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第三章 天才の定義

ティファ先生の糾弾の後、俺の学院生活は一変した。あの授業の後俺が筆記試験満点のその本人という噂が凄まじい速さで広まった。学生の噂話が広がるスピードはとんでもないものだ、既に1学年どころか学校中に広まっているようだった。今まで俺に向けられる視線と言えば見下すような冷たい視線だったが、今は見下すというより好奇なものをみるような目を向けられている気がする。

「んで、なんのようですか。この平民に」

「ちょっとアンタに、聞きたいことがあって」

俺は昨日、太っちょの貴族に絡まられた時のベンチに腰を掛ける、そして顔を上げた先には偉そうな、生意気そうな人が立っている。その立っている人物が違うということ以外、まったく同じシチュエーションだった。

「なんだよ、そんな話すことなんか」

「アンタ、筆記で満点ってホント?」

俺の言葉がまだ言い終わってないのに、割り込んできた。

「...なんども確認したが、本当らしい。偶然取れたものだけどな」

「あの試験が偶然で満点取れるわけがないでしょ!」

俺だって謙虚な姿勢をモットーとしている聖人君子ではない、満点を取ってどうだ!と自慢したい気持ちだってないとは言わない。しかし、プライドの高い貴族らに対し、しかも平民がそのようにイキり散らかしてみろ。直後に四方八方から飛んでくる魔法で俺は死ぬ。だからこのように偶然、たまたまだと言っているのだが、それでもシーナの腹の虫は収まらないらしい。

「何が不満なんだよ、九割弱だって恥じるような点数じゃないだろ」

「点数自体は恥じているわけではないわ。順位で平民のアンタに負けたことに恥じているの」

「そう...」

「ノアルエール家の私が、平民より学がなかったなんて一生の恥よ」

「学がないって...ちなみにお前、どの問題でシクったんだよ」

よほど自分の頭に自信がありげなシーナがどの問題で躓いたのか、少し興味が湧いた俺はそう聞いてみた。

「え...あの大問四の、魔法工学の問題」

自分が解けなかった問題を言うのがプライドに触るのだろうか、一瞬言うのをためらった。

「大問四の魔法工学...ああ、あの問題か。まぁ確かにあれは中々しんどい問題だったかな」

俺は数か月前の試験中の回想をして、問題の内容を思い出す。

「...満点って事は、アンタはあの問題が分かるって事よね」

「まぁ、分かるが」

「...教えなさい。あそこだけ解答を見てもなんでその答えになるのかさっぱり分かんないの」

「えぇ...俺なんかより先生に教えてもらえばいいだろ」

「アンタが本当に私より頭が良いのか、確かめるのも兼ねてるのよ」

「はぁ?...仕方ねぇか。ここじゃ教えるの無理だし、空き教室行くぞ」

正直しんどいが、ここで断っても後々拗れるのは目に見えている。ここで一度きちっと対応しておいた方が良いと俺は判断した。勉強場所の定番と言えば図書館であるが、俺が図書館にいくとチラチラと見てくる気に障る視線、ザワザワと聞こえてくるこそこそ話で勉強どころではない光景が余裕で想像つく。そこで今はクラス数の関係で使われていない空き教室に目を付けたのだ、ここのならなんのジャマも入らないと俺は踏んだ。俺とシーナはすぐさまその空き教室に向かい、思った通りに誰も居なかったことに安堵し俺とシーナは隣り合って座り試験問題の紙を広げた。

「んでまず、この問いの重要な点は...」

俺は満点だったこともあり解答の冊子を初めて読みこんだのだが、解答書には本当に解答しか載っておらず、その答えを導き出す過程が記載されていないのであまり役に立つものではなかった。なので俺は俺が当時解いたやり方をまんま解説してやった。

「そして、その値が出るだろ。したらその値を~」

「ふんふん、なるほど?」

ノアルエール家の才女と言われるだけあって流石に筋が良い、かなり難しい事をペラペラと結構なスピードで解説しているのだが躓くことなく飲み込めている。一通り解法を教えてやった後、俺は用紙の裏側に似たような類題をささっと書いて本当の解説を理解したのか試してみた。

