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1、布団
僕には、大好きな祖父が居た。
テストで百点を取るだとか、運動会で1位になると、必ず祖父は褒めてくれた。
すごいよ、えらいぞ――って。
畑仕事でゴツゴツした大きな手のひらで、頭をなでてくれる。
とても大きな人、強くて温かい人、僕は大好きだった。
それでも高校に入ったころになると、祖父の背丈を追い越した。
それどころか、祖父は目にするたびに背中が曲がり、小さくなっていった。
言葉にできない寂しさに襲われた。
祖父がかつてのように「えらいぞ」と褒めてくれることも、一層に寂しさを感じさせた。
僕は祖父の家を避けるようになった。
幼い頃は毎日のように通ったのに、盆と正月以外は訪ねなくなった。
僕が大学入学を期に一人暮らしを始めて、新生活に慣れた頃のこと――祖父が倒れた。
急いで地元に引き返したけど、最期の時には間に合わなかったんだ。
僕は、なんて事をしてしまったんだろう。
なぜ祖父を避けてしまったんだろう。
あの時抱いた寂しささえなければ、もっと傍にいられたろうに――。
考えても虚しいだけだった。
「仏様を棺に」
葬儀屋の人が言った。
僕は、父の隣に並び、寝具に手を伸ばした。
その時、色々あって、祖父にかけた布団がふっとんだ。
ー布団 完ー




