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境界線の向こう側  作者: 柚子
69/74

【67】

この世界には結婚式という概念がない。だからこそ王族の御婚姻の儀は特別な儀式であり国中で祝うべきイベントとなっていた事は記憶に新しい。


トイは自身の故郷に連れて行き、家族や仲間達に会わせたいと言った。


どの国にも獣人族はいるが、トイの生家は代々サンド国にあるという。


「親元を離れて独り立ちした頃、妖狐の残留気配を辿ってウェンディ国に来たんだ。この森の情景は故郷じゃないのに懐かしくて仕方なかった。

洋子の初遠征依頼はサンド国にしたのは、一族はヨウコの気配を感じられるから。俺が獣擬態化できたのもヨウコを娶ったことも悟った筈だ。

一緒に来て欲しい。皆を紹介したいんだ」




手作りのお菓子が喜ばれると、トイからリクエストされたので、大量の和菓子を作った。おはぎ、みたらし団子、きな粉団子をお土産に、久しぶりにサンド国に来た。


広大な領土は砂漠だが、右側は王族他国民が住み都市が栄えている。左側は自然美が雄大な産業が中心の都市で獣人族も多く住んでいるという。

獣人族は肉体が頑健で様々な作業場で活躍する姿が見受けられる。その中で外壁や屋根を修繕する作業場で親方と呼ばれる人こそ、トイの弟空羽狼承(クウロウ)だ。


「トイには勿体無い美人(シャン)だな?」

>>言葉使いが昭和な香りがする。

「俺はクウと呼んでくれ。ヨーコ、よろしくな。トイに飽きたらいつでも来いよ?」


………バシッ!!


>>ひいぃぃ!トイが本気で叩いてるよー!

「痛っ、冗談だろ?」

「いや、お前は本気だった」


クウは名の通り空が飛べる羽根が生えていた。耳や尻尾の毛並みはトイが黒色に対し灰色で、雰囲気がガラッと異なる。


トイの実家にはご両親、弟2人とその家族の親子3代が同居していた。妹さんは独身だが来週結婚する予定で、出稼ぎならぬ遠征依頼中という。


「父さん母さん。俺の伴侶を紹介します」

お父様は無言で頷いて述べた。

「刀威よ、お前は既に此の家を出た身。自身で一族を築くが良い。ヨーコ様、不肖の息子を宜しく頼みます」


ご両親は一礼をした。頭を上げて微笑んだお母様は洋子の瞳をジッと見た。

「トイ。顔を見せてくれて嬉しいわ。いつでも遊びにいらっしゃい。ヨーコ様、見せて下さいませんか?」

揺るがない真っ直ぐな視線は心地よい。金色の瞳はトイと同じだが、神通力に似た透視能力を持つだけのことはある。


『敬語と様付けをやめて下さらないとお見せてきません』

ご両親はほぼ同時に笑い出した。

「よかったわ。貴女が思った通りの方で。ヨーコ、トイをよろしくね?」


《変幻》


洋子は自身の内に秘めた力を“変幻”で解放すると古の姿に変わるのだ。白面金毛九尾の狐に…


「ありがとう。金色の毛並みは王妃の証。ヨーコ、人前では避けた方がいいわよ?」

お母様は洋子を抱きしめて囁いた。


「こら、ヨウコ。俺以外の前ではダメだって言っただろ?」

トイはお母様から奪うように抱き寄せたので、一同大爆笑の渦となった。

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