「んー、まずこうするでしょ...」

独り言をつぶやきながら俺の問いに挑むシーナの様子を、俺は頬杖を突きながら眺める。さっきも席は隣だったが、今は教えている事もあってさっきよりかなり近距離である。奇跡の出来ともいえる可憐な顔立ちには何度だって思わず見とれてしまう。ここまで近づいて初めて気づいたが、キンモクセイのような甘酸っぱい良い匂いもする気がする...。俺がそんなちょっとキモいことを考えているうちにシーナが解けたらしいので、その紙に目を通す。結果は見事正解、なんと一度の俺の解説だけで完全に俺が教えた解法をものにしたようだった。 

「マジか、正直一発で理解できるのは思わなかった」

「ふふん」

シーナは誇らしげに、ふんすと胸を張ってドヤ顔をする。しかし、張るほどの立派な大きさは無い。本人はとっても言えないが歳不相応にぺったんこ、という形容が一番似つかわしいだろう。神が魔法力、頭脳、容姿と次々と才能をつぎ込み、このままでは完璧超人が生まれてしまうと最後に胸の大きさで慌ててバランスを取ったのか?などと考えているとシーナがばつが悪そうな表情で俺を見つめてくる。

「認めたくないけど...「今は」アンタの方が頭では一枚上手ね...」

今は、のイントネーションが強調されていた。いつかは絶対超えてやるということだろうか、よほどの負けず嫌いだな。

「アンタ、明日からも教室では私の隣に座りなさい」

「はぁ?お前あんだけ俺の隣が不服だったじゃねぇかよ」

「あの時は、ただの平民が私の隣にいるのが気に食わなかったの。でも、実際アンタは私が持っていないモノを持っていた。そんじょそこらの貴族より、平民だけど利用価値があるやつが近くにいたほうが良いわ、あんまりないと思うけど、授業で分からなくなった時には辞書代わりに色々聞くから」

もうめちゃくちゃだ、隣になる人を利用価値で決めるとか初めて聞いたぞ。

「何言ってんだよ...あっ、お前さては」

「あによ」

「お前、席隣になってくれる友達いないだろ」

「はぁ?友達くらいいるんですけど!」

「朝一緒にご飯食べてたやつか?あいつは別クラス、少なくともこのクラスには友達いないだろ」

「だ、だから何だって言うのよ」

ついぞ、認めたな。公爵という位の高さだけで近づきづらいのに、負けず嫌いのプライドが高い高飛車娘ときた、こいつの友達は相当人を選ぶだろう。先程の朝食を一緒に食べてた友達も、学院入学前から仲良くしてくれていた友達なんだろう。

「アンタだって、友達がいないじゃない」

それも、また事実。平民だった俺は旧知の知り合いの貴族なんていないし、アテネ先輩は少し喋ったけど友達ではないし…

「い、今からお前がとm」

「あ、言っとくけどアンタと友達みたいに馴れ合う気はないから。利害が一致したときに利用するだけだから」

多分、その利害はシーナのものであり、俺の利害は考慮されていないだろう。なにはともあれ、入学して一発目の友達作り、失敗しました。一瞬でも、ただの平民が公爵家の娘とお近づきになれると思い上がったの失敗だった。俺がため息をついているとシーナはさっさと席を立ちあがり去ろうとするので、俺はその背中に声をかける

「おい、人に何か教わった後に言うことがあるんじゃないか?」

「...まぁ、助かったわ」

パタン、とドアが閉まる音が一人だけ残った教室に寂しく響いた。


シーナが去った後すぐに俺も空き教室を後にし、外に出ると既に夕景に染められていた。俺は寮棟に向けてとぼとぼと歩き始める

「はぁ...疲れた」

今日も昨日も、人の視線に晒されてもう気が滅入っている。部屋に鍵が掛かっていないし、なにか盗まれていたらどうしよう。財布や形見は今携行してるし大したものはないが。

「いっそ俺が自分で錠を付けて...いやドアに穴開けんのはまずいか」

どうにかして鍵をつけられないか...と考えていると前を歩く人の背中が見知った人のものに気づく。艶がかった美しい桃色の髪をポニテでまとめている、アテネ先輩の後ろ姿だ。俺は駆け足で近づいていき、声をかける。

