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産婦人科での結果、そして二人は……

「だから……避妊したって言っただろ?」

産婦人科の自動ドアを出てから、直ぐに涼がそう言い出した。

「自信ないって言ってた癖に……」

産婦人科からの帰り道、涼と手を繋いだまま、膨れっ面でそう答えた。

「俺だって、初めてだったからさ……だけどさ、あの助産師さん、スゲー怒ってた」

「うん。性教育講座って言ってたけど、あれは、ほとんど説教だったね」

「ク―。検査結果出てからの一時間の説教はさすがにこたえる」

「でも……良かった。本当に……良かった」

検査結果は陰性だった。生理予定日より、二週間経っての検査だから、ほぼ陰性だろうと言われた。念の為に一週間後、再度検査して、陰性なら妊娠の可能性はゼロだと言われた。その間に生理がくれば、問題はないが、無ければ生理不順の治療が必要だと言われた。

「俺も……ホッとしてる。待合室じゃ、本当に俺は、沙都と子供を養って行けるのか?ってずっと自分に問いかけてた。中卒で出来る仕事は限られてるしさ。どうしようかって、そればかり考えてた。偉そうなこと言ってたけど……やっぱ、本音は、ホッとしてる」




それからわたしたちはその足で、青木クンの病院に向かって、涼とのことを正直に話した。

「青木、はっきりとさせなかった俺が悪いんだ。この通りだ」

涼が、青木クンに頭を下げた。

そして、涼の言葉に動揺した顔を隠せないでいた青木クンがポツリポツリと話始めた。

「畑野が、沙都ちゃんのことを特別な目で見てたのは知ってた。カラオケ店で気付いてたよ。自分の女だって目で見てたもん。事故で、沙都ちゃんを庇ったのも、そんな畑野に気付いてたから、ちょっといい格好したかったってのが本音だよ。まさか、こんな状態になるなんて予想外だったけど、スポーツ疲労骨折だから、遅かれ早かれ、こうなってたんだろうけどね。でも、入院して沙都ちゃんが毎日通って来てくれて、本当に嬉しかったんだ。そんな沙都ちゃんを畑野がいつかは奪いにくるんじゃないかって、冷や冷やしてたのも事実だし」

「ごめん。青木クン……本当にごめん。告白された時、子供みたいな考えで、青木クンのことアイドルみたいな目で見ていたのかも知れない。バカばっかやって盛り上がって……こんなに青木クンを傷つけるなんて、思いもしなかった。だから、責任感じて、必死で青木クンを好きになろうって、わたしなりに頑張ったけど、涼の存在があまりにも大きくて。

青木クンは優しくて、いい子で、わたしなんかに勿体ないくらいなのに……」

すると、青木クンが大きく顔を横に振った。

「ううん。俺は優しくなんかないよ。全然優しく無いタダの男だから。昨日、沙都ちゃんにキスした時、全然嬉しそうじゃなかったから、沙都ちゃんが帰った後、スゲー落ち込んでたんだ。そんなとこへ、真樹のヤツがやって来てさ、落ち込んでるの見透かされて腹立ったから、あいつをベッドに引っ張り込んで、無理やりキスしてやったんだ。でもあいつ、沙都ちゃんの変わりでいいから傍に居させてくれって泣いてしがみ付いて来てね。そんなあいつ見て……ちょっとキュンと来てた。悪いヤツだろ?女泣かせてさ」

青木クンのマネージャーとの話がどこまで本当なのか分からないけど、そんな話をして、わたしが離れやすいようにしてくれたのは事実だった。青木クンは、本当に優しい子だ。

「青木、身体がよくなったら、俺のこと殴っていいからな」

そう言った涼に両手を振って

「そんな……暴力沙汰起こせば、部活にまた迷惑かけちまうよ。そんなことより、沙都ちゃんのこと大事にしてやってよ」

「うん。分かった。肝に命じておくよ」

それから青木クンの病院を後にして、二人で自宅へ歩いて帰った。

その間も、涼はずっとわたしの手を繋いでくれていた。途中、ファーストフード店の看板を見るなり

「俺、腹へった。お前も、なんか食えよ」

「うん」

ファーストフード店で、ハンバーガーを食べて、また、二人で歩道を歩き出した。

わたしの手はずっと涼の手に包まれている。

「涼……今日は、診察料とかお金いっぱい使っちゃったね」

「うん。まあ、今度借りを返してくれればいいから」

「分かった。でも、わたし、お金ないし……バイトでもしよっかな」

「本気にするなよ。今日の分はもういいから。それより、身体を休ませろ」

「あっ! そういや、そうだ。涼は真菜とどうなったの?」

涼の横顔を覗き込んだ。

「真菜?うん。告白された。夏休み明けには返事をするって言ってあるけど……沙都とのことちゃんと話すよ。それでいいだろ?」

「うん」

そう大きく頷いて、涼に腕を絡ませた。

家の前に着くと

「沙都……今、俺、スゲー沙都にキスしたいんだけど」

わたしを向かい合うように抱き寄せて来て、わたしの返事も聞かずに、いきなり両頬を掴んで、唇を重ねて来た。

お互いの家の前で、何かを宣言するかのようなキスだった。

二人を冷やかす、お互いの両親の顔が目に浮かんだ。

気持ちが通じ合ってから、涼が強くなった気がして、それはそれで癪に障るけど、こんな強引な面も頼もしくて、いいかも知れない。

辺りはとっぷりと日が暮れて、路地の街燈だけの灯りに包まれていた。

青木クンを傷つけた。これから真菜も傷つけることになる。

その中で、こうして抱き合うことを決めたのだから、もう、この腕から絶対に離れない。

相手を傷つけないようにと、大事なことを言い逃れて来たわたしは、これからはもっと強く自分を持たなければいけないことを学んだ気がする。

涼がいれば大丈夫だ。

唇に涼を感じながら、腕に力を入れて、愛しい涼にしがみ付いた。



        Fin


この度、『初めては幼なじみ』を完結させて頂きました。



ダダダと書き上げ、推敲もしていないと言う中、

最後までお付き合い下さった方々にお礼を申し上げます。


今後、修正多々あると思いますが、よろしくお願いします。


本当にありがとうございました。



超短編ですが、涼サイドを今後UPしたいと思います。

同時系列のサイドストーリーは苦手なので、ご了承下さい。

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