↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 56

「…だから、4人とも、お姉さんには、感謝していると、思います…特に葉敬は…」


 葉問が、続ける…


 私は、それを、聞いて、なぜ、葉敬が、私を優遇するのか?


 今さらながら、わかった気がした…


 たしかに、葉問の説明を信じるならば、私は、中和剤というか…


 4人のギスギスした関係を和らげることが、できる…


 だから、必須…


 あの4人には、私が必須ということになる…


 だから、葉敬は、私を大事にするのか?


 今さらながら、その事実に、気付いた…


 気付いたのだ…


 「…お姉さんが、いることで、葉敬一家も、うまくバランスをとることが、できました…」


 葉問が、続ける…


 「…だから、お姉さんは、必須です…ですから、お姉さんが、思っている以上に、あの4人から、大事にされてます…」


 葉問が、言った…


 が、


 それを、言ってから、葉問の顔色が、変わった…


 わずかだが、明らかに、沈んだ表情に、なった…


 「…ただ…」


 と、葉問が、続けた…


 が、


 それ以上は、続かなかった…


 そこで、黙ってしまったからだ…


 だから、私は、


 「…ただ、なんだ?…」


 と、言った…


 「…お姉さんは、誰にも、好かれますが、稀に、お姉さんを羨む人間が、います…」


 …葉尊のことか?…


 私は、思った…


 「…それは、変な話、美人と同じです…」


 「…美人と同じだと? なにが、同じなんだ?…」


 「…ただ美人であるという理由だけで、周囲の女性から、羨ましがられ、同時に、嫉妬されることが、多い…」


 「…」


 「…本人は、なにも、悪いことを、しないにも、かかわらず、勝手に、周囲の女性が、美人を嫉妬する…」


 「…」


 「…そういうものです…」


 葉問が、苦笑いを浮かべながら、説明する…


 「…いわゆる、善人説は、当てになりません…人間は、嫉妬の生き物だということが、よくわかります…」


 「…」


 「…お姉さんの場合も、それと、同じです…」


 「…同じだと?…」


 「…お姉さんは、誰にも、好かれますが、稀に、そんなお姉さんに、嫉妬する者も、出て来ます…」


 「…」


 「…だから、気をつけることです…」


 葉問が、言った…


 そして、それを、言うや否や、葉尊に、戻った…


 葉問から、葉尊に戻ったのは、太郎が、


 「…キー…」


 と、鳴いて、すぐに、葉尊の元から、去ったから、わかった…


 太郎が、葉尊を嫌っているのは、明白だった…


 太郎は、葉尊から、離れると、私の背後に、回った…


 私を盾にして、葉尊から、身を守るようだった…


 いや、


 明らかに、身を守っていた…


 私は、葉尊に、どう言っていいか、わからんかった…


 太郎が、葉尊を嫌っているのを、見て、葉尊が、気分が、いいわけが、なかったからだ…


 が、


 葉尊は、なにも、言わんかった…


 何事も、なかったように、スルーした…


 だから、私も、なにも、言わんかった…


 ただ、黙って、葉尊を見た…


 葉尊も、無言で、私を見た…


 そして、それでは、マズいと、思ったのか、


 「…お姉さん…早く食事にしましょう…お腹が、減って仕方がない…」


 と、言って、笑った…


 だから、私は、


 「…すまんかったさ…いますぐ、用意するさ…」


 と、言って、キッチンに立った…


 急いで、夕食の用意をした…



 私と葉尊は、夫婦だが、寝室は、別…


 互いに、一人がいいから、寝室は、別にしている…


 それは、私も葉尊も、一人っ子であることが、大きい…


 一人っ子だから、子供のときも、兄弟姉妹が、いないから、一人で寝る…


 厳密には、葉尊は、幼いときには、葉問という双子の弟がいたが、事故で死んだ…


 葉尊の仕掛けた、ちょっとしたいたずらが、原因で、死んだ…


 だから、ほぼ、一人っ子…


 葉尊は、ほぼ、一人っ子として、育った…


 よく、兄弟姉妹がいれば、幼いときは、兄弟姉妹は、いっしょの布団に寝るものだが、私に、そんな経験は、ない…


 それは、葉尊も同じ…


 なにより、葉尊は、大金持ち…


 大金持ちの一人っ子だ…


 どうせ、子供の頃から、大きな部屋で、一人で寝ていたに、違いない…


 だから、私も葉尊も、隣に、誰か、ひとがいると、寝付けない…


 どうしても、隣にひとがいるのが、気になって、寝付かない…


 だから、二人で、相談して、寝室は、別にした…


 お互い、その方が、安心して、寝つけるからだ…


 隣に、ひとがいないから、安心して、寝つける…


 が、


 今は、私の隣には、太郎が、いた…


 猿の太郎が、いた…


 太郎といっしょに、布団に入り、寝ていた…


 が、


 それでも、私は、簡単に、寝つけた…


 それは、やはり、太郎が、人間で、ないことが、大きいかも、しれんかった…


 太郎が、猿だから、たいして、気も使わんから、寝れるということだ…


 私は、ときおり、太郎のカラダを手で撫でながら、考えた…


 葉尊のことを、考えた…


 これまで、誰にも、言っていなかったが、実は、この矢田は、葉尊よりも、葉問の方が、好きというか…


 気安く、話せる…


 安心して、話せる…


 葉尊といると、緊張するというか…


 葉問と話すほど、気安く話せない…


 と、いうことは?