「先輩、おつかれさまです」

「あ、カイト君。おつかれ」

平民がーと魔法学院に来てからさんざんの扱いなので、それを抜きに普通に接してくれるだけで安心感を感じている俺がいる。

「生徒会の仕事は、忙しいですか?」

「んー、新学期が始まったばかりだし今はそこまでかな。もう少ししたら魔法大祭があるから一気に忙しくなるんだけど」

魔法大祭というのは、学院と国の共同主催で行われる、学院内の生徒同士で魔法の腕を競い合う行事である。体育祭の魔法バージョンと言ったほうが分かりやすいか。アリア王国の首都である「ベテル」郊外にある巨大なコロシアムを借り、観客も呼び大々的に開催される。基本的に秘匿性が高い魔法学院が一年に一度、唯一学外の者を受け入れる機会ということで国中の人気は高い。まぁ、魔法がさっぱりな俺は応援団確定だがな。

「それはそうと、カイトくん一気に学院内の有名人じゃん。生徒会のメンバーたちも噂してたよ」

「いやー、普通に恥ずかしいんで早く収まってほしいですけどね」

「始めて会った時、筆記満点だって言われた時正直見栄張ったのかなと思っちゃったんだけど、本当だったんだね」

「嘘なんかつかないですよ。満点なのも偶然だし」

「偶然って、天才の行き過ぎた謙遜は凡人にとって嫌味よ?」

「天才だなんて、そんな」

隣を歩きながら、何気ない会話を弾ませる。桃色の艷やかな髪がそよ風に吹かれてたなびいている姿に目を奪われる。失礼だが、女の子の容姿をカテゴリ分けするならシーナは「可愛い」、アテネ先輩は「綺麗」カテゴリに分類されるであろう。こんな美女が超優秀なカリスマ生徒会長、出来すぎである。先ほどアテネ先輩は俺の事天才と言ってくれたが、俺からすればシーナやアテネ先輩みたいな血統や容姿やカリスマと多才な才能を持つ人こそ天才だ。

「ねぇ、今日の朝のニュース見た?最近「レボルシオン」のテロ活動が増えてきて怖いわ。流石に学院内に手は出さないだろうけど...」

話題転換にしては重いテーマをぶっこんできて、俺は言葉に詰まる。レボルシオンと言えば、超侵略的な帝国主義を掲げる過激派テロ組織だったか。暴力による脅迫は以前から行われていたが、最近はその行動がさらに過激さを増しており有力貴族の屋敷を爆破したり、令嬢を攫ったりしているらしい。政治に指一本触れる事のない平民の俺は以前までは「へーそんな怖い組織が、まぁ王宮が何とかしれくれるだろ」と他人事だった。事実、テロの対象になるのは政治にかかわる貴族階級だけで平民が狙われることは無かったから。だが、学院に入った今そう楽観してはいられない。俺の周りには貴族しかいない環境だし、そのテロ行為に巻き込まれる可能性は十分にあるのだ。

「流石に学院に手出すのはリスクが高すぎません?」

学院内の人間は、勿論全員ウィザードであり一人一人が大なり小なり戦闘能力を保持している。そして単に凡なウィザードの集まりでもない。教師は勿論一流のウィザード揃いだし、中でも学年の超上位層の生徒には卒業後にアリア王国最強の戦闘部隊「独奏魔法騎士団」へ入団できるような強力なウィザードもいる。それに加えて学院の宝物庫には王宮に負けない数の魔宝具を保有している。他の国の魔法学院は知らないが、アリア魔法学院が保有している武力は小国の軍に匹敵する。いくら有力な貴族たちが沢山いると言っても、こんな化け物の巣窟に喧嘩を売るのは愚かとしか言いようがない。

「そうよね、学院内にいる限りは安全よね」

「そうですよ」

若干不安をにじませた声のアテネ先輩に、励ますように声をかける。気まずくなった俺はウィザード同士の間ではポピュラーな話題、学院が研究している新魔法の話題を振る。アテネ先輩も魔法に熱心な人だ、話題にノリノリで乗ってくれる。そうして残りの寮棟までの道中、会話を絶やすことなく歩いて行った。


