35歳のシンデレラ 大道芸人編 58
葉尊か?
私は、あらためて、考える…
葉尊=私の夫だ…
が、
正直、わからん…
正直、よく、わからん…
同居する夫で、ありながら、実は、私にとって、一番、わからん人間だった…
どんな人間か、わからん人間だった…
他の連中…
葉尊の父、葉敬…
その葉敬の愛人、バニラ…
バニラの友人であり、モデルの先輩でもある、リンダ…
そして、葉尊のもう一つの人格である、葉問…
彼ら、彼女らは、どんな人間か、わかる…
実際に、接して、どんな人間か、わかる…
が、
もっとも、身近な人間であり、私の夫である、葉尊が、どんな人間か、掴めん…
掴めんのだ…
結婚して、半年…
いっしょに、暮らし出して、3か月経つが、わからん…
どんな人間か、わからん…
いうなれば、謎というか…
実態が、掴めん…
葉尊が、どんな人間か、実体が、掴めん…
ただ、おとなしいだけの男では、ないことは、わかる…
いや、
この世の中に、ただのおとなしいだけの人間は、存在しない…
大抵は、身近な親しい人間には、別の顔を見せるものだ…
身近な親しい友人や、家族には、別の顔を見せるものだ…
結構、我が強かったり、ひとの悪口を言ったり、別の顔を見せるものだ…
が、
葉尊には、それがない…
だから、不気味というか…
イマイチ、信用ができんのだ…
そういえば…
そういえば、以前、矢口のお嬢様…
私そっくりの外見を持つ、矢口トモコが、
…葉尊に気をつけろ、矢田!…
と、いうようなことを、遠回しに言ったことを、思い出した…
あのとき、矢口のお嬢様は、私に、
「…なにか、あったら、矢田…オマエは、葉問さんを頼れ、あるいは、リンダさん、バニラさんを頼れ…」
と、真顔で、言った…
真剣な口調で、私に言った…
そして、矢口のお嬢様には、悪いが、私は、それを、見て、思わず、吹き出す寸前だった…
なぜなら、矢口のお嬢様は、外見が、私そっくり…
私そっくりだったからだ…
この矢田には、威厳もなにも、ない…
童顔で、巨乳で、幼児体型の六頭身…
まるで、子供が、そのまま、大人になった感じ…
ただ、大人だから、胸が大きいだけだ(笑)…
そして、矢口のお嬢様は、そんな私と、まるで、鏡に映ったように、似ている…
身長、顔、胸の大きさと、似ている…
二人が、並べば、厳密には、少しは、違うが、誰が、見ても、双子か、兄弟姉妹に見える…
それほど、私と矢口のお嬢様は、似ている…
だから、そんなお嬢様が、真顔で、
「…なにか、あったら、矢田…オマエは、葉問さんを頼れ、あるいは、リンダさん、バニラさんを頼れ…」
と、私に言っても、吹き出す寸前というか…
呆気に取られて、言葉も出んかった(笑)…
まるで、自分が、言っているみたいだからだった…
なにより、この矢田は、軽い…
人間が、軽い…
そして、同じように、矢口のお嬢様も、人間が、軽かった(笑)…
矢口のお嬢様は、この矢田と違って、東大を出ていると、聞いたが、人間が、軽かった(笑)…
なにより、とてもではないが、東大を出ているようには、見えんかった…
が、
世の中、そんなものかも、しれん…
頭が、良く見える人間が、必ずしも、頭が、よくないように、頭が、よく見えない人間が、頭が、いいことも、ある…
それが、わからないのは、大半が、自分が、頭が、いい人間と、一度も、接したことがないからだ…
だから、わからない…
極端な話、東大を出れば、すぐに、ひとを束ね、集団を、まとめたり、どんな仕事でも、簡単にできると考える…
あるいは、東大を出れば、長身で、容姿端麗で、お金持ちで、異性に、モテモテと考える…
偏差値が高い=容姿端麗と、考える…
少し考えれば、そんなことは、ありえないのだが、それが、わからない…
そして、よせばいいのに、それを口にする…
だから、バカ丸出しなのだが、それが、わからない…
誰も、注意しないからだ…
私は、さまざまな職場を転々として、そんな人間を見たことがある…
初めて、見たときは、ショックというか…
開いた口が、塞がらんかった(笑)…
それほどのショックだった…
が、
それは、職場が、サイテーだから…
だから、そんな人間が、ウジャウジャいた…
誰も、信じんかも、しれんが、ウジャウジャいた(爆笑)…
だから、この世の中に、そんな人間が、いることが、わかる…
そして、そんな人間の思考は、極めて、シンプルだった…
極めて、シンプル=単純だった…
要は、仕事ならば、与えられた仕事が、できるか、否か?
それだけだった(笑)…
そして、それが、その人間の他人を評価する判断基準のすべてだった…
例えば、ウーバーイーツならば、一日に何件、配達できるか?
それが、その人間の他人を評価する基準のすべてだった…
例え、東大を出ていても、自分より、できなければ、自分より、劣っていると、心の底から、思う…
その仕事が、その人間に合わなかったり、苦手だとは、考えもしない…
学校を卒業し、社会に出れば、東大も、高卒も、関係ない、と、心の底から、思う人間だった…
が、
さすがに、そんな人間は、滅多にお目にかかれない…
そして、そういう人間は、会社ならば、ずっと、上に上がれず、入社以来、立場が変わらないのだが、それが、わからない…
ずっと、同じような仕事をさせられることになるのが、わからない…
事実、風の噂で、その通りだったと、聞いた(笑)…
なにより、そんな人間ほど、上昇志向が、強かった…
これが、一番の驚きだった…
東大を筆頭に、いい大学を出た人間が、上昇志向が、強いのは、わかる…
が、
真逆に、学歴が、ない人間が、上昇志向が、強いのは、驚きだった…
そして、そんな人間を見ると、やはり、物事をシンプルに考えているのが、わかる…
要するに、学歴では、負けたが、仕事では、自分より、頭のいい人間に、負けないと、考える…
たしかに、ウーバーイーツに代表されるように、単純な仕事なら、自分より、頭のいい人間に勝てるかも、しれないが、上に昇るには、頭が、必要…
企画書を書いたり、他人に指示を出したり、することが、必須だからだ…
が、
頭が悪ければ、企画書を書いたり、他人に、指示を出したりするのが、難しい…
それが、わからない…
それが、できないのが、わからない…
私は、そんな人間と初めて、接して、驚いたと同時に、生まれて初めて、学歴について、考えた…
正直、学生時代、どこの高校を出たとか、どこの大学に、入ったとか、他人の偏差値は、気になった…
が、
それだけ…
偏差値が高い大学を出た人間に会うと、凄いと思ったが、正直、それだけだった…
が、
今、例に挙げた人間を見て、生まれて、初めて、学歴の重要さというか…
他人の能力について、気付いた…
あるいは、考えさせられた…
これは、この矢田が、何度もいうように、短大を卒業後、就職もせず、バイトや派遣、契約社員など、さまざまな職場を転々としたからだろう…
だから、そんな人間に出会えた…
そして、この矢田と同じように、さまざまな職場を転々とした人間は、今の世の中、大勢いる…
そして、すべからく、口にするのは、一言…
「…この世の中、実に、色々なひとがいる…」
と。
この言葉が、すべて…
すべてだった(笑)…
そして、歳を取って、気付いたことは、それは、やはり、コンプレックスの裏返しでは、ないかと、いうことだった…
学歴で、劣るから、仕事では、自分より、学歴が高い人間には、負けない…
そう、豪語する…
あるいは、
言葉に出さすとも、態度に出す…
それは、本人が、意識しようと、意識しまいと、学歴に対するコンプレックスに、他ならない…
そして、問題なのは、仕事は、必ずしも、学歴に直結しないという事実だった…
例え、高卒でも、与えられた仕事によっては、東大卒に、勝てる…
先に挙げたウーバーイーツを例に取るまでも、なく、それが、当たり前だ…
が、
頭の悪い人間には、それが、わからない…
なにより、そういう人間は、繰り返すが、物事をシンプルに考える…
物事を単純に考える…
要するに、末端の実務を担当して、それが、簡単にできれば、次のステップを踏めると、考える…
わかりやすい例で、言えば、次は、5人をまとめる主任に昇格して、その次は、課長、そして、部長と、まるで、階段を昇るように、簡単に出世できると、考える…
そして、もう一つ…
もう一つ、気付いたことは、他人の頭のレベルが、まるで、わからないことだった…
会社で、誰々と接していたり、あるいは、直接話したことがなくても、ある人間が、べつの誰かと、話していたりする…
それは、例えば、仕事の話ではなく、趣味の話や、芸能の話など、なんでもいい…
ハッキリ言えば、たわいもない雑談をしている…
が、
大半は、その話の中身で、なんとなく、その人間の頭の中身が、わかるものだ…
例えば、高卒か、大卒か?
大卒でも、早慶レベルか日大レベルか、など…
なんとなく、わかるものだ…
が、
それが、できない…
そして、それが、できなければ、誰かに、聞くなり、教えてもらうなど、すれば、いいのに、そんなことは、考えもしない…
目の前の仕事が、できるから、オレは、凄い…
目の前の仕事が、できるから、学歴は、負けても、仕事では、負けない…
と、本気で、考える…
また、そういう人間は、大抵が、性格が悪い…
いつも、誰か、他人の悪口を言っていたり、性格が、良くないことが、誰にも、一目でわかる…
それゆえ、周囲の者が、誰一人、教えてくれない…
そういうものだ…
そして、当時は、そこまで、思わなかったが、35歳になった今となっては、そういう人間が出来上がった背景を考える…
そういう人間が、生まれた環境を考える…
ハッキリ言えば、両親が、同じように、いつも他人の悪口ばかり、言っていたとか…
あるいは、
家が、貧乏で、劣悪な環境で、育ったとか?…
当時は、そこまで、考えなかったことを、考えるようになる…
そして、
そして、だ…
その人間が、結婚して、子供ができれば、やはり親と同じように、いつも、他人の悪口を言ってばかりいるのか?
とか、
やはり、会社に入れば、自分なら、簡単に、出世できると、考えるのか?
とか、
考えるようになる(笑)…
要するに、血…
血=DNAだ…
だとすれば、それは、遺伝…
間違いなく、遺伝だ…
が、
劣っていれば、必ずしも、人生で、成功できないわけでもなく、真逆に、優れていれば、必ず、人生で、成功するわけでもない…
学歴、性格、ルックス、家柄等、劣っていても、社会で成功することは、あるし、その真逆に、学歴、性格、ルックス、家柄等、すべてに、優れているにも、かかわらず、社会で、成功できないものも、また多い…
そこが、実に、悩ましいというか?
ある意味、非情だと、思う…
神様が、非情だと、思う…
なぜって、学歴が高くて、ルックスも性格もよければ、社会で、成功させたいと、誰もが、思うだろう…
が、
必ずしも、そうとは、ならない…
ルックスや性格も悪く、頭が、悪くとも、社会で、成功するものは、多い…
そして、また、そこに努力の有無は、あまり、関係ない…
ハッキリ言えば、運命なのかな?
と、思う…
頭が良かろうと、悪かろうと、宝くじを買えば、当たるか、どうかは、関係ない…
それと、似ている…
そして、それを言えば、私も同じ…
この矢田トモコも同じ…
まったくの平凡な人間にも、かかわらず、台湾の大金持ちと結婚した…
が、
それでも、この先は、わからない…
誰にも、わからない…
葉尊と離婚するかも、しれないし、会社が、倒産するかも、しれない…
そんなこと、あるわけないじゃん…
ということが、世の中には、結構あるものだ…
だから、わからない…
この先、なにが、起こるか、わからない…
そして、そんなことを考えると、足がすくむと、同時に、どこか、ワクワクした…
平凡な人生は、つまらない…
わかりきった人生は、つまらないからだ…
だから、ワクワクした…
だから、ドキドキした…
そして、それは、いつのまにか、葉尊の裏の顔を見てみたい…
そんな欲求に繋がった…




