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境界線の向こう側  作者: 柚子
25/74

【25】

「初めまして。私はオズ皇子の婚約者のアマテラスと申します。女性の魔導師であり異世界から来たヨーコ様とお話ししたかったんですっ!」


>>メチャメチャ可愛いっ!でも…


『アマテラス様、ヨーコとお呼び下さい』

「それではヨーコも敬語ではなく私を友として接してね?」

『アマテラス様で…「アマテラスと呼んで?」


>>ライトやアイリスより目ヂカラ強いわ。未来の妃候補だけのことはある。


『アマテラス。皆の前ではご勘弁下さい。“友”の言葉、本当に嬉しいです』

アマテラスは誰もが魅入ってしまうほど美しい微笑みを浮かべた。

「よろしくね、ヨーコ」


アマテラスに手を掴まれ、王族の方々との会話を楽しんだ。



翌日の晩餐会前の身支度では、全身マッサージは丁重にお断りした。自分でゆっくり花弁入りの芳しい浴槽に浸かり、全身の疲れを癒した。


総勢100人収容する舞踏室で行われた晩餐会は豪華絢爛。奥にある厨房や控室の広さや室数もハンパない。見取図などなく迷子になりそうだった。


「ヨーコ!そのドレス、よく似合ってる。」

洋子に声をかけたのは正式の魔導師のローブに身を包んだトーマだった。

『ありがと。トーマの正装姿初めて見たわ。素敵っ』

トーマはニヤリと笑い

「ローブだと落ち着かないだがな。たくさん食べたか?」

『食べるより挨拶ばっか』

肩を竦めた洋子に、トーマは果実酒の器と食べ物を盛りつけた皿を手渡して話し出した。


以前トーマは王族の専属魔導師だったそう。その伝で晩餐会に参加したという。獣人族である力強さと優しさを持つトイの人柄に惚れて“暁月”に加入したと教えてくれた。


『トーマは“暁月”脱退は大丈夫なの?』

王族に仕えていた実力者を簡単に手放さないだろうと思ったのだ。

「あぁ。指名依頼を断らなければな。聡いなヨーコは」

『トーマのローブを見ればわかるわ』

お互い器を鳴らして乾杯するしぐさをして一気に飲み干して笑い合った。



晩餐会が終わると、翌日から“春の宴”の打ち合わせが滞りなく行われた。


当日まで城に滞在せよと御達しを受けた。

アマテラスに誘われてお茶会でお喋りしたり、彼女の個人授業を一緒に参加したり、一人で城の書物庫で過ごしたり、洋子なりに楽しんでいた。



[洋子、雪解けは明日よ]

瑠璃が教えてくれた。

[貴女の力を私に注いで?]

季節の変わり目を司る琥珀が乞う。


洋子は首環に両手を添えて、琥珀に想いを込めて注いだ。

[洋子、彼より強く優しい気が春を呼び大地は潤う。ありがとう]

永久かと思われた長く寒い季節が終わりを告げた。



春の宴、当日。生まれたての陽の光がシャイン国を照らした。

洋子は一大決心をした。


白いロングドレスを着て、聖樹の杖を持ち、頭には聖樹の蔓で編んだ冠を被った。鏡に映る自分を眺めた洋子は、《ウエディングドレスを着た花嫁みたいだ》と苦笑した。



城の正門から中央広場までの道を歩いていると、左右に溢れんばかりにいる人達に歓声を浴びる。

その様子は野球の優勝パレードを彷彿させ、何だか懐かしく思えた。

洋子の後ろには王族の馬車が続く。前後左右には騎士団が護衛しつつ華を添えていた。


洋子と王族が中央広場に到着すると、聖歌隊のような一団と、鼓笛隊の一団が整列した。


季節の歌の演奏が始まった。皆の心を釘付けにする。まるで胸の奥底から湧き上がる春の訪れを喜び感謝する気持ちが天まで届くかと思えた。


演奏が終わり、皆が余韻に浸っている。次は王自らリクエストした洋子の魔法お披露目だった。



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