「はぁ、みんな良いなぁ...」

だだっ広い学院の演習場で、俺は自分が一切持っていない魔法の才をないものねだりしていた。学院の入学三日目にして、早速魔法の実践授業が行われてしまった。記念すべき一発目のその内容は「魔法で岩石を破壊せよ」である。大きいものを破壊するほど評価は高くなる。しかも、ただの岩石ではない。魔法に対して強い耐性を持つ魔晶岩(ましょうがん)である。魔法学院は魔法の試し打ちに最適だと言って、この魔晶岩をわざわざ山まで行って採掘している。どんだけ金があんだよ、と心の中で突っ込む。

「ほら、ぼさっとしてないでさっさとついてきなさい!」

とぼとぼ、と力なく歩む俺にシーナは大声で命令する。結果の虚偽申告を防ぐために、実践授業はペアワークで行われ、それぞれ自分のではなく相方の結果を報告する。そして、そのペアはシーナである。俺をペアにした理由は「アンタなら何も記録する必要が無くて、楽」という理由らしい。ふざけんな、事実だけども、言っていい事と悪い事があるだろうが。しかし、強気に反論すると魔法でやられそうなのでやめておく。俺とシーナは演習場に無造作に置かれている魔晶岩の中で大きいのを探していた。

「これでいいんじゃね」

俺は適当に目についた、小さな子供ほどの大きさの魔晶岩を指さす。この大きさの岩を一撃で破壊できれば、十分評価を貰えるのだ。

「ダメちっちゃい却下」

早口に否定されてしまった。他の生徒らは演習場に入ってすぐそこらにある程々の大きさで満足しているというのに、まだ俺らは演習場を歩き回っている。演習場と言っても、平原の一部をそのまま利用しているので広さは大牧場並みなのだ。これ以上奥に行くと戻るのも一苦労だ。

「ほら!あれでいいだろ!ここまでで一番でけぇ」

俺は左前方にある、人の身長を二回りも上回る巨大魔晶岩を発見した。俺とシーナはそこまで駆け足で駆け寄る。

「うーん...まぁ、これでいいわ」

この大きさで、妥協なのかよ。この大きさ、平民の普通の家ほどあんぞ。

「こんなデカい魔晶岩壊せんのかよ。教師陣のウィザードでもこりゃ中々骨が折れるんじゃねぇか」

「ふん、アンタは私を舐め過ぎよ。生意気な平民にここらで私の凄さを見せつけてやるわ」

シーナは早速やる気満々らしい、杖を抜いて魔晶岩に対峙した。俺は巻き込まれるのを恐れて離れる。グチグチ言ってた俺だが、実はコイツの魔法を見るのは初めてなのでちょっぴり楽しみなのである。さぁ、我がアリア王国貴族の頂点に立つ公爵家、ノアルエール家の娘の魔法を見せてもらおうか。シーナは目瞑り、ふーと息を整えしばらくするとキッと岩を睨むように目を見開いた。

「『サンダー・ボルト』」

シーナがそういって杖を振った直後、青白い雷撃の矢が魔晶岩を上空から穿った。雷の速度は光速の三分の一ものスピードをもつ、杖を振ったと同時に俺の視界は雷光を捉えた。俺はその眩しさにたまらず目をつむり、しばらくしてから眼を開けるとそこには驚愕な光景が広がっていた。その直撃に当てられた魔晶岩は粉々に粉砕され、電熱で溶けかかっている。俺はその暴虐の稲妻が起こした現象を目のあたりにして絶句する。

「うっそだろ...この威力の『サンダー・ボルト』を詠唱破棄で?はは、人外かよ」

この瞬間、俺はシーナを自分と同じ人間だと本気で思えなかった。『サンダー・ボルト』は雷属性の魔法で、その中でも自然現象の落雷と同等の現象を引き起こす超がつくほどの高等魔法だ。しかも、それを詠唱破棄で。詠唱を破棄すれば魔法を即座に発動させることが可能だが詠唱した時に比べて出力、命中精度などが落ちる。これほどの高等魔法は、詠唱破棄せずに撃つのが基本だ。しない、というより普通は難しすぎて詠唱破棄ができない。しかし、その神業を今の前でこのシーナがやってのけたのだ。

