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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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58/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 58

葉尊か?


 私は、あらためて、考える…


 葉尊=私の夫だ…


 が、


 正直、わからん…


 正直、よく、わからん…


 同居する夫で、ありながら、実は、私にとって、一番、わからん人間だった…


 どんな人間か、わからん人間だった…


 他の連中…


 葉尊の父、葉敬…


 その葉敬の愛人、バニラ…


 バニラの友人であり、モデルの先輩でもある、リンダ…


 そして、葉尊のもう一つの人格である、葉問…


 彼ら、彼女らは、どんな人間か、わかる…


 実際に、接して、どんな人間か、わかる…


 が、


 もっとも、身近な人間であり、私の夫である、葉尊が、どんな人間か、掴めん…


 掴めんのだ…


 結婚して、半年…


 いっしょに、暮らし出して、3か月経つが、わからん…


 どんな人間か、わからん…


 いうなれば、謎というか…


 実態が、掴めん…


 葉尊が、どんな人間か、実体が、掴めん…


 ただ、おとなしいだけの男では、ないことは、わかる…


 いや、


 この世の中に、ただのおとなしいだけの人間は、存在しない…


 大抵は、身近な親しい人間には、別の顔を見せるものだ…


 身近な親しい友人や、家族には、別の顔を見せるものだ…


 結構、我が強かったり、ひとの悪口を言ったり、別の顔を見せるものだ…


 が、


 葉尊には、それがない…


 だから、不気味というか…


 イマイチ、信用ができんのだ…


 そういえば…


 そういえば、以前、矢口のお嬢様…


 私そっくりの外見を持つ、矢口トモコが、


 …葉尊に気をつけろ、矢田!…


 と、いうようなことを、遠回しに言ったことを、思い出した…


 あのとき、矢口のお嬢様は、私に、


 「…なにか、あったら、矢田…オマエは、葉問さんを頼れ、あるいは、リンダさん、バニラさんを頼れ…」


 と、真顔で、言った…


 真剣な口調で、私に言った…


 そして、矢口のお嬢様には、悪いが、私は、それを、見て、思わず、吹き出す寸前だった…


 なぜなら、矢口のお嬢様は、外見が、私そっくり…


 私そっくりだったからだ…


 この矢田には、威厳もなにも、ない…


 童顔で、巨乳で、幼児体型の六頭身…


 まるで、子供が、そのまま、大人になった感じ…


 ただ、大人だから、胸が大きいだけだ(笑)…


 そして、矢口のお嬢様は、そんな私と、まるで、鏡に映ったように、似ている…


 身長、顔、胸の大きさと、似ている…


 二人が、並べば、厳密には、少しは、違うが、誰が、見ても、双子か、兄弟姉妹に見える…


 それほど、私と矢口のお嬢様は、似ている…


 だから、そんなお嬢様が、真顔で、

 

