CD
「南部君はどんなジャンルの曲が好きだい?」
「突然ですね。別に特定のジャンルを好んで聴いたりとかはしてないと思います。なんでそんなこと聞くんですか?」
「せっかくここに来てくれたからね。君が気に入りそうな曲が収録されているCDを貸してあげようと思ってね。でもそうか、特定のジャンルを好むわけではないのか......南部君はスマホにお気に入りの曲のプレイリストはあるかい?」
「ありますけど、どうかしましたか?」
「君さえよければそのプレイリストちょっと見せてくれないかい?」
「別に構いませんよ」
そうして俺は自分のスマホを先輩に渡して、先輩が俺のプレイリストを確認しているうちに棚にぎっしりとならべられたCDを見ていた。今思えばわざわざCDを貸してもらうんじゃなくて、スマホで調べればよかったのではないか?そんな考えが一瞬浮かんだが俺はすぐにその思考を畳んだ。きっとCDで音楽を聴くことに意味があるのだ。そして先輩は俺にCDの良さを知ってほしくてこんな提案をしてくれたのだろう。
多いな。これ先輩は全部聴いたのだろうか。
「すごい量だろ?」
先輩が声をかけてきた。俺のプレイリストを一通り見終わったようだ。
「ええ、これは全部水野先輩が?」
「いや、ここに今までいた先輩達のものもあるらしい。名前も顔も知らない人たちからの贈り物さ。なんかロマンチックだろう?誰かもわからない人と音楽を通してつながれる。魔法みたいだろ?」
らしいということは誰かからその話を聞いたのだろう。にしても知らない人からの贈り物か。確かにロマンチックだ。これもCDのいいところなのだろう。
「そういえば君、かなり親の影響を受けて育ってきただろ。最近の曲よりも上の世代の曲のほうが入っていたし」
まさか同じことを一日で二回も、それも違う人に言われることになるとは。
「君にはこのCDを聴いてみてほしい。いろんなジャンルの音楽が入ってるから気に入る曲が一個は見つかるはずさ。てか見つかってほしいお願いします!」
聴いたことのないアーティスト名だ。ちょっと調べて、、、
「この人たちサブスクを解禁していないんですね」
「そう!それもCDのいいところなんだ。CDでしか聴けない曲がある。それもたくさんね。あ!そういえば家にCDプレイヤーあるかい?なければ貸すけど」
「前も言いましたけどCDはいくつか持ってますからそっちも持ってますよ」
「ところで君はミスチルが好きなのかい?プレイリストの中にミスチルの曲がたくさんあったけど」
「そうですね。一番好きなのかはわかりませんが」
「好きな曲は?」
ミスチルの好きな曲か。全部好きだと言いたいが今先輩が求めている答えはそのようなものではないだろう。
「そんな迷ってるってことはよっぽど好きなんだね。いいことだ。好きなものを迷うことができるということは」
そうなのだろうか。一番を決めれないのは良いことなのか?はっきりとしないのは悪いことだと思ってしまうが。
「今日はもう解散にしようか。時間も時間だしね」
「そうですね。帰ったらこのCD聴かせていただきます」
「聴くのはいいけど明日も学校なんだから程々にしなよ」
「じゃあ明日寝不足だったら先輩の責任ですからね?それだけ夢中になったってことなんですから」
「それは少し嬉しいような申し訳ないようなだな」
先輩は少し笑いながらそう言った。




