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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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74/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 74

が、


 すでに、言ったように、この場で、マリアを叱ることは、できん…


 アムンゼンとバニラの目があるからだ…


 だから、出来ん!…


 出来んのだ!…


 私が、悩んでいると、アムンゼンが、


 「…矢田さん、バレバレですよ…」


 と、私に声をかけてきた…


 「…なにが、バレバレなんだ?…」


 「…矢田さん…マリアを叱ろうと思っているでしょ?…」


 「…なんだと?…」


 「…ごまかさなくても、わかります…」


 「…なにが、わかるんだ?…」


 「…今、マリアを、凄い目で、睨んでいたでしょ?…」


 「…」


 「…といっても、矢田さんのことです…マリアに対して、たいしたことは、しないでしょ? …せいぜい、当分の間、遊ばないことぐらいです…」


 アムンゼンが、断言した…


 ずばり、この矢田の心の中を見抜いた…


 見抜いたのだ…


 そう、言われると、どうして、いいか、わからんかった…


 自分でも、どう対応していいか、わからんかった…


 わからんかったのだ…


 実は、この矢田トモコ…


 アムンゼンの言う通り、たいしたことは、できんかった(涙)…


 マリアを叱ろうとは、思ったが、やはり、3歳の子供相手に、35歳の矢田トモコが、本気で、怒るのは、大人げない…


 だから、せいぜい、当面の間、マリアとは、遊んでやらん!…


 と、思ったのだ…


 が、


 このアムンゼンは、呆気なく、それを、見抜いた…


 やはり、アラブの至宝…


 ただ者では、ないのかも、しれんかった(笑)…


 が、


 それを、聞いたマリアが、


 「…矢田ちゃん、マリアと遊んでくれないの?…」


 と、いきなり、叫んだ…


 私は、どう答えていいか、わからんかった…


 「…そうさ…遊んでやらんさ…」


 と、いうのが、私の回答だが、それを、口にすれば、アムンゼンの言葉を認めることになる…


 この矢田が、3歳のマリア相手に、激怒したことを、認めることに、なるからだ…


 だから、困った…


 困ったのだ…


 すると、だ…


 それまで、存在を忘れていた太郎が、いきなり、アムンゼンの前に行き、アムンゼンの口を、自分の手で塞いだ…


 私は、驚いた…


 驚いたのだ…


 が、


 アムンゼンは、怒ることは、なかった…


 黙って、太郎の手を握って、


 「…そうですか?…言い過ぎましたか?…これは、失礼しました…」


 と、太郎に、詫びた…


 そして、


 「…太郎さん…ありがとうございます…」


 と、アムンゼンは、太郎に礼を言った…


 このアムンゼンは、太郎に優しい…


 実に、優しい…


 何度もいうように、小人症のアムンゼンは、太郎に自分を投影しているのだろう…


 太郎は、優れているが、猿…


 所詮は、猿に過ぎない…


 それと同じで、このアムンゼンもまた、いかに優れた頭脳の持ち主でも、所詮は、小人症…


 外見は、3歳にしか、見えない…


 だから、同病相哀れむではないが、アムンゼンは、太郎に優しい…


 そういうことだ…


 が、


 そんな太郎を見て、またしても、マリアの顔色が、変わった…


 明らかに、気分が、悪くなったようだ…


 その様子を見た、バニラが、慌てた…


 「…どうしたの? …マリア?…」


 と、慌てた…


 が、


 そんなバニラを見て、オスマンが、


 「…その猿のせいだろう…」


 と、冷静に指摘した…


 「…さっきも、そうだが、このマリアは、猿が苦手だ…今も、さっきと同じように、この猿が、叔父さんの口を塞いだ…だから、だろう…」


 「…そんな…」


 バニラが。力なく、答える…


 「…誰もが、苦手なものは、ある…問題は、それを、どうやって、克服するか、だ…」


 「…」


 「…この猿は、利口だ…驚くほど、頭がいい…きっと、この猿が、いつか、マリアを助けてくれるかも、しれない…」


 「…マリアを、助けて?…」


 「…もちろん、そう、思っただけだ…別段、深い理由はない…」


 オスマンが、慌てて言った…


 が、


 私には、実に、意味深に聞こえた…


 たしかに、太郎は、驚くほど、利口だ…


 ハッキリ、言えば、猿にしておくのが、惜しい…


 それほど、頭がいい…


 が、


 太郎が、マリアを助けると、なると、話は、別だ…


 そもそも、どうやって、太郎が、マリアを助けるというのか?