 「…なにか、あったら、矢田…オマエは、葉問さんを頼れ、あるいは、リンダさん、バニラさんを頼れ…」


 と、私に言っても、吹き出す寸前というか…


 呆気に取られて、言葉も出んかった(笑)…


 まるで、自分が、言っているみたいだからだった…


 なにより、この矢田は、軽い…


 人間が、軽い…


 そして、同じように、矢口のお嬢様も、人間が、軽かった(笑)…


 矢口のお嬢様は、この矢田と違って、東大を出ていると、聞いたが、人間が、軽かった(笑)…


 なにより、とてもではないが、東大を出ているようには、見えんかった…


 が、


 世の中、そんなものかも、しれん…


 頭が、良く見える人間が、必ずしも、頭が、よくないように、頭が、よく見えない人間が、頭が、いいことも、ある…


 それが、わからないのは、大半が、自分が、頭が、いい人間と、一度も、接したことがないからだ…


 だから、わからない…


 極端な話、東大を出れば、すぐに、ひとを束ね、集団を、まとめたり、どんな仕事でも、簡単にできると考える…


 あるいは、東大を出れば、長身で、容姿端麗で、お金持ちで、異性に、モテモテと考える…


 偏差値が高い=容姿端麗と、考える…


 少し考えれば、そんなことは、ありえないのだが、それが、わからない…


 そして、よせばいいのに、それを口にする…


 だから、バカ丸出しなのだが、それが、わからない…


 誰も、注意しないからだ…


 私は、さまざまな職場を転々として、そんな人間を見たことがある…


 初めて、見たときは、ショックというか…


 開いた口が、塞がらんかった(笑)…


 それほどのショックだった…


 が、


 それは、職場が、サイテーだから…


 だから、そんな人間が、ウジャウジャいた…


 誰も、信じんかも、しれんが、ウジャウジャいた(爆笑)…


 だから、この世の中に、そんな人間が、いることが、わかる…


 そして、そんな人間の思考は、極めて、シンプルだった…


 極めて、シンプル=単純だった…


 要は、仕事ならば、与えられた仕事が、できるか、否か?


 それだけだった(笑)…


 そして、それが、その人間の他人を評価する判断基準のすべてだった…


 例えば、ウーバーイーツならば、一日に何件、配達できるか?


 それが、その人間の他人を評価する基準のすべてだった…


 例え、東大を出ていても、自分より、できなければ、自分より、劣っていると、心の底から、思う…


 その仕事が、その人間に合わなかったり、苦手だとは、考えもしない…


 学校を卒業し、社会に出れば、東大も、高卒も、関係ない、と、心の底から、思う人間だった…


 が、


 さすがに、そんな人間は、滅多にお目にかかれない…


 そして、そういう人間は、会社ならば、ずっと、上に上がれず、入社以来、立場が変わらないのだが、それが、わからない…


 ずっと、同じような仕事をさせられることになるのが、わからない…


 事実、風の噂で、その通りだったと、聞いた(笑)…


 なにより、そんな人間ほど、上昇志向が、強かった…


 これが、一番の驚きだった…


 東大を筆頭に、いい大学を出た人間が、上昇志向が、強いのは、わかる…


 が、


 真逆に、学歴が、ない人間が、上昇志向が、強いのは、驚きだった…


 そして、そんな人間を見ると、やはり、物事をシンプルに考えているのが、わかる…


 要するに、学歴では、負けたが、仕事では、自分より、頭のいい人間に、負けないと、考える…


 たしかに、ウーバーイーツに代表されるように、単純な仕事なら、自分より、頭のいい人間に勝てるかも、しれないが、上に昇るには、頭が、必要…


 企画書を書いたり、他人に指示を出したり、することが、必須だからだ…


 が、


 頭が悪ければ、企画書を書いたり、他人に、指示を出したりするのが、難しい…


 それが、わからない…


 それが、できないのが、わからない…


 私は、そんな人間と初めて、接して、驚いたと同時に、生まれて初めて、学歴について、考えた…


 正直、学生時代、どこの高校を出たとか、どこの大学に、入ったとか、他人の偏差値は、気になった…


 が、


 それだけ…


 偏差値が高い大学を出た人間に会うと、凄いと思ったが、正直、それだけだった…


 が、


 今、例に挙げた人間を見て、生まれて、初めて、学歴の重要さというか…


 他人の能力について、気付いた…


 あるいは、考えさせられた…


 これは、この矢田が、何度もいうように、短大を卒業後、就職もせず、バイトや派遣、契約社員など、さまざまな職場を転々としたからだろう…


 だから、そんな人間に出会えた…


 そして、この矢田と同じように、さまざまな職場を転々とした人間は、今の世の中、大勢いる…


 そして、すべからく、口にするのは、一言…


 「…この世の中、実に、色々なひとがいる…」


 と。


 この言葉が、すべて…


 すべてだった(笑)…


 そして、歳を取って、気付いたことは、それは、やはり、コンプレックスの裏返しでは、ないかと、いうことだった…


 学歴で、劣るから、仕事では、自分より、学歴が高い人間には、負けない…


 そう、豪語する…


 あるいは、


 言葉に出さすとも、態度に出す…


 それは、本人が、意識しようと、意識しまいと、学歴に対するコンプレックスに、他ならない…


 そして、問題なのは、仕事は、必ずしも、学歴に直結しないという事実だった…


 例え、高卒でも、与えられた仕事によっては、東大卒に、勝てる…

 