 と、いうことは、私は、葉尊よりも、葉問の方が、好きなのだろうか?


 考える…


 好きと、簡単に答えを出すことは、できない…


 なぜなら、この矢田が、最初に、会ったのは、葉尊だからだ…


 結婚したのも、葉尊…


 葉問ではない…


 私は、初めて、台湾から、一人で、来日した葉尊を道案内した…


 それが、葉尊と知り合ったきっかけだった…


 葉尊は、道に迷っていた…


 一人きりで、来日して、秋葉原に行きたかったが、行けんかった…


 どの電車に乗れば、いいのか、わからんからだ…


 それで、偶然、葉尊に声をかけられた私は、秋葉原まで、葉尊を連れて行った…


 ちょうど、暇だったからだ…


 それを、葉尊は、恩に着た…


 そして、別れ際に、


 「…また、会いましょう…」


 と、言った…


 が、


 私は、ただの社交辞令だと、思った…


 二度と会うことは、ないと、思った…


 それが、半年後、葉尊は、颯爽と、日本に現れた…


 しかも、


 しかも、だ…


 最初、会ったときと、二度目に来日したときは、葉尊の容貌は、激変していた…


 最初、会ったときは、葉尊は、太っていた…


 身長こそ、高かったが、誰が、見ても、秋葉原で、よく見かけるオタクだった…


 オタクそのものだった…


 なにより、全然カッコよくなかった…


 が、


 二度目に来日したときは、違った…


 長身のイケメンが、颯爽と、飛行機のタラップを降りる姿が、テレビカメラに映った…


 葉尊の父、葉敬が、倒産危機に陥った日本の総合電機メーカー、クールを買収したからだ…


 葉敬は、台湾の大企業、台北筆頭の創業者で、社長…


 日本の総合電機メーカー、クールを買収して、自分の息子である、葉尊を、社長として、送り込んだのだ…


 だから、注目された…


 日本の大手の総合電機メーカーが、台湾の子会社になるのは、前代未聞の出来事だったらだ…


 そして、繰り返すが、飛行機のタラップを降りる姿は、以前、会ったときとは、違った…


 以前、会った葉尊は、長身だが、ただのデブのオタク…


 が、


 今回、テレビカメラに映った葉尊は、長身のイケメン…


 誰が、見ても、同じ人物とは、思えんかった…


 だから、私も気付かんかった…


 が、


 後にそれは、薬のせいだと、わかった…


 要するに、葉尊は、多重人格…


 葉尊の中に、葉問という、もう一人の人格を持っている…


 だから、葉問を消滅させるために、薬を、飲んだ…


 その副作用で、葉尊は、太ったということだった…


 それが、痩せたので、この矢田も、まさか、同じ人物だとは、わからんかった…


 そして、最初、葉尊と会ったときに、別れ際に、葉尊に名前を聞かれ、


 「…矢田トモコ…」


 と、名乗った…


 もはや、二度と、葉尊と会うことなど、ないと、思ったから、気軽に名乗ったのだ…


 が、


 来日した葉尊は、真っ先に、私を探した…


 矢田トモコと名乗る女を探した…


 すると、どうだ?


 日本中の矢田トモコが、集まった…


 これは、驚きだった…


 矢田トモコと、名乗れば、葉尊と結婚できる…


 台湾の大金持ちと結婚できると、思ったのだ…


 葉尊は、テレビのインタビューで、


 「…ボクは、半年前に来日したときに、矢田トモコさんと名乗る方に、お世話になりました…ですから、テレビ局の力で、矢田トモコさんを探し出して下さい…ボクは、矢田トモコさんと結婚したいんです…」


 と、宣言したからだ…


 だから、日本中の矢田トモコが、集まった…


 台湾の大金持ちと結婚できると、思って、集まった(爆笑)…


 要するに、本物の矢田トモコに成りすまして、葉尊との結婚を目論んだのだ…


 いかに、日本中にずる賢い女が、多いのかの、見本だった(爆笑)…


 が、


 それは、おそらく葉尊もまた、同じだったろう…


 今になって、考えれば、わかる…


 おそらく、葉尊は、話題にしたかったのだろうと、思う…


 いわゆる、プロモーションの一つ…


 広告の一つだ…


 台湾の大企業が、日本の大手総合電機メーカーを買収する…


 それは、下手をすれば、日本の国民の感情を逆なですることになる…


 だから、それを、考慮して、日本で、嫁探しをする…


 そうすれば、話題になるし、なにより、日本国民の感情を逆なですることが、なくなるからだ…


 実に、ウマい判断だ…


 今、考えれば、葉尊は、策士…


 策士だ…


 実に、狡猾だ…


 私は、ベッドの中で、太郎を抱きながら、考えた…


 考えたのだ…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。