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【全11話・一挙公開】『退学になった俺だけが世界の脚本を読める。七日後に世界は終わるらしいので、モブ女子と最終話を書き換える』  作者: 鷹司 怜


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1/11

第一話 世界の脚本

世界終了まで、残り七日。


そして彼女だけが、俺を覚えていた。


少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


「危ない!!」


 自分でも驚くほど大きな声だった。


 昼休みの校舎。


 俺――冬月朔(ふゆつき さく)は、一人の女子生徒へ向かって全力で走っていた。


 相手は突然叫ばれて固まっている。


 当然だ。


 見ず知らずの男子生徒がいきなり叫びながら突っ込んできたのだから。


 だが説明している暇はなかった。


 俺は少女の腕を掴み、力任せに引き寄せる。


「きゃっ!?」


 次の瞬間だった。


 轟音。


 足元が揺れる。


 コンクリートが砕け散った。


 階段の一部が崩落したのだ。


 破片が飛び散る。


 悲鳴が響く。


 あと一秒遅れていたら。


 彼女は死んでいた。


 間違いなく。


 なぜそんなことが分かったのか。


 理由は簡単だ。


 俺には見えていたからだ。


 世界の脚本が。


 異変が起きたのは、その日の朝だった。


 教室へ入った瞬間。


 俺は違和感を覚えた。


 クラスメイトの頭上に文字が浮かんでいる。


 透明な文字。


 まるで空中へ映し出された字幕のようなもの。


【第五話 告白失敗】


 男子生徒の頭上に浮かんでいた。


 何だこれ。


 目を(こす)る。


 だが消えない。


 別の生徒を見る。


【第七話 親友と決別】


 さらに別の女子生徒。


【第九話 転校】


 意味が分からない。


 頭でも打ったのかと思った。


 だが昨夜は普通に寝た。


 熱もない。


 体調も悪くない。


 なのに見える。


 全員に。


 教師にも。


 生徒にも。


 頭上へ奇妙な文字が表示されていた。


「冬月、どうした?」


 隣の席の男子が不思議そうに聞く。


 その頭上には。


【第十一話 裏切り】


 嫌な予感しかしなかった。


 一日中様子を見た。


 文字は消えない。


 授業中も。


 休み時間も。


 放課後も。


 ずっと浮かんでいる。


 そして昼休み。


 購買へ向かう途中だった。


 運命の文字を見つけた。


【第一話 階段崩落事故により死亡】


 一人の女子生徒の頭上だった。


 さらに下には数字。


 00:01:54


 残り時間。


 一分五十四秒。


「……は?」


 思わず声が出た。


 ありえない。


 だが。


 もし本当なら。


 あと二分で人が死ぬ。


 俺は考えるより先に走っていた。


 そして冒頭の出来事が起きた。


 事故はニュースになった。


 校舎の老朽化。


 幸い負傷者なし。


 だが俺は別のことを考えていた。


 本当に当たった。


 文字の通りに。


 偶然かもしれない。


 そう思いたかった。


 だが翌日。


 また見えてしまう。


【第二話 化学室火災】


 放課後。


 小規模な火災が発生した。


 さらに二日後。


【第三話 自転車事故】


 これも当たった。


 四日後。


【第四話 転落事故】


 阻止した。


 五日後。


【第五話 熱中症搬送】


 救急車が来た。


 全て現実になった。


 偶然では説明できない。


 当然、学校中で噂になった。


「また当てたらしい」


「なんで分かるんだ?」


「気味悪くない?」


 最初は感謝された。


 だが次第に空気が変わる。


 避けられるようになった。


 陰で笑われるようになった。


 教師たちも警戒し始める。


 そして。


 職員室へ呼び出された。


「冬月」


 教頭が重い声を出す。


「君の行動は問題になっている」


「問題?」


「不安を煽っている」


「でも当たってます」


「偶然だ」


 苛立ちが込み上げる。


「偶然で何回も当たるわけないでしょう!」


 職員室が静まる。


 だが教師たちの目は冷たい。


 誰も信じていない。


 俺だけが異常者扱いだった。


「しばらく自宅謹慎を命じる」


 教頭はそう告げた。


 つまり停学。


 実質的な退学への第一歩だ。


 俺は笑ってしまった。


 人を助けた結果がこれか。


 夕方。


 一人で帰る。


 誰も話しかけてこない。


 友達だと思っていた連中も。


 みんな距離を置いていた。


 空が赤い。


 夕焼けだった。


 その時。


 視界に異変が起きる。


 空に文字が浮かんだ。


 巨大な。


 街全体を覆うほどの文字。


 俺は立ち止まる。


 呼吸を忘れる。


【最終話 世界終了】


 理解できなかった。


 世界終了?


 何だそれは。


 だが文字は続く。


【残り七日】


 全身から血の気が引く。


 七日後。


 世界が終わる。


 さらに。


 最後の文字が浮かび上がる。


【世界を救う主人公 星乃紬】


 その名前を見た瞬間。


 俺はある少女を思い出した。


 クラスの後ろ。


 いつも一人で本を読んでいる少女。


 誰とも話さない。


 友達もいない。


 存在感の薄いモブのような少女。


 星乃紬。


 だが脚本は告げている。


 世界を救う主人公だと。


 意味が分からない。


 だが。


 今まで脚本は一度も外れていない。


 ならば。


 世界を救う鍵は彼女にある。


 そう確信した瞬間。


 新たな文字が浮かんだ。


【次回 運命の再会】


 そして。


【彼女だけは主人公を覚えている】


 心臓が大きく脈打った。


「……覚えている?」


 何のことだ。


 だが。


 俺はまだ知らない。


 世界が一度や二度ではなく。


 何度も終わっていることを。


 そして。


 そのたびに自分が何を失ってきたのかを。


 世界終了まで。


 残り七日。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

【鷹司 怜が贈る、涙と奇跡の10万字長編が絶賛連載中!】

生者と死者の切ない絆を真正面から描き切った、今一番読んでほしい大切な物語です。

『亡くなった母から、三年後にLINEが届いた〜止まっていた家族の時間が、切なくも温かい奇跡で動き出す〜』

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毎日【朝7:30】と【夜19:30】に2回、全力更新中の最新長編です。

ぜひ、こちらの新しい奇跡の物語にも今すぐお付き合いください。お待ちしております!

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