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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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52/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 52

その夜、葉尊と夕食を食べていると、葉尊が、


 「…どういうことですか? …お姉さん?…」


 と、聞いて来た…


 当たり前のことだ(笑)…


 「…大体のことは、わかっているんですが、イマイチ、わからないこともあります…」


 葉尊が、意味深に言う…


 あるいは、


 考えながら、言う…


 だから、私は、


 「…私にも、わからんのさ…」


 と、答えた…


 事実、私にも、わからんかった…


 「…どうして、わからないんですか?…」


 「…どうしてもと、言われても…」


 私は、困った…


 どう説明していいか、わからんかった…


 そもそもの、きっかけは、バニラだった…


 あのバカ、バニラとの大喧嘩だった…


 あのバカ、バニラと大喧嘩をして、私は、家を出た…


 このマンションから、逃亡した…


 いわゆる、家出だ…


 原因は、お義父さんにある…


 今、私の目の前にいる、夫の葉尊の父、葉敬が、まもなく、台湾から、来日する…


 そのときに、お義父さんに、あのバカ、バニラが、私のことを、あること、ないことを、告げ口されることを、恐れたのだ…


 バニラは、お義父さんの愛人…


 二人の間には、マリアと言う3歳の娘がいる…


 だから、息子の嫁である、この矢田と、バニラのどっちを、選ぶかと、問われれば、お義父さんは、バニラを優先するだろう…


 が、


 それでは、この矢田の立場がない…


 だから、お義父さんに、会わせる顔が、ないから、家出をした…


 すると、偶然、その日、太郎に出会った…


 太郎が、偶然、街を歩いていたのだ…


 私は、すでに、太郎と面識があった…


 それ以前に、バニラの娘のマリアの通う、セレブの保育園の行事で、動物園に向かう途中のサロンバスの中で、太郎と会ったのだ…


 太郎は、アンナという金髪碧眼の女が、運んで来た…


 アンナが言うには、この矢田と同じく、アンナもまた、太郎と、偶然、街で、出会い、アンナが、保護した…


 それで、どうして、いいか、わからず、とりあえず、バスケットに入れて、動物園に連れて行き、動物園に預けるつもりだったと、言っていた…


 それが、なぜか、バスケットから、太郎が逃げ出して、サロンバスの中を、太郎が、走り回った…


 走り回って、この矢田の元に、やって来た…


 それが、この太郎と矢田が初めて、会った瞬間だった…


 そして、今も言ったように、私が、家出をした日に、偶然、出会った…


 そして、私と太郎のやりとりを見た、歩行者が、太郎が、あまりにも、芸がうまいので、私を大道芸の芸人だと、勘違いした…


 猿回しの芸人だと、勘違いした(爆笑)…


 勘違いをして、お金をくれた…


 私は、驚いたが、しめたと、思った…


 とりあえず、勢いで、葉尊と住む、家を出た私に、行くところが、なかったからだ…


 本当は、実家に帰れば、いいのだが、それも、できんかった…