 それが、謎だった…


 もちろん、このオスマンが、なにげなく、言ったに過ぎんかも、しれんが、謎だったのだ…


 私たちが、そんなことを、考えている間にも、クルマは、走り続けた…


 いつのまにか、走っていたのだ…


 私たち、いや、私は、会話に夢中になり、クルマが、走っていることすら、すっかり、忘れていた…


 そして、やがて、アムンゼンの豪邸に着いた…


 以前、一度だけ、来たことがある、アムンゼンの豪邸に着いた…


 私は、一度、来ただけだが、やはりというか…


 その豪邸に、あらためて、驚いた…


 が、


 初めて、見る、バニラや、マリアは、もっと、驚いた…


 当たり前だ…


 「…凄い…お屋敷…」


 バニラが、絶句した…


 すると、隣にいる、オスマンが、


 「…オイルマネーの力だ…」


 と、笑った…


 その言葉を、聞いて、バニラが、無言で、頷いた…


 その通りだと、思ったのだろう…


 が、


 それは、マリアには、通じんかった…


 3歳のマリアには、通じんかったのだ…


 「…オイルマネーって、なに?…」


 と、聞いた…


 誰にともなく、口にしたのかも、しれんかった…


 「…石油の力さ…マリア…」


 アムンゼンが、答える…


 「…石油の力?…」


 「…今、乗って来たクルマもガソリンで走る…元は、原油といって、それが、ボクの国では、たくさん出る…それで、ボクも、こんな凄い家に住めるんだ…」


 「…これって、アムンゼンの家なの?…」


 マリアが、驚いた…


 「…そうだ…」


 「…アムンゼン…アンタ…大人だけれども、子供にしか見えないカラダだから、こんな大きな家は、いらないんじゃないの?…」


 もっともな、言い分だった…


 だが、それを、口にすることは、できんかった…


 また、笑うことも、できんかった…


 だから、困った…


 困ったのだ…


 すると、


 「…ママのように、カラダが、大きければ、必要かも、しれないけれど…」


 マリアが、続ける…


 それを、聞いて、間髪入れず、オスマンが、


 「…オレも、この家に住んでいるんだ…」


 と、言った…


 「…オスマンも、この家に?…」


 「…オレも、マリアのママと同じく、カラダが、デカいから、家は、デカい方が、いい…だからさ…」


 「…そうなんだ…」


 マリアが、オスマンの言葉に、納得した…


 すると、ホッとしたように、バニラは、オスマンを、見た…


 「…ありがとう…オスマン…」


 「…別に、ホントのことを、言っただけだ…」


 オスマンが、ぶっきらぼうに、答える…


 私は、それを、聞いて、それが、ホントか、ウソかは、わからんと、思った…


 たしかに、このオスマンは、現国王から、オスマンの監視を命じられている…


 だから、いっしょに、住むのは、都合が、いいが、それが、ホントか、どうかは、わからない…


 監視される、アムンゼンが、嫌がる可能性が、高いからだ…


 だから、それが、ホントか、ウソかは、わからない…


 が、


 いずれにしても、その言葉が、マリアを納得させたのは、確かだった…


 「…オスマンも、この家に住んでいるんだ?…」


 と、マリアが、聞く…


 「…そうだ…」


 「…たしかに、カラダが、おっきいから、家もおっきい方が、便利だね…」


 「…その通りだ…」


 「…なんだ…そうだったんだ…」


 マリアが、納得する…


 「…でもな、マリア…」


 オスマンが、続ける…


 「…大は小を兼ねるということわざが、この日本にあるそうだ…」


 「…大は小を兼ねる…」


 「…大きければ、小さいものも、兼ねるということだ…」


 「…どういう意味?…」


 「…例えば、そうだな…その猿だ…」


 「…この…お猿さん…」


 「…そうだ…」


 「…このお猿さんが、どうしたの?…」


 マリアが怯えながら、言った…


 太郎が、怖いのは、明らかだった…


 「…マリアが、その猿の家を作るとする…そしたら、小さな家になるだろ?…」


 「…ウン…」


 「…その猿のカラダの大きさに合わせるから、当然だ…でもだ?…」


 「…でも、なに?…」


 「…その小さな家に、このオレや、マリアのママは、住むことは、できないだろ? …カラダが、大きすぎる…」


 「…」


 「…でも、真逆に、大きな家なら、この猿も、オレも、マリアのママも住むことができる…そうだろ?…」


 「…ウン…」


 「…つまり、それが、大が小を兼ねるということさ…大きければ、カラダが、ちっちゃくても、おっきくても、住める…だから、便利だ…」


 オスマンが、マリアに説明した…


 なぜ、こんな大きな家に、小さなカラダのアムンゼンが、住むのか、うまく、納得させた…


 それを、聞いて、実に、ウマい説明だと、思った…


 が、


 アムンゼンは、そうは、思わなかったらしい…


 明らかに、怒った顔で、オスマンを見ていた…


 やはり、自分のカラダにコンプレックスがあるのだろう…


 それを、他人に指摘されるのなら、まだしも、身内の人間に指摘されるのは、嫌に違いない…


 「…さあ、中に入りましょう…いつまでも、ここにいても、仕方がない…」


 ぶっきらぼうに、アムンゼンが、呟いた…


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