってくれた。一通り覚えた私は、彼女にお礼を言い、そしてターゲット村井の座る同列の離れた席に座り、打ち始めた。

 チラチラ彼を意識しながら、適当に打って30分ほどした時、チャンスが向こうから訪れる。村井自身から、私の席の二つ隣りに移動してきた。さらに10分ほどした時、突然私の操作する縦長四角の機械が、派手な音楽とネオンで賑やかに。何やら銀玉がドンドン、出てきた。


(何これ? 当たり?)


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