(24)ターゲットにお礼
賑やかさが止まらない。
(えっ? えっ?)
一瞬、ターゲットへの意識を、その機械に向けてしまった。
「なんや、姉さん、大当たりしとるやないかぁ」
その声の主に顔を向ける。村井が私の斜め後ろに立ち、私の台を見ていた。驚き、機械のハンドルという丸っこい部品から手を放す。
(しまった!)
「手ぇ放したらあかん、何しとるんや」
私が操作していた部品を持ち、勝手に打ち始めた。
「ほら姉さん、ここ持ちいや。確変しとる時は、この辺にジャンジャン打ち込むんやで」
「あ、はい」
私は顔を背け、彼の持つ部品に手を出し、彼の手と替わった。彼の言う通りにしばらく打ち続けるが、その大当たりとやらが続いたお陰で、銀玉が出過ぎたようだ。でも、私にはその有り難みが今一歩分からなかった。何故なら、それが換金されることをこの時は知らなかったからだ。
私の傍にいた村井は、3分ほど私の台を覗いていたが、
「その調子やで、姉さん」
他席に移動。他の列だったが、店内の壁に一部ミラー素材のインテリアがあり、その反射で彼の居場所が、この席からも把握出来た。
私の台も落ち着いた頃、飽きたので終了。機械からカードを受け取る。そこでの思いつき。村井のいる席へと向かう。
「先ほどはありがとうございました」
今度は私が彼の後ろ斜めに立ち、声を掛ける。男は私のほうに首を動かし、目を向けた。出来る限りの笑顔を作り、カードを彼に差し出す。
「これ、お礼です。使ってください」
「何のマネや」
少し不機嫌になりそうな表情。
「実は私、こっちの人じゃなくて。用事があって来てるんですが、予定まで余裕があったので、時間潰しにやってただけなんです。あまりコチラに来ることはないんで、このカード持ってても仕方ないですし。だから捨てるより、お礼に差し上げたほうがいいかなぁって」
彼は表情を変えず、黙って私を見ている。
(わざとらしかったかな)
手を引こうとした時、男がつぶやく。
「ホンマにええんかぁ?」
「えっ、ええ、いいですよ。楽しませてもらったので」
すると、彼の表情は和らぎ、口角が上がった。そして私のカードを二本指で受け取る。
「んじゃ、折角なんで。おおきに」
「どうぞどうぞ」
彼のカードを渡した後、すぐに右手を彼の前に出した。
「ん、何?」
その右手をチラ見し、不思議そうな視線を私に向けた。
「私、そろそろ行きますね。また今度お会い出来たらいいですね、という意味で握手しましょっ!」
「お、おお〜」