「どう、私にもっと敬意を払う気になった?」

勝ち誇った顔で座り込んだ俺の前に立ちシーナが見下ろしてきた。魔法学院入学時点で、この実力。コイツは明らかに教育機関では扱いきれない領域にいる。アリア国内にとどまらず、世界中のウィザードを集めたってこんな芸当ができるほどのウィザードは10人いるかいないかだろう。そんな、限りなく魔法の極み所に君臨する一人が、まだまだ成長が見込まれる弱冠16歳の少女。こりゃ、ノアルエール家史上最高の天才どころの話じゃねーだろ。人類史上最高の天才まであるだろ。

「あーすげぇよ、とんでもない」

「私の凄さが分かったなら、それで良ろしい。ほら、とっとと帰るわよ」

シーナは座り込んでいる俺に背を向けて行ってしまおうとしたので俺は起き上がってそれについていく。

「なぁ、なんでお前は魔法学院に来たんだ?お前の腕なら普通のプログラムなんて受けたって意味ないだろ?」

「親にもそれは言われたわ。でも、私は学院発行のウィザードライセンスが欲しかったのよ。それがなきゃココに来てないわよ」

ウィザードというのは勝手に名乗れるものではない、ちゃんとした国家資格だ。ウィザードと認定されたときに、ウィザードライセンスという手帳型の証明書が発行され手にした時に始めてウィザードを名乗ることが可能になる。そのウィザードのなり方とライセンスには二つの方法、種類がある。まず一番ポピュラーな方法は、国が行っている認定試験を受験すること。これで取得できるライセンスが青いので「ブルーライセンス」と言う。もう一つは、魔法学院に入学すること。これで取得できるライセンスが赤いので「レッドライセンス」と言う。同じウィザードライセンスでも、その価値はレッドの方が遥かに高い。厳しい入学試験があることから当然、ウィザード全員が魔法学院を卒業しているわけではない。寧ろウィザードでも魔法学院には入学できなかった者が多数派であり、世の中のウィザードの大半は成人後に認定試験を受験し取得したブルーライセンスである。アリア国内では、魔法学院出のウィザードは全体の1割もいないとされるエリートだ。魔法学院に入学を許されたということは、青年期から高い魔法の才があったということ。事実、魔法学院の入学試験は王宮で行われてる認定試験より遥かに難易度が高い。そんな試験を15歳で、一発勝負で突破した者には晴れて入学が許されると同時にレッドライセンスが発行される。以上のことからレッドライセンスは、優れたウィザードの証明に他ならない。()()()()()。その例外が、俺。魔法学院に入学したからには、俺もレッドライセンスのウィザードとして登録されている。魔法がからっきし使えない、俺がだ。魔法がさっぱりな奴がレッドライセンスを持ててしまっている、制度崩壊も良いところだな。会話が一巡したところで、俺は空を見上げる。

「...もう夕日が?」

シーナの魔法に呆気を取られていた時はまだ日が出ていたのに、今では沈みかけている。思ったより時間が経ったと思った俺は時間確認のために掛けていた懐中時計を見る。そして、その針が指す数字を見るや駆け出した。

「やべぇ、もうこんな時間かよ!」

「ちょっと!なんで走り出すのよ!」

俺に釣られて、シーナも走り出す。

「先生が指定した再集合時間!ちんたら歩いてたら間に合わねぇんだよ!」

「そんなの、ちょっと遅れたって少し注意くらいで済むんじゃないの?」

「今日の実践魔法の先生、思い出してみろ」

「そりゃグランベル先生...あ」

「気づいたか!あの鬼先生の言いつけを破ってみろ、説教に加えて今日のお前の成績ナシにされるぞ」

事の重大さに気付いたシーナのギアが上がる。

「んもっー!なんでそんな大事な事早く言わないのよ!」

「八つ当たりすんな!そもそもお前が演習場の奥の奥まで行ってデカい魔晶岩見つけるって言わなきゃこんなふうになってねーよ!」

「それはアンタがついてくるのが、探すのが遅かったからでしょ!この役立たず平民!」

「そんなでかい声出して体力使うな、途中でへばったって運んでやらないからな!」

そうしてお互い叫び合って全力疾走した俺らは時間に間に合ったはいいものの着いた時には息絶え絶えになっており、グランベル先生に慌てて走ってきたのがバレて遅れたわけではないので今日の成績ナシはなかったものの「時間の余裕をちゃんと持て!」と説教を食らった。

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