 台湾の大富豪の息子と結婚したにも、かかわらず、家に戻れば、親になんと、言われるか、わからんからだ…


 いや、


 家族だけではない…


 近所の目もある…


 私が、実家に戻ったことは、近所の家の人間たちには、すぐにバレる…


 そうなれば、


 「…やっぱり、身分が、違うから、ダメだったのね…」


 とか、


 「…最初から、この結果は、ミエミエだった…」


 とか、


 とにかく、悪口を言われ、近所で、笑いものにされるのが、わかっていたからだ…


 だから、戻れんかった…


 が、


 その苦境を太郎が、救ってくれた…


 太郎と、大道芸をやることで、お金が入り、実家に戻らずとも、生活できた…


 私と太郎だけでは、十分過ぎるほどの、お金が、手に入ったからだ…


 そして、アムンゼン…


 あのチビだ!…


 ホントは、30歳だが、小人症のため、外見は、3歳にしか、見えない…


 それを、いいことに、マリアの通うセレブの保育園に、園児として、潜り込んでいる…


 その目的は、この日本に、いる外国人のセレブの人間の動静を探ること…


 マリアの通う、保育園は、この日本に在住する、セレブの外国人の子弟が、通う保育園…


 そこにいれば、この日本にいる、外国人が、どんなひとたちで、どんなネットワークを、持っているか、わかる…


 誰もが、セレブ=金持ち…


 外国の有名企業の幹部や、日本にいる駐日大使の子弟たちの集まりだからだ…


 だから、あのアムンゼンは、それを、探るために、あの保育園に身を潜めている…


 そのアムンゼンが、なぜか、太郎と大道芸の旅を続ける場に、突然、現れた…


 私は、驚いた…


 「…どうして、この場所が、わかった? …アムンゼン?…」


 と、聞くと、


 「…蛇の道はヘビということです…」


 と、偉そうに、答えた…


 私は、その答えが、気に入らんかった…


 そして、それは、太郎も、同じだった…


 太郎が、頭に来て、アムンゼンが、頭にかぶったアポロキャップを、奪い取った…


 それを、見た、アムンゼンが、当然、怒った…


 「…返せ!…」


 と、怒った…


 怒って、太郎を追いかけた…


 が、


 それを見ていた観衆の面々は、それが、芸の一部だと勘違いした(笑)…


 太郎を追いかけるアムンゼンに、


 「…坊や、頑張って!…」


 と、観衆の女子高生たちの黄色い声援が飛んだ…


 実は、このアムンゼンは、アラブの至宝と呼ばれた、優れた頭脳の持ち主…


 アラブ世界の実力者でも、ある…


 だから、その黄色い声援に、当然、怒ったと思った…


 気分を害したと、思った…


 が、


 違った…


 実に嬉しそうだった…


 私は、唖然とした…


 どうしてだ? と、自問自答した…


 そして、気付いた…


 アムンゼンは、子供にしか見えないが、ホントは、中身は、大人…


 30歳の成人男子だと、思い出したのだ…


 つまりは、30歳の大人が、女子高生の黄色い声援に、思わず、嬉しくなった…


 そういうことだった…


 要は、ロリコンだ!…


 ロリコン親父だ!…


 私は、思った…


 そして、それを思えば、以前から、思い当たるフシはあった…


 このアムンゼンは、マリアが好き…


 3歳のマリアが好き…


 30歳のアムンゼンが、3歳のマリアに惚れてる…


 これは、立派なロリコンでは、ないか?


 これが、ロリコンでなくて、なんだと言うんだ?