 先に挙げたウーバーイーツを例に取るまでも、なく、それが、当たり前だ…


 が、


 頭の悪い人間には、それが、わからない…


 なにより、そういう人間は、繰り返すが、物事をシンプルに考える…


 物事を単純に考える…


 要するに、末端の実務を担当して、それが、簡単にできれば、次のステップを踏めると、考える…


 わかりやすい例で、言えば、次は、5人をまとめる主任に昇格して、その次は、課長、そして、部長と、まるで、階段を昇るように、簡単に出世できると、考える…


 そして、もう一つ…


 もう一つ、気付いたことは、他人の頭のレベルが、まるで、わからないことだった…


 会社で、誰々と接していたり、あるいは、直接話したことがなくても、ある人間が、べつの誰かと、話していたりする…


 それは、例えば、仕事の話ではなく、趣味の話や、芸能の話など、なんでもいい…


 ハッキリ言えば、たわいもない雑談をしている…


 が、


 大半は、その話の中身で、なんとなく、その人間の頭の中身が、わかるものだ…


 例えば、高卒か、大卒か?


 大卒でも、早慶レベルか日大レベルか、など…


 なんとなく、わかるものだ…


 が、


 それが、できない…


 そして、それが、できなければ、誰かに、聞くなり、教えてもらうなど、すれば、いいのに、そんなことは、考えもしない…


 目の前の仕事が、できるから、オレは、凄い…


 目の前の仕事が、できるから、学歴は、負けても、仕事では、負けない…


 と、本気で、考える…


 また、そういう人間は、大抵が、性格が悪い…


 いつも、誰か、他人の悪口を言っていたり、性格が、良くないことが、誰にも、一目でわかる…


 それゆえ、周囲の者が、誰一人、教えてくれない…


 そういうものだ…


 そして、当時は、そこまで、思わなかったが、35歳になった今となっては、そういう人間が出来上がった背景を考える…


 そういう人間が、生まれた環境を考える…


 ハッキリ言えば、両親が、同じように、いつも他人の悪口ばかり、言っていたとか…


 あるいは、


 家が、貧乏で、劣悪な環境で、育ったとか?…


 当時は、そこまで、考えなかったことを、考えるようになる…


 そして、


 そして、だ…


 その人間が、結婚して、子供ができれば、やはり親と同じように、いつも、他人の悪口を言ってばかりいるのか?


 とか、


 やはり、会社に入れば、自分なら、簡単に、出世できると、考えるのか?


 とか、


 考えるようになる(笑)…


 要するに、血…


 血=DNAだ…


 だとすれば、それは、遺伝…


 間違いなく、遺伝だ…


 が、


 劣っていれば、必ずしも、人生で、成功できないわけでもなく、真逆に、優れていれば、必ず、人生で、成功するわけでもない…


 学歴、性格、ルックス、家柄等、劣っていても、社会で成功することは、あるし、その真逆に、学歴、性格、ルックス、家柄等、すべてに、優れているにも、かかわらず、社会で、成功できないものも、また多い…


 そこが、実に、悩ましいというか?


 ある意味、非情だと、思う…


 神様が、非情だと、思う…


 なぜって、学歴が高くて、ルックスも性格もよければ、社会で、成功させたいと、誰もが、思うだろう…


 が、


 必ずしも、そうとは、ならない…


 ルックスや性格も悪く、頭が、悪くとも、社会で、成功するものは、多い…


 そして、また、そこに努力の有無は、あまり、関係ない…


 ハッキリ言えば、運命なのかな?


 と、思う…


 頭が良かろうと、悪かろうと、宝くじを買えば、当たるか、どうかは、関係ない…


 それと、似ている…


 そして、それを言えば、私も同じ…


 この矢田トモコも同じ…


 まったくの平凡な人間にも、かかわらず、台湾の大金持ちと結婚した…


 が、


 それでも、この先は、わからない…


 誰にも、わからない…


 葉尊と離婚するかも、しれないし、会社が、倒産するかも、しれない…


 そんなこと、あるわけないじゃん…


 ということが、世の中には、結構あるものだ…


 だから、わからない…


 この先、なにが、起こるか、わからない…


 そして、そんなことを考えると、足がすくむと、同時に、どこか、ワクワクした…


 平凡な人生は、つまらない…


 わかりきった人生は、つまらないからだ…


 だから、ワクワクした…


 だから、ドキドキした…


 そして、それは、いつのまにか、葉尊の裏の顔を見てみたい…


 そんな欲求に繋がった…


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