 私は、思った


 思ったのだ…


 そして、その後、このアムンゼンと、大道芸を続けていたかと、思ったが、すぐに、リンダが、現れた…


 突然、現れたリンダに、驚いた私は、


 「…リンダ? …どうして、ここが、わかった?…」


 と、聞くと、さっきのアムンゼン同様、


 「…蛇の道はヘビというヤツよ…」


 と、はぐらかせた…


 今、思えば、もしかしたら、アムンゼンが、リンダに連絡したかも、しれん…


 そう、気付いた…


 アムンゼンは、リンダのファン…


 少なくとも、そう、本人は、言っている…


 が、


 私は、それを、まったく信じていない(笑)…


 アムンゼンの単なる社交辞令に過ぎないと、思っている…


 なぜなら、アムンゼンが、リンダを、憧れの目で、見たことが、ないからだ…


 本当に、アムンゼンが、リンダのファンなら、視線が、違う…


 接する態度が、違う…


 これは、誰もが、同じだろう…


 好きな相手には、態度が、変わるものだからだ…


 だから、私は、アムンゼンが、リンダのファンだというのは、眉唾物だと、思った…


 思ったのだ…


 そして、アムンゼンや、アムンゼンを守るボディーガードたちと、いっしょに、泊まったネットカフェから、出てきたところに、このリンダが、現れたわけだ…


 それから、アムンゼンの私邸に、行った…


 私邸といっても、豪邸…


 この矢田が、見たこともない、豪邸だった…


 そして、初めて、アムンゼンの口から、アムンゼンの母国である、サウジアラビアで、実父の元の国王と、兄である、現国王が、反目しあっている事実を聞いた…


 親子の間で、争っていることを、聞いた…


 そして、サウジアラビア国内にとどまらず、アラブ世界の間で、アムンゼンが、実父か兄か、どちらにつくのか、密かに話題になっていることを、知った…


 アムンゼンは、外見は3歳の子供ながら、実際は、30歳の大人…


 その優れた頭脳は、アラブの至宝と呼ばれるほどだ…


 が、小人症で、子供にしか、見えないから、外に出れない…


 世間に出れない…


 だから、その実態が、わからないから、余計に、実力よりも、大きく見える…


 サウジアラビア一国に、とどまらず、アラブ世界の間で、有名…


 一般の庶民の間にも、その名前は、知られている…


 が、


 本人の姿は、誰も知らない…


 見たことも、ないからだ…


 だから、日本で言えば、都市伝説のような存在なのだろう…


 そして、そのアムンゼンが、この矢田の元にやって来た目的は、なんと、この矢田を守るためだった(笑)…


 なぜ、この矢田を守るのか?


 実は、この矢田は、なぜか、アムンゼンのお気に入りだった…


 なぜか、アムンゼンに好かれた…


 理由は、わからんかった…


 が、


 アムンゼンは、この矢田を好きだった…


 そして、今も言ったように、このアムンゼンの、祖国のサウジアラビアで、アムンゼンの父と兄が、争っている…


 その父と兄のどちらに、アムンゼンが、加担するのか、話題になっている…


 それゆえ、アムンゼンのお気に入りの、この矢田をうまく、取り込めば、アムンゼンを味方にできると、アムンゼンの父や兄の一部の側近たちが、考えて、動き出した…


 そんな噂を掴んだから、急いで、アムンゼンは、私を守るべく、急遽、私の元にやって来た…


 そして、なぜか、この矢田と太郎と共に、大道芸をしていた…


 それが、現実だった…


 わけがわからないが、現実だった…


 そして、今、それを、どう目の前の葉尊に説明すれば、いいのか、わからんかった…


 わからんかったのだ…


 だから、悩んだ…


 どう言っていいか、わからんから、悩んだ…


 が、


 葉尊は、辛抱強く、私の説明を待っていた…


 だから、なにか、言わざるを得なかった…


 私は、悩んだ末、


 「…要するに、風が吹けば桶屋が儲かるというヤツだ…」


 と、私は、言った…


 葉尊は、面食らった…


 明らかに、たじろいだというか、動揺した…


 「…それは、どういう…」


 「…今、サウジアラビアで、国王と、その父親の元の国王が争っていてな…」


 「…それが、一体、今回のお姉さんの行動と、どういう関係が…」


 「…一見、なんの関係もないさ…でも、実は、あるのさ…」


 「…どういうことですか?…」


 「…アムンゼンという男がいてな…それが、サウジアラビアの王族で、サウジアラビアで、隠然たる力を持っているのさ…」


 「…それが、お姉さんとなんの関係が?…」


 「…実は、私は、そのアムンゼンと仲が良くてな…だから、今、サウジアラビア国内で、争っている現国王の勢力と、元の国王の勢力の一部が、私に接触しようとしている情報を、アムンゼンが、掴んだのさ…」


 「…なんで、お姉さんに?…」


 「…私と仲良くすることで、アムンゼンを味方に引き入れることが、できると、思ったらしい…我ながら、バカバカしいというか…笑ってしまうさ…そうだろ? …葉尊?…」


 私は、葉尊に、問いかけた…


 が、


 葉尊は、笑わなかった…


 葉尊は、真剣だった…


 真剣に考え込んでいた